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竹の間から

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第三章

「ですから」
「そうしたものもですか」
「楽しまれますか」
「それでは。ただ歌はです」 
 紙と筆と聞いてだ、紫の上は答えた。貴重な紙をいつも優雅に使う源氏の君に。
「今は程々にして」
「夜にですね」
「主に楽しみませんか」
「そうですね」
 実際にと頷くのだった。
「ここは」
「竹と月がいいのな」
「その二つを謡われたいですね」
「まだ見ていませんが」 
 それでもというのだ。
「あなたが言われることなので」
「その二つをですね」
「どれだけ見事か見てから」 
 そうしてというのだ。
「詠いたいです」
「それでは」 
 こう話してだった。
 紫の上は昼は主に源氏の君と彼の供の者達の舞楽を見てだった。
 自分も自身の供の者達とだった。
 舞楽を楽しんだ、そこに和歌も入れていって夜にだった。
 彼女は夜の闇を見つつ源氏の君に尋ねた。
「あの、竹がです」
「見事ですね」
「夜の竹がこれ程いいとは」
「月明かりに照らされてですね」
「実にいいです。そして竹と竹の間からです」
 紫の上はさらに言った。
「月が見えるのもです」
「いいですね」
「全く以て」
「私もそれを見てです」
 源氏の君は紫の上に微笑んで話した。
「それで、です」
「私に見せたくてですか」
「そう思いまして」
「こちらに案内してくれたのですね」
「左様です」
「そうなのですね、有り難うございます」
「お礼には及びません」
 源氏の君は微笑んだまま返した。
「貴女は私の大切な人なのですから」
「だからですか」
「これも当然のことです」
「そうですか、ですが」
 紫の上は源氏の君の今の言葉に笑って返した。
「それは私だけではないですね」
「そこでそう言われますか」
「貴方はとても魅力的なので」
「いや、第一はです」
 源氏の君は紫の上に慣れた感じで返した。
「あくまで、です」
「私だというのですね」
「はい」
 そうだというのだ。
「そのことはです」
「変わらないですか」
「ですからご安心を」
「だといいのですが」
「私は嘘は言わないですね」
「はい、それは」 
 確かに多情だがとだ、紫の上は内心思いつつ答えた。 
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