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MOVE ME

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第二章

「だからよ、強くね」
「誘いをかけることなの
「ええ。そうしたらいいわ」
「私の誘いが弱かったのね」
「人を動かすには自分も動くことよ」
 コーヒーを飲みながら言って来た。
「そういうことよ、じゃあいいわね」
「ええ、やってみるわ」
 言われてみればそうだった、私の仕掛けつまり動きはまだまだだった、それで私は夜に飲みに誘うことにして。
 そのお店にその時の服も選んだ、彼を仕事帰りに大人の雰囲気に満ちたバーに誘ってそうしてその時の服は。
 胸元を見せてスリットが入った短いものにした、タイツも黒と色気のあるものにして。
 彼に誘いをかけた、するとまず私の今の身なりを見た彼はごくりと息を呑んで目を輝かせて頷いた、そうして。
 彼とバーで二人で飲んだ、この時はそれだけだったけれどこの時から私達は付き合う様になった。
 このことを友人に話すと彼女は私に大人の笑みで言った。
「そういうことよ、相手に動いて欲しかったら」
「自分も動くことね」
「積極的に動いて欲しかったらよ」
「こちらも積極的に動くことね」
「そうしたらよ」
「相手も積極的に動いてくれるのね」
「そうよ、相手を動かすにはまず自分から」
 私達は今も木佐店で話している、前回と同じくウィンナーコーヒーを飲みつつ話してきていた。
「そういうことよ」
「そうなのね」
「そう、けれどこれでわかったでしょ」
「ええ、相手に動いて欲しいならまず自分が動く」
「それも強く動いて欲しいならよ」
「自分も積極的にってことね」
「ええ、自分からよ」
 私に笑って言ってくれた、そうしてウィンナーコーヒーを飲んでまた言った。
「私だってあんたが相談して欲しいって言うからお話してるしね」
「本当にまずは自分からなのね」
「そうよ、相手にそうして欲しかったらね」
 こう言ってまた飲む、そして私も飲んだ。自分から飲んだコーヒーの味は苦くそれ以上に甘かった。


MOVE ME   完


                 2022・4・1 
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