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完全な無関心

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第一章

                完全な無関心
 親戚の集まりに出てだった。
 国崎家の息子である洋介はあることに気付いた、それで宴席の場で父の文太にビールを飲みながら言った。
「なあ、ふわりの前の飼い主の」
「あの連中か」
「二人の娘さん達はいるのにな」 
 幼子と赤ん坊の女の子二人は初老の優しそうな夫婦と共にいる。
「それでもな」
「あいつ等のことはだな」
「誰も言わないな」
「もう絶縁されてるだろ」
 父は息子に話した。
「そうだろ」
「親戚全員からな」
「本家さんが今でも後見やってるけれどな」
「禁治産者になったら必要だったな」
「それでな」
 法的にそうなっているからだというのだ。
「そうしているがな」
「本家さんもな」
 見れば本家の主である彼も二人のことは言わず親戚の中に入ってあれこれと楽しく会話に興じている。
「言わないだろ」
「そうだよな」
「もうあの連中はな」
「親戚じゃなくてか」
「それこそ親兄弟からもな」
 見れば親戚中にそうした人達もいる。
「完全にな」
「見放されてか」
「いなかったことにだ」
 最初からというのだ。
「なっているんだよ」
「そうなんだな」
「ああ、ふわりを捨ててな」
「上の娘をほったらかしにしてか」
「それで完全にな」
「皆から縁切られてか」
「世間からもそうなってな」  
 そうなってというのだ。
「誰からもだ」
「相手にされなくなってか」
「ああしてな」
 まさにというのだ。
「誰からもだ」
「話にもあげられないか」
「いいか、それがな」 
 父は息子に宴席の場に出ている寿司を食べつつ言った、他には刺身や天麩羅もあって和風の趣になっている。
「完全な終わりなんだ」
「終わり?」
「そうだ、誰にも相手にされなくなってな」
 そうしてというのだ。 
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