薄過ぎるルームウエア
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第一章
薄過ぎるルームウエア
会社にスマートフォンを忘れているのを見た、それでだった。
柳生智仁黒髪をスポーツ刈りにしていて面長の顎の先が四角い顔に優しい目ときりっとした口元に濃い眉と一八〇のすらりとした長身の彼は。
同僚で隣の席で同じ歳の真鍋苑子にそのスマートフォンを届けることにした、彼女のマンションは職場からすぐと聞いていてだ。
住所を調べるとそうだったので課長に言った。
「俺も終わりですし」
「仕事帰りにだね」
「はい、あいつのところに寄って」
彼女のマンションにというのだ。
「それで、です」
「スマートフォン届けるんだ」
「そうします」
こう課長に答えた。
「今から」
「悪いね、じゃあ頼むよ」
「はい、そうしてきます」
こう言ってだ。
彼は残業をしてまでやった仕事の後でだった。
彼女の部屋まで向かった、職場からすぐだったのでだ。
連絡をせずに行った、そして。
部屋の前まで来てチャイムを鳴らすとだった。
「は~~~い」
「えっ!?」
ここでだった。
柳生は開いたドアからだ。
いきなり出て来た苑子を見て仰天した、苑子は癖のある胸まである薄茶色の髪の毛に。
色白でやや面長の顔で大きな優し気なきらきらした目とピンクの奇麗な唇に一五六位の見事なスタイルを持っている。
その彼女が出て来たが。
白の太腿の付け根までのワンピースを着ていた、そのワンピースは。
透けそうな位薄かった、それで上下共赤いものが透けていた。
その彼女にだ、柳生は言った。
「おい、何て恰好だよ」
「えっ、柳生君!?」
苑子も出てきて驚いた。
「何でここに!?」
「お前がスマートフォン会社に忘れたからな」
正直にだ、柳生は答えた。
「それでだよ」
「そうだったの」
「だからな」
柳生はさらに言った。
「届けに来たんだよ」
「そうだったの・・・・・・って」
ここでだ、苑子は。
今の自分の姿に気付いた、それで顔を真っ赤にして言った。
「ちょ、ちょっと見てるでしょ」
「お前いきなり出て来たからだろ」
「その前に連絡しなさいよ」
「いいから早く着替えて来い」
「ま、待っていなさいよ」
慌ててだった。
苑子は一旦ドアを閉めて着替えてきた。そしてだった。
上下グレーの色気の欠片もないジャージ姿になって戻ってきてだ。こう言ってきた。
「お料理してたのよ」
「そうだったのかよ」
「そうよ、それで火を止めて咄嗟に出たけれど」
「チャイム鳴らしたから最初にそれで出たらよかっただろ」
「それはそうだけれど」
彼にバツの悪い顔で開かれたドアを挟んで話した。
「咄嗟によ」
「慌ててたか?」
「そうも言えるかもね、しかしね」
ここでだ、苑子は。
あらためてバツの悪い顔になってだ、こう返した。
「あんた見たでしょ」
「透けてか」
「やっぱり見たじゃない。色は?」
「赤か?」
「やっぱり見たじゃない」
「仕方ないだろ」
柳生もバツの悪い顔で返した。
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