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おっちょこちょいのかよちゃん

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233 屋敷の少年と少女

 
前書き
《前回》
 ジャコバン派の人間・ダントン、マラー、ロベスピエール、そして東アジア反日武装戦線の佐々木と対抗するかよ子達。りえを救出するあり達との連携もあり、ジャコバン派の人間を次々と撃破していき、残るは佐々木のみとなる。赤軍の岡本の能力(ちから)を借りた銃で聖母マリアを召喚する佐々木と(カムイ)を召喚するありのぶつかり合いの結果、石松も大物主神を召喚して加勢した事でありに軍配が上がったのだった!!

 オリジナルキャラ紹介・その20
 上市明日香(かみいち あすか)
 大阪の大学生。初登場154話。はめるといかなる攻撃も防御し、効果を打ち消す事ができる手袋を使用して戦う。攻撃に特化された武装の能力(ちから)を所有する。好きな食べ物はうどん、パフェ。
 

 
 かよ子は杖を奪った奥平を追う為に羽根を飛ばし続ける。
(私の杖を返して・・・!!)
 かよ子はそう願いながら先へ進む。
「山田かよ子、本部守備班を担う長山治にもう一度杖の行方を探ってみたらどうだ?もしかしたら別の人間の手に渡っている可能性もあるかもしれん」
「う、うん・・・」
 かよ子は通信機を取り出す。
「こ、こちら山田かよ子。長山君、聞こえる?」
『や、山田?どうしたんだい?』
「取られた私の杖なんだけど、まだ赤軍の人が持ってるの?それとも違う人が持ってるの?」
『今、探してみるよ!』
 長山は捜索の為、一旦通信を中断した。
(どうか、場所が解れば・・・!!)
 かよ子は杖が他の手に渡らない事を祈っていた。何しろ先程ジャコバン派の人間や佐々木規夫と戦っている間に杖が他の人間の手に渡っていたら方向転換を余儀なくされてしまうからである。そして、長山からの返答が戻ってきた。
『こちら長山治、山田、今杖は引き続きさっきの赤軍の人が持ってるよ。でも・・・』
「でも・・・!?」
『その赤軍の人は大きい城のような家に入っていった!』
「ええ!?その家にはどんな人が住んでるの!?」
『待って、よく確かめさせてくれ。ええと、赤軍は杖を誰かに渡している!相手は女王のような人だ!』
「女王のような人・・・!?」
 かよ子は「女王」という言葉で何かしらの緊張感を覚えた。その杖を渡された人物はかなり手強いのではないかと・・・。

 紂王の屋敷。戦争主義の世界の長は今「杉山さとし」として杯の持ち主と対面していた。
「杉山君っ・・・!?」
 りえは自身が追いかけていた男子ととんでもない会い方をして言葉が何も出なかった。
「りえ、ここに来て気分はどうだ?」
「こんな所不気味で嫌よっ!早く出ていきたいわっ!!」
「だがよ、確かめてえ事があんだよ。お前が会ったっていう男子は藤木か?」
「藤木君っ・・・!?え、ええ、会ったわよっ・・・」
「そうか、藤木はここにいるって解った訳だ」
「それで私はいつになったらここから出られるのよっ!?」
「それは俺も決めてねえし、山田達がここに来次第だな」
「決めてないってっ!?」
 りえは憤怒とも悲痛ともいえる反応を示した。
「兎に角、一つ言える事はお前を生け捕りだ。暫くここにいて貰う。殺す気はねえから安心しろ」
「安心できるわけないでしょっ!!杯はどこにあるのっ!?私の友達はっ!?」
「それは言えねえよ。実は俺も『こいつ』もまだ確認してねえからな」
「『こいつ』っ・・・?」
 杉山の姿が変わった。
「私の事だ」
 別の男性の姿に変化した。
「あ、あなたはっ・・・?」
「私はこの世界を統治する者・レーニン。偽物の杯に杖、護符のせいで身動きが取れずにいたが、この杉山さとしが身体を提供してくれたのだ。だが、この少年もまだ我々に味方しているとは思い難い時も感じるがな」
 りえはレーニンに何らかの強い威圧感を感じた。戦争主義の世界の長であるからだろうか。レーニンの姿が杉山の姿に戻る。
「ところで紂王とか言ったな。こいつはこれからどうするつもりなんだ?」
「ああ、あの少年が恋に落ちた小娘と聞くからな。近いうちに祝言を挙げるつもりだ」
(シュウゲン・・・?)
「そうか、お前も乙女だったんだな。じゃあな」
「あ、ちょっとっ!!」
 りえは呼び止めようとするも、杉山は行ってしまった。
(乙女・・・)
 りえは夏休みに会った時、自分が教会のピアノで「亜麻色の髪の乙女」を弾いていた事で他の清水の友達からは自分にぴったりと言われたが、杉山から否定された。しかし、今、杉山から肯定されてりえは杉山に対して憤りや心の痛みとは違うものを感じていた。

 杉山は紂王に頼む。
「次は藤木の部屋に連れてってくれ」
「ああ」
 杉山は紂王によって別の部屋に連れて行かれた。
「少年よ、客人だ。お前の知り合いらしいぞ」
「知り合い?」
 部屋の奥から聞いた事のある声が聞こえた。
「それじゃ、後は二人で話をしてくれ」
 紂王は部屋から出た。杉山は部屋に入る。
「す、杉山君!?」
 その場にいたのはクリスマス・イブの日から行方不明になっていた少年・藤木茂だった。
「やっぱりお前はここにいたんだな」
「杉山君こそどうしてここにいるんだい!?」
 藤木からしたらこの地で学校の友達に会うとは驚きで連れ戻されるとか、逃げた卑怯者とか非難される運命にあると思い、恐怖心しかない。
「安心しろ。手出しはしねえ。お前が無事かどうか確かめに来たんだ」
「この通り、全然平気さ・・・」
(そりゃ、妲己さんや紂王さんにはお世話になってるし、可愛い女の子達とも色々遊ばせて貰ってるんだ。元の世界に帰っても卑怯呼ばわりされて嫌な目で見られるだけだし、笹山さんにも嫌われたんだ。絶対に戻らないぞ・・・!!)
「まあ、お前が無事ならそれでいいさ。それじゃ、楽しくやってくれ。じゃあな」
 杉山はそう言って部屋を出ようとした。
「あ、待ってくれよ!」
「ん?」
「杉山君は僕を連れ戻しに来たんじゃないのかい?」
「いいや、それは俺の役目じゃねえよ。あいつと会えて良かったか?」
「りえちゃんの事かい?うん、でもりえちゃんは何か嬉しそうじゃなかったよ」
「・・・そうか。でもお前、あいつ好きだったんじゃなかったか?それでも自分で幸せにさせてみろよ」
 杉山はそう言って部屋を出ていった。
(お前も『あいつ』が好きなんだよな・・・)
 杉山は何かを思いながら部屋を出た。

 杉山が部屋から出た後、藤木は考える。
(そういえば、僕は夏休みにりえちゃんに会った時、僕は何もできなかった・・・。そうだった・・・)
 夏休みのあの日、あの少女が東京へ帰る時、色紙に寄せ書きした。あの藤木が書いた内容は・・・。
(そうだ、『この次はボクが守ります』って書いたんだ・・・!!)
 その時、一人の遊女が入った。
「茂様、明後日に『あの人』と祝言を挙げるつもりと紂王様や妲己様からの伝言ですが、宜しいでしょうか?」
「え?あ、うん・・・、あ、そうだ」
「はい?」
「りえちゃんに会わせてくれるかい?」
「あ、はい、それでしたら紂王様と妲己様に確認してきます」
 遊女は一旦退室した。
(りえちゃんを守らないと・・・!!)
 藤木は約束を思い出す。

『それでその人の館は今山田達がいる所から西よりだよ』
「うん、ありがとう、長山君!」
 かよ子は長山との通信を終了させた。かよ子は進む。
「ここより西側か・・・」
「山田かよ子、協力に応じてくれた者共にも呼び掛けよ」
 次郎長が提案した。
「うん」
 かよ子は通信機をもう一度起動させる。
「こちら山田かよ子。い、今杖は少し西側寄りに住んでる女王のような一人の館にあるみたい!」
『こちら濃藤すみ子・・・。了解、今私達もそっちに行くわ・・・』
『こちら冬田美鈴。大野くうん、待っててねえ〜』
 協力者達からの返事を受けてかよ子達は進む。 
 

 
後書き
次回は・・・
「会食の機会を」
 かよ子達は西側へと進む。そして笹山はとある女性と対面する。その夜、藤木とりえは会食することになる。緊張しながらしゃべろうとする藤木だったが、対するりえは藤木達との思い出を共に回想しながら藤木が戦争主義の世界に訪れたきっかけを知り・・・!! 
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