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展覧会の絵

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第九話 聖バルテルミーの虐殺その八

「ええと。確かな」
「ああ、江崎と宮本」
「あの二人か」
「そういえばあの二人も幼馴染か」
「そうだったよな」
「あの二人もそういえばな」
「完全に姉さん女房だよな」
 猛と雅の関係もだ。周りから見ればそうなるのだった。そしてだ。
 望はだ。走りつつも首を傾げさせながらだ。こんなことも言った。
「俺何か江崎が他人に思えないな」
「同じくかかあ天下だからか?」
「それでか?」
「いや、まあな」
 言ってすぐに後悔することになった。失言だったとだ。
 だがそれでも望はだ。こう仲間達に言うのだった。
「まあ。あいつも大変だろうな」
「みたいだな。宮本って全国大会優勝だからな」
「総統強いらしいからな」
「まあそれでも江崎も全国大会出てるけれどな」
「それなり以上の強さはあるけれどな」
 だがそれは所謂九十点と百点の差だった。九十点は九十点までだが百点は百点以上かも知れないのだ。たった十点だけの差ではないのである。
 それでだ。彼等は言うのだった。
「まあ。江崎もかなりいじめられたっぽいな」
「あっちも宮本に泣かされてたみたいだぜ」
「相手は相当強いからな」
 こうした話をだ。仲間達はしていた。そしてだ。
 彼等の話は十字も聞いていた。だが彼は何も言わなかった。ただ沈黙しそのうえでだ。ラフを描いていたのだ。
 十字は暫くグラウンドのラフを描いてからだ。グラウンドだけでなく校舎も見た。するとだ。
 教室の一つに春香が見えた。その教室の窓から望を見ていた。それ自体は何でもなかった。
 だが問題はその表情だった。まさに裏切っていてそのことに後ろめたさを感じている、そうした顔だった。
 そしてその横には一郎がいる。春香は二人でいたのだ。
 十字はそれも見た。二人はそのまま教室の窓のところから姿を消した。
 十字はそこまで見てだ。あることを確信した。しかしそれも言わないのだった。
 言わないまま絵を描く。その彼のところにだ。
 雪子が来た。そして笑顔でこう彼に言ってきたのだった。
「あれっ、あんた確か」
「佐藤十字だよ」
「そうだね。転校してきた」
 雪子はこう彼に言う。
「イタリアだったっけ」
「うん、イタリアからね」
「ふうん。だからその髪の色なのね」
 十字のその見事な金髪を見てだ。雪子は言った。
 そしてだった。彼女は十字にこうも言ったのだった。
「顔の色も白くて。目は黒で」
「それが気になるんだね」
「奇麗ね」
 美男子だとだ。そう本人に言ったのである。
「まるでお人形さんみたいね」
「人形。僕が」
「そう。そんな感じね」
「そう言われたこともあるかな」
「ねえ。それでね」
「それで?」
「今暇かしら」
 何気なくだ。雪子は十字を誘ってきた。
「どうなの、今は」
「部活だよ、今は」
 そうなっているとだ。十字は静かに答えた。
「だから暇じゃないよ」
「そうなの。折角一緒に遊ぼうかって思ったけれど」
「悪いね。ただね」
「ただ?」
「君は確か料理部だったよね」
「うん、そうだよ」
 その通りだとだ。雪子は屈託のない笑顔のままで十字に答える。 
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