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第八話 絞首台のかささぎその二
それでだ。自分と彼のことに当てはめてだ。雪子に今度はこう言ったのである。
「私達もかしら」
「確か宮本さんって」
「ええ。私と猛もそうなのかしら」
これが雅の今の言葉だ。そして考えでもある。
「そう見えるのかしら」
「猛っていうと」
「江崎猛。知ってるかしら」
「空手部の子よね。全国大会にも出た」
「そうよ。強いことは強いけれど」
全国大会は伊達ではない。しかしだというのだ。
「それでもね」
「確か宮本さんは全国大会で優勝してるわよね」
「女子のにね」
猛は男子大会、雅は女子大会。この両者の違いはあった。それは歴然たるものだ。
だから雅は雪子にこのことを話したのである。そうしたのだ。
そして雅の今の話を聞いた雪子もだ。仮面のままで言ったのである。
「じゃあ男女の違いがあっても」
「猛ね。私に勝ったことないのよ」
優勝と出場。その違いは大きかった。歴然たるものがあった。
「一度もね。昔からね」
「子供の頃から?」
「そうだったの。本当にね」
「けれど。江崎君よね」
「そうよ。江崎猛よ」
「江崎君も全国大会に出てるのよね」
「勿論黒帯でね。強いことは強いのよ」
だがそれでもだというのだ。例え彼が強くともだ。
雅はより強かった。その強さについてだ。雪子は言うのだった。
「宮本さんはかなり強いってことになるのかしら」
「そうなるのかしら」
「だって。全国大会優勝よ」
さながらメフィストフェレスの様にだ。雪子は雅にこのことを囁く。
「凄いわよ。それにね」
「それに?」
「勉強も出来るから」
メフィストの囁きは続く。
「文武両道ね。まさに」
「そんな。私は」
「いいからいいから」
道化さえ装ってだ。雪子は囁いていく。
「本当のことだから」
「だから。褒められるのは」
「苦手なの?」
「褒められて慢心したら」
どうかとだ。困った顔で言うのだった。
「それで終わりだから」
「自分を律しているの?」
「慢心、奢りね」
そうした感情をだ。雅は否定していた。
そしてそのうえでだ。彼女は目と眉を顰めさせて述べたのだった。
「それができたら武道家として終わりだから」
「武道家なの」
「そう。武道家だから」
それ故にだというのだ。
「慢心や奢りは避けないといけないから」
「厳しいわね」
「厳しいっていうかね」
どうかというのだった。
「武道家にとって忘れてはならないものだから」
「だからなの」
「あとそれ以上にね」
「それ以上に?」
「何かに溺れない様にもしてるの」
やはり厳しい顔になりだ。雅は雪子に話すのだった。
「それもね」
「溺れない様に」
「そう。溺れない様に」
あくまでそうしているというのだ。
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