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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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西ゼムリア通商会議~困惑の賠償内容~

メンフィル・クロスベル連合との戦争に敗戦したエレボニア帝国が敗戦国として承諾しなければならない賠償は以下の通り











1、”四大名門”の前当主の内、ヘルムート・アルバレアとクロワール・ド・カイエンの身分を剥奪し、更に二人の身柄をメンフィル帝国に引き渡し、メンフィル帝国が二人に与える処罰内容に反論せずに受け入れる事







2、レグラム、ケルディック、バリアハートを除いたクロイツェン州全土と第二海都フォートガードを始点としたラマール西部全土、ルーレ市からラウス市までのノルティア東部全土の領地の統治権、”ザクセン鉄鉱山”の鉱業権の80%、アルバレア公爵家の全財産の80%をメンフィル・クロスベル連合に贈与する事。※なお、バリアハート並びにケルディックの領主にはメンフィル帝国へのアルノール皇家・エレボニア帝国政府による武力行使・威圧関連の勅命・要請の拒否権を与え、更に領主としてユーシス・アルバレアを必ず就任させ、バリアハート並びにケルディックの領主は世襲制とする事







3、エレボニア帝国の内戦とメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国の戦争の影響でメンフィル帝国領に避難してきた難民達へのメンフィル帝国の援助による生活費等の支払いとその利息の支払い(難民達に対して消費したメンフィル帝国の財産は5000億ミラ相当で、利息は10割として5000億ミラとして、合計1兆ミラ)







4、エレボニア帝国の内戦によってメンフィル帝国で起こった国際問題の謝罪金とメンフィル・クロスベル連合とエレボニア帝国による戦争賠償金としてメンフィル帝国に5000兆ミラの支払い(なお、支払い方法として現金だけでなく、物資の引き渡しによる物納も認める。また、分割での支払いも可能)







5、ユーゲント・ライゼ・アルノール皇帝はユミルに自ら赴き、”シュバルツァー家”にメンフィル帝国領であるユミルを自分の不徳によって起こったエレボニア帝国の内戦に巻き込んだ事を誠心誠意謝罪し、エレボニア皇家の財産からシュバルツァー家に謝罪金並びに賠償金を支払う事







6、メンフィル帝国領内でエレボニア人(皇族、貴族、平民問わず)が犯罪を犯した場合、通常の判決より厳しい判決が降される事を承認し、メンフィル帝国領内で犯罪を犯したエレボニア人がエレボニア帝国の領土に逃亡した場合は犯人逮捕に積極的に協力し、犯人の引き渡しをする事







7、エレボニアの皇族、貴族がマーシルン皇家とメンフィル帝国が指定する貴族から嫁もしくは婿に来てもらう場合はマーシルン皇家の許可を必ず取る事。注)メンフィル帝国が指定する貴族は以下の通り。シュバルツァー公爵家、フレスベルク侯爵家、コーデリア侯爵家、アルフヘイム伯爵家、ディアメル子爵家、レンハイム子爵家、ヴィント男爵家、モリナロ男爵家







8、エレボニア帝国はメンフィル帝国が定めた期間、メンフィル帝国による”保護”を受け入れ、”保護”の間の統治権はメンフィル帝国がエレボニア帝国に派遣するメンフィル帝国の駐留政府、軍に委ねる事 ※なお保護期間中にメンフィル帝国に対して申請して受け取った支援金の返済は第4条の謝罪金並びに戦争賠償金の支払いとは別途扱いである







9、メンフィル帝国に対する謝罪金並びに戦争賠償金の支払いを完遂するまでにエレボニア帝国で内戦、反乱、他国の侵略による戦争が勃発した際にメンフィル帝国の判断によってメンフィル帝国軍の武力介入による早期解決を決定した場合、反論する事なく受け入れる事







10、メンフィル帝国が指定するエレボニア帝国の領土内でのメンフィル帝国大使館の設立並びに大使館守護の為のメンフィル帝国軍の駐留許可、大使館設立の際の費用、大使館に駐留するメンフィル帝国軍の軍費の内50%をエレボニア帝国が負担する事







※また、戦争勃発前に実行済みのアルフィン皇女の処罰もこれらの条約に含まれているものとみなす





~エルベ離宮・待機室・紅き翼側~



「ば、賠償金が5000兆ミラッ!?」

「賠償金もそうだけど、戦争開始前に要求してきた”3度目の賠償内容”と比べると倍近くの数の賠償内容も追加されているわね。」

「ええ……それに賠償内容の中にはセシリア将軍が仰っていた通り、”保護”の件も含まれているわね……」

「戦争に勝ったからと言って、どれだけエレボニアを食い物にすれば気がすむんだよ、メンフィルの連中は!」

「……しかもメンフィル帝国軍でのリィンの活躍が賠償内容にどれ程の影響を与えたかって宣言した癖に、全然影響を与えていないじゃん。」

画面に映るプロジェクターの映っている賠償内容を確認したマキアスは表情を青褪めさせて声を上げ、目を細めて呟いたセリーヌの言葉にエマは不安そうな表情で頷いて答え、アッシュとフィーは怒りの表情を浮かべて画面に映るシルヴァン皇帝を睨み

「レンちゃんやリウイ陛下達はエレボニアに―――――”リベールの異変”や”影の国”では協力したオリビエさん達の故郷にあんな厳しすぎる賠償内容を要求する事について何も思わなかったんでしょうか?」

「ティータちゃん………」

「……”英雄王”達もメンフィルの皇族だからな。”個人としての感情よりも皇族としての判断”を優先したんだろうな。」

悲しそうな表情で呟いたティータをアネラスは辛そうな表情で見つめ、アガットはティータの疑問に複雑そうな表情で答えた。



「!待って……確かに賠償内容は増えてはいるけど、”戦争開始前の3度目の賠償内容と比べたら緩和されている賠償内容があるわ……!”」

「”戦犯”の引き渡しやエレボニア帝国人によるメンフィル帝国領への入出国の件もそうだけど、何よりも一番肝心な領土割譲が”戦争開始前の3度目の賠償内容と比べると領土割譲する領土が増えている所か、逆に減っているよ……!?”」

「しかもその領土割譲の件で、ユーシスの名前も挙がっているが……一体どういう事だ……?」

「何でわざわざ賠償内容にバリアハートとケルディックの領主は絶対にユーシスに就かせろみたいな事が書いてあるんだろうね~?」

「……………………まさかとは思うが、メンフィルはバリアハートとケルディック――――――いや、アルバレア家を……………」

するとその時ある事に気づいたシェラザードは真剣な表情で、トワは困惑の表情でそれぞれ声を上げ、ラウラは戸惑いの表情でその場で考え込み、ミリアムは首を傾げて疑問を口にし、メンフィル帝国の目的を悟ったユーシスは複雑そうな表情で呟き

「ノルティア州の方は案の定、クロスベルにとっては絶対に必要な領土を贈与する事になっているね……」

「それはどういう事だろうか?」

「ルーレ市からラウス市までのノルティア東部全土の領地は”ノルティア州でのラインフォルトグループの工場地帯”と言っても過言ではない程のラインフォルトグループの工場が集中しており、逆に西部はラインフォルトグループの工場はあまりないからですわ。」

「つまりはノルティア州関連でクロスベルが欲しい領土は”ラインフォルトグループの工場地帯”という訳ね……」

「……………………」

「アリサ………」

疲れた表情で呟いたアンゼリカの言葉が気になったガイウスの疑問にシャロンが答え、エレインは真剣な表情で呟き、複雑そうな表情で黙り込んでいるアリサをエリオットは心配そうな表情で見つめた。



~紋章の間~



「これは…………」

「え……ッ!?」

書面に書かれている賠償内容を確認し終え、”戦争開始前の三度目の賠償内容”も知っていた為”メンフィルがエレボニアに要求してきた現在の賠償内容は戦争開始前の三度目の賠償内容と比べ、賠償内容は増えてはいるが一番肝心な領土割譲が大幅に緩和されている事”に逸早く気づいたアリシア女王は驚いた後戸惑いの表情を浮かべ、クローディア王太女は目を丸くして声を上げた後困惑の表情を浮かべてそれぞれシルヴァン皇帝とセシリアを見つめ

「やはり、予想していた通り戦争開始前の三度目の賠償内容よりも相当厳しい賠償内容ではあるのだが………」

「肝心の領土割譲は戦争開始前の賠償内容と比べると大幅に緩和されている上いくつか”賠償”になるのかどうか疑問に思う内容もありますよね……?」

「い、一体何の為にメンフィル帝国はこんなエレボニアにとってメリットにもなる内容を”賠償”として要求してきたんでしょう……!?」

「フフ………」

アリシア女王達のように”賠償内容は戦争開始前と比べて増えてはいるが、緩和もされ、更にエレボニアにとってメリットにもなる賠償内容”もある事に気づいたオリヴァルト皇子とセドリック、レーグニッツ知事はそれぞれ困惑の表情を浮かべて呟き、オリヴァルト皇子達の様子にミルディーヌ公女は静かな笑みを浮かべていた。

「メンフィルがエレボニアに相当厳しい賠償を要求する事は予想できましたけど、私達の予想を遥かに超えた今のエレボニアにとっては厳しすぎる賠償内容ですね……」

「うむ………ただ、いくつか賠償内容としてはおかしな賠償内容もあるようだが………」

一方戦争開始前の賠償内容を知らないレミフェリア側であるルーシー秘書官は悲痛そうな表情を浮かべて呟き、ルーシー秘書官の言葉に頷いたアルバート大公はその場で考え込んだ。



「……シルヴァン陛下。この賠償内容について色々と伺いたい事はあるのですが、まずは第8条の件――――――”何故メンフィル帝国が戦争相手国だったエレボニア帝国を保護する事”についての説明をして頂いてもよろしいでしょうか?」

「―――――いいだろう。ここにいる皆も既にわかってはいるだろうが、エレボニアは今回の戦争でもそうだが、去年の内戦で自国の戦力は当然として、国力も著しく衰退し、更には国民達の政府や皇家に対する信頼も地に堕ちた。そんなエレボニアは戦後、例え他国の支援―――それこそリベールやレミフェリアの支援があったとしても、復興は相当困難かつ膨大な年数がかかる事が予想され、最悪は内戦と今回の戦争の件で政府や皇家に反感を抱くエレボニアの国民達による暴動や反乱で”エレボニア帝国という国は滅亡する”と推測している。そんなことになれば賠償金の回収も困難、最悪は不可能に陥る事もそうだがエレボニア帝国領と隣接している我が国の領土の治安維持にも支障が出てくる。それらを阻止する為にも我が国が戦後のエレボニアの復興に直接的な介入をする事にした。」

「フフ、要するに”賠償金の回収を確実にする為とエレボニア帝国に隣接している自国の領土の治安維持の為の投資”ですわね。」

「メンフィルの為の投資ではあるが、目的はどうあれ結果的にはエレボニアの復興が大幅に早まるのだから、エレボニアもそうだが、エレボニアと友好を結んでいる国も安心できる話なのではないか?」

「それは………」

「……”メンフィルの保護”と仰いましたが、具体的にはどのような”保護”をエレボニアに行われるおつもりですか?」

アリシア女王の質問に答えたシルヴァン皇帝の説明をルイーネは微笑みながら補填し、静かな笑みを浮かべたヴァイスの言葉にクローディア王太女が複雑そうな表情で答えを濁している中、アルバート大公は静かな表情でシルヴァン皇帝に訊ねた。



「当然我が国から政府・軍を派遣してエレボニアの帝城であるバルヘイム宮に”総督府”を設置し、復興の為の統治や治安維持に当たらせる事になっている。それとエレボニア帝国より復興に必要な支援金の融資の依頼があれば、金額次第にはなるが応じる。」

「なお、保護期間中は我が国よりエレボニアの復興の為に派遣する政府・軍の統治者である”エレボニア総督”に”エレボニア帝国内での絶対的な権限を委任してもらう”事になりますから、”保護期間中のエレボニアの最上位存在はエレボニア皇帝ではなく、エレボニア総督になります。”」

「お待ちください!メンフィル帝国より政府や軍を派遣してエレボニア帝国の統治や治安維持を行わせる事もそうですが、何よりも総督府を設置し、派遣した政府や軍の統治者である”総督”がエレボニアの最上位存在であられるユーゲント陛下よりも上の存在になるという事は、”保護ではなく、支配”ではありませんか!」

シルヴァン皇帝とセシリアの説明を聞いたルーシー秘書官は血相を変えて反論した。

「メンフィル主導によるエレボニアの統治・治安維持はあくまで”保護期間中”だとセシリアも言っただろうが。”保護期間”が終われば当然エレボニアに派遣した政府・軍をエレボニアから完全に撤収させる事もそうだが、エレボニア総督に任命された者の”エレボニア総督の任務”も解いて新たな任務に任命する事も既に我が国の皇家、政府の上層部達による話し合いで決定している。」

「その”保護期間”とは具体的な年数で現わせるとすれば、どれ程の年数になるのでしょうか?」

ルーシー秘書官の反論に対して答えたシルヴァン皇帝の話を聞いてある部分が気になったオリヴァルト皇子が真剣な表情で質問をした。

「現時点ではセドリック皇太子の年齢が21歳になる年度を”保護期間終了の予定”としている。」

「え………ぼ、僕が21歳になる年度ですか?」

「皇太子殿下は今年で16歳を迎えられますから、今から約5年後ですか………」

「シルヴァン陛下。メンフィル帝国は何故保護期間の終了をセドリック皇太子殿下が21歳を迎えられる年度にされたのでしょうか?」

シルヴァン皇帝の答えを聞いたセドリックは戸惑いの表情を浮かべ、レーグニッツ知事は考え込み、アリシア女王はシルヴァン皇帝に新たな質問をした。



「メンフィルはセドリック皇太子が成人年齢である20歳になればエレボニア皇帝に即位すると仮定し、即位した皇太子に保護期間中の統治や治安維持に関する諸々を引継がせるには1年は必要と判断した為だ。」

「”皇太子殿下がユーゲント陛下の跡を継いでエレボニア皇帝に即位してからの1年後を保護期間の終了の基準にされている”との事ですから、例えば皇太子殿下が20歳よりも早くエレボニア皇帝に即位された場合は、その1年後を”保護期間の終了”とされるのでしょうか?」

「ああ。勿論その逆―――20歳よりも遅い年齢で即位した場合もその1年後を保護期間の終了とするが、長期間メンフィルがエレボニアの保護をし続ける事で他国から”保護ではなく支配”なのではないかという邪推をされない為にも保護期間の最長期間は10年に設定している。」

「という事は何らかの事情で皇太子殿下の即位が遅れたとしても、10年後にはメンフィル帝国はエレボニア帝国から完全に手を引かれるという事ですか……」

「シルヴァン陛下。先程エレボニア帝国より復興の為に必要な支援金の融資の依頼があれば金額次第で応じて頂けるとの事ですが………その応じて頂ける限界額もそうですが、支援金の返済時の利息率はどれ程になるのでしょうか?」

クローディア王太女の質問にシルヴァン皇帝が答えるとアルバート大公は僅かに安堵の表情を浮かべて考え込み、レーグニッツ知事は新たな質問をシルヴァン皇帝にした。

「支援金の融資限界額は1年ごとに10兆ミラで、融資した支援金自体はともかく、利息まで要求するつもりはない。5000兆ミラという莫大な金額の賠償金を要求しているにも関わらず、更に支援金の利息を要求する事で他国から我が国は金に汚い国と誤解されたくないからな。」

「そう、ですか………ちなみに保護の為に派遣されるメンフィル帝国軍・政府を統括する存在である”総督”はどのような立場の人物なのでしょうか?」

シルヴァン皇帝の答えを聞いたレーグニッツ知事は僅かに安堵の表情で答えた後更なる質問をした。



「メンフィルが総督に任命する人物はどのような立場も何もレーグニッツ知事もよく知っている人物――――――リィン・シュバルツァー将軍だから、説明する必要もあるまい。」

「ええっ!?」

「な―――――リ、リィン君が”エレボニア総督”………!?」

「まさか去年の内戦もそうだが、今回の戦争でも色々な意味で話題に挙がっているかの”灰色の騎士”がエレボニア総督とは……」

「ノーザンブリアで助けて頂いた時に実際に”灰色の騎士”とも顔を合わせましたが……その時の軍位は相当な若輩の年齢でありながらも”大佐”を務められていましたが……まさか、この短い期間で”将軍”に昇進していたなんて……」

シルヴァン皇帝の答えを聞いたクローディア王太女は思わず驚きの声を上げ、レーグニッツ知事は驚きのあまり絶句した後信じられない表情で声を上げ、アルバート大公は驚きの表情で呟き、ルーシー秘書官は信じられない表情で呟き

(ええっ!?リ、リィンさんがエレボニアの”総督”!?)

(い、一体メンフィルは何を考えてリィン君をエレボニアの”総督”にしたのよ!?ていうか確かあたし達がオルディスで会った時のリィン君の軍位って”少将”だったのに、あれから1ヶ月も経っていないのに一体いつの間に”将軍”に昇進したのよ!?)

(恐らくは先日の”大戦”を終結させた功績もそうだけど、灰獅子隊の軍団長として今まで挙げ続けた功績を評価されたからだとは思うけど、彼を”総督”にしたのは間違いなく何らかの思惑があるんだろうね。)

(そうですわね。恐らくメンフィルの狙いは、内戦もそうですが今回の戦争でも”英雄”となったシュバルツァー将軍をエレボニアの総督にする事で、”保護”を理由にエレボニアの統治をするメンフィルの総督府に対して抱くであろうエレボニアの国民達の反感を抑える為かと思いますわ。)

会議の様子を見守っていたミントは驚き、エステルは困惑し、ヨシュアとフェミリンスはそれぞれ真剣な表情で推測した。



「リィン・シュバルツァーはノーザンブリアの件が完了した際に今までの功績を評価されて”少将”に昇進すると共に”灰獅子隊”の軍団長を任命され、その後は灰獅子隊の軍団長としてエレボニアの各地で転戦してそれぞれの戦場で功績を挙げ続け、そしてこの場にいる皆さんもご存知のように先日の大戦を終結させるという後の歴史に語られる程の功績を挙げた事が陛下達に評価され、リィン・シュバルツァーは17歳という若さでありながら”将軍”に昇進したのですわ。」

「戦争中の為リィンを含めて今回の戦争で昇進した者達は”昇進の辞令”を出すだけだったが、戦争が終われば本国の帝城で盛大な昇進式を行い、その後は帝都で戦争に勝利したパレードを行い、民達にも顔を見せてもらう予定になっている。」

「フッ、さすが”実力主義”を謳っているメンフィルだな。リィンと婚約を結んでいる女性の一人である(メサイア)の父としても誇らしい話だ。」

「フフ、間違いなく史上最年少の将軍かつ総督としても、後の歴史でも語られることになるでしょうね、リィン君は。」

セシリアとシルヴァン皇帝が説明を終えるとヴァイスとルイーネはそれぞれ静かな笑みを浮かべて呟き

「あの……シルヴァン陛下、”エレボニア総督”に就任予定のシュバルツァー将軍について伺いたい事があるのですが……」

クローディア王太女は戸惑いの表情でシルヴァン皇帝に質問をした。

「何だ?」

「シュバルツァー将軍が今回の戦争で数々の功績を挙げた事もそうですが、内戦での活躍による名声によって貴国が”保護”をするエレボニアに派遣予定のメンフィル軍の統括者に任命する事は理解できます。ですが、”総督”は軍事方面だけでなく、政治方面の能力も求められる事を考えると政治方面の経験がないシュバルツァー将軍を”エレボニア総督”に任命した場合、保護期間中のエレボニアの統治に何らかの支障が出ると思われるのですが……」

「勿論今のリィンに一国の統治を任せられるような政治方面の能力がない事は承知している。その為、リィンの”補佐”として現在は父上の代わりにメンフィル大使を務めているパントをつける事になっている。」

「パント臨時大使を”エレボニア総督”に任命予定のシュバルツァー将軍の補佐に……という事は保護期間中の統治は実質パント臨時大使主導によるもので、シュバルツァー将軍の役割は今回の戦争と去年の内戦での活躍による名声でエレボニアを保護するメンフィルもそうですが、保護を受け入れたエレボニアの政府や皇家の方々に対する反感や不満を抑える為の”神輿”ですか……」

クローディア王太女の疑問に答えたシルヴァン皇帝の答えを聞いたアリシア女王は静かな表情で推測を口にし

「当面の間はそうなるな。勿論、パントにはリィンの政治方面の能力も鍛えるように指示しているから、パントがリィンが総督としての政治能力を有していると太鼓判を押せば、保護期間中のエレボニアの統治はいずれリィン主導によるものになる。」

「そのパント臨時大使という人物はメンフィル帝国内では一体どのような立場の方なのでしょうか?」

アリシア女王の推測に同意した後シルヴァン皇帝が説明を終えるとアルバート大公が新たな質問をした。



「パント様――――――パント・リグレ前侯爵閣下は現役時メンフィル帝国軍の”総参謀”兼メンフィル帝国政府の”宰相”を務められた我が国が誇る傑物ですわ。」

「ちなみにパントは父上――――――リウイ帝の時から仕え、”総参謀”の座を一番弟子であるセシリアに、”宰相”の座をリグレ侯爵家の跡継ぎである息子にそれぞれ譲って隠居するまでは父上の跡を継いだ私も支えてくれた。」

「なっ!?という事はリィンく――――――リィン将軍閣下の補佐になる予定のリグレ前侯爵閣下という人物はリウイ陛下とシルヴァン陛下、二代のメンフィル皇帝を支えたメンフィル帝国の前総参謀にして前宰相を務められたメンフィル帝国の偉人ですか………」

「フフ、メンフィル帝国の前宰相という前メンフィル皇帝であられるリウイ陛下に次ぐメンフィル帝国にとっての偉大な人物まで派遣されるエレボニアは敗戦国とは思えない程の至れり尽くせりね♪」

「私もルイーネ皇妃陛下の意見に同意致しますわ。メンフィル帝国の寛大なお心遣いには頭が上がりませんわ。」

セシリアとシルヴァン皇帝の説明を聞いたレーグニッツ知事は驚きの表情で声を上げ、静かな笑みを浮かべて指摘したルイーネの言葉にミルディーヌ公女は微笑みながら同意した。

「我が国の前宰相――――――それも父上と私、二代のメンフィル皇帝を支えた”前宰相”ならば、総督に求められる政治方面の能力について文句はないだろう?――――――ああ、先に言っておくがパントも私や父上達のように異種族の血を引いている事でこの場にいる私とセシリア以外の者達――――――つまり”人間”と比べて寿命が遥かに長い事もそうだが、人間からすれば高齢とされる年齢に反して若々しい姿だから”高齢に関する問題”は心配無用だ。」

「それは…………」

「リウイ陛下といい、話に出たリグレ前侯爵閣下といい、私達人間と比べて長寿で若々しく、その気になれば”現役”としてまだまだ働ける”先代”を有するメンフィル帝国の人材の豊富さは一国の国主として羨ましいものですな……」

シルヴァン皇帝の問いかけに反論が見つからないルーシー秘書官が複雑そうな表情で答えを濁している中アルバート大公は疲れた表情で溜息を吐いて呟いた。



「……シルヴァン陛下。先程ルイーネ皇妃陛下が仰ったように貴国がエレボニアを”保護”する理由は”賠償金の回収を確実にする為とエレボニア帝国に隣接している自国の領土の治安維持の為の投資”との事ですが、第9条を定めた理由ももしかして同じ理由なのでしょうか?」

「そうだ。他国との戦争が勃発する事は当面は心配無用であると推測しているが、敗戦したことで政府や皇家に不満や反感を抱く民達や貴族達が内戦や反乱を起こし、その出来事で皇家や政府に滅ぶ事は政府や皇家から莫大な金額の賠償金を回収するメンフィルとしても見逃せんからな。ましてやエレボニアは去年の内戦もそうだが、250年前の”獅子戦役”という前科もある為、内戦や反乱が勃発すれば短期間で鎮圧できるとは到底思えないので、もし内戦や反乱が勃発すれば我らメンフィル帝国軍による武力介入で短期間で鎮圧させる事を決めた。――――――勿論、武力介入した際はその時にかかった戦費をエレボニア政府・皇家に請求させてもらうがな。」

「お待ちください!メンフィル帝国の懸念も理解しておりますが、他国の内戦や反乱に武力介入する等一種の”内政干渉”ではありませんか!」

ある事に気づいたアリシア女王の質問に答えたシルヴァン皇帝の説明を聞いたルーシー秘書官は真剣な表情で指摘し

「フッ、確かに”内政干渉”は通常の国家間の関係ならば非難すべき事実だが、セイランド秘書官は”今のエレボニアの立場”をもう忘れたのか?」

「”エレボニアは戦争でメンフィルに敗戦した”のだから、敗者であるエレボニアは勝者であるメンフィルの要求に応じなければならない立場な上、既にエレボニアは内戦によってメンフィルが戦争を決める程の国際問題を起こした前科まであるのだから、再び内戦や反乱が勃発した際に去年の内戦の二の舞にならないようにもメンフィルが武力介入する事を受け入れるのも当然でしょう?メンフィルのエレボニアに対する信頼度は”ゼロ”どころか、マイナス100%でしょうし。」

「私個人もそうだが、私の跡継ぎであるリフィア個人のエレボニアに対する信頼度はマイナス100%どころか、マイナス1000%だがな。」

「……ッ!」

「リフィア殿下まで今のエレボニア――――――いえ、オリヴァルト殿下の事も信用なさっていないのですか……」

「ハハ……少なくても私の代でリフィア殿下達に汚名返上をすることは難しいだろうね……」

ルーシー秘書官の反論に対してヴァイスは嘲笑し、ルイーネは微笑みながらそれぞれルーシー秘書官に指摘し、シルヴァン皇帝は不愉快そうな表情を浮かべて答え、ヴァイス達の指摘にルーシー秘書官が悔しそうな表情で唇を噛み締めている中クローディア王太女は悲しそうな表情で呟き、オリヴァルト皇子は疲れた表情で溜息を吐いた。



「メンフィル帝国軍が武力介入するのはあくまで”エレボニアに祖国存亡の危機に陥る程の(いくさ)が勃発した場合”との事ですから、逆に考えるとエレボニアが他国との関係を悪化させない事も当然ですが、内戦や反乱が勃発しないような統治を行う、もしくは未然に防げば、第9条が実行される事はないという認識でよろしいのですか?」

「ああ。――――――要するに第9条の発動はメンフィルの保護期間が終了した後のエレボニアの皇家や新政府の手腕にかかっているのだから、皇家や政府が国民達に反乱や内戦を起こす程の不満や反感を抱かせるような失策を行わなければ、単なる文章と化して第9条は実質存在しないようなものだ。」

「しかも反乱や内戦を起こせばメンフィルが介入する事が予めわかっていれば、エレボニアの政府や皇家に反感を抱く民達への牽制にもなるから、第9条は正直エレボニアにとってむしろメリットとなる条約なのではないか?――――――それにこの件に対する反論があるという事は戦後のエレボニアの皇家や政府による政策を信頼していないと言っているようなものだぞ?」

「フフ、そうね。内戦や反乱が起こる可能性を想定している=(イコール)戦後のエレボニアの皇家や政府が民達に反乱や内戦を起こす程の反感や不満を抱く失策をする事を想定しているようなものだものね。」

「それは………」

「むう………」

「……………………」

アリシア女王の確認にシルヴァン皇帝は頷いて答え、ヴァイスは静かな笑みを浮かべてシルヴァン皇帝の説明の捕捉をした後不敵な笑みを浮かべて問いかけ、ヴァイスの問いかけにルイーネは静かな笑みを浮かべて同意し、ヴァイスの問いかけとヴァイスの問いかけを捕捉したルイーネの指摘に反論できないルーシー秘書官が複雑そうな表情で答えを濁し、アルバート大公は複雑そうな表情で唸り、クローディア王太女は複雑そうな表情で黙り込んだ。

「……エレボニアの代表者の方々は第9条について、反論等はございますか?」

「いえ。エレボニアは去年の内戦もそうですが、今回の戦争でも”戦争が生んだ怒りや悲しみ”を身をもって知りましたし、僕自身帝位継承者としてエレボニアに2度と――――――いえ、永遠に戦争を起こさせるべきではないと考えていますので、メンフィルの懸念が実現化しない為にも鋭意努力するつもりです。」

「政府としても、エレボニアに2度と戦争を起こさせない為にも他国との関係回復もそうですが、オズボーン宰相のような他国もそうですが貴族にも強い反感を抱かれるような強引な政策は決して行わず、平民と貴族。共に手を取り合うエレボニア全ての国民達の為の政策を行うつもりです。」

「帝国貴族の筆頭としても、去年の内戦のような愚かな事を2度と起こさない為にも、もし政府との間で何らかの問題が発生すれば”対立”ではなく、”話し合い”で解決するつもりですし、”貴族と言う権力”を濫用して不正もそうですが平民達を虐げる帝国貴族達も容赦なく罰するつもりですわ。」

アリシア女王の問いかけに対してセドリック、レーグニッツ知事、ミルディーヌ公女はそれぞれ静かな表情で答えた――――――



 
 

 
後書き
ちょうどキリがいい所で区切れたので一端区切らせてもらいました。恐らく各国のVIP達への賠償内容に関する説明だけで2,3話くらい使うと思います(汗)それと天冥のコンキスタの決戦篇、ようやくクリアしました。決戦篇を終えて決戦篇で新登場したラスボスなら新たに使い魔キャラとして登場させられると判断したので、黎か黎Ⅱでそのキャラがヴァン達の仲間になる予定です。ちなみに主は今の所はアニエスかヴァンの予定です。ちなみにコンキスタの決戦篇をクリアした人ならわかると思いますが、黎か黎Ⅱで登場する予定の新たな使い魔キャラはフェミリンスやアイドス―――”女神枠”に迫る程の強キャラですので仲間になった時点で、そのキャラが黎シリーズで登場する味方もそうですが、敵も含めて最強キャラになると思います(冷や汗) 
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