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展覧会の絵

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第七話 老婆の肖像その二

 そのことからだ。彼はさらに話していくのだった。
「わかるものだよ」
「だからこそですか」
「邪な人間のオーラは歪んでいて。嫌な光を放っている」
「そして善である人間のそれはですね」
「奇麗だよ。そして悩み苦しんでいる人間のオーラは」
 それはだというのだ。
「揺れて。色も濁っているよ」
「そうなっていますか」
「今。校内に一人いるかな」
 十字は描き続けながら話す。
「とりわけ悩み苦しんでいるオーラの持ち主がね」
「それは一体どなたでしょうか」
「老婆ではないけれど」
 彼が今描いている様な者ではないというのだ。
「それはね」
「それはといいますと」
「少女だよ。ただ」
「ただ?」
「その少女の写真は塾の十階にはなかったね」
「左様ですか」
「ただ。おそらくは」
 どうかというのだ。その少女は。
「あの写真の少女達の様な」
「あの様なおぞましいことを味わっていますか」
「おそらくね。オーラがそう告げているよ」
「では」
「調べるよ」
 その彼女についてもだというのだ。
「そしてね。全てを調べてから」
「そのうえで」
「神の裁きを。僕が下すよ」
「悪を裁きですね」
「そのうえでね。その彼女もね」
「いつも通りですね」
「神は邪悪に囚われている者を見捨てはしない」
 その神の考えをだ。十字は述べた。
「絶対にね」
「だからこそですね」
「そう。だからこそ僕は神の裁きを代行して」
 そのうえでだというのだ。
「人を救うんだ」
「では。私も及ばずながら」
「貴方は裁きを行う立場にないけれど」
 それでもだとだ。十字は描きながら神父の顔を見た。そしてだ。
 そのうえでだ。こうその神父に言ったのである。
「神の忠実な僕だね」
「そうありたいと思っています」
「そうだね。そして神の御教えを人に丁寧に教えている」
「それが神父の務めだと思いますが」
「その通りだよ。この世で最も尊いものは」
「神の御教えです」
「そう。そしてそれを人に教え伝える貴方は」
 神父はだ。どうかというのだ。
「素晴らしい神の僕だよ」
「有り難いお言葉です」
「だから。頼むよ」
 神父にだ。こうも言ったのだった。
「戦い以外のサポートをね」
「承知しております」
 十字の言葉に応えてだ。神父は頭を下げた。そしてだ。
 そのうえでだ。十字は描き続けながら神父に己の決意とやるべきことを述べていた。そしてそうしてからだ。この日もまた礼拝堂で神に祈りを捧げるのだった。
 学校ではだ。春香が沈んだ顔でいた。その目の光は虚ろで表情も暗い。その彼女にだ。
 望がだ。心配して声をかけた。
「おい、どうしたんだよ」
「どうしたって?」
「昨日。塾に居残ったよな」
「ええ。少しね」
「何時まで残ってたんだよ」
「ちょっとね」
 何処かだ。望から視線を逸らしてだ。春香は彼に答えた。
「終電には間に合ったから」
「おい、終電って」
「大したことじゃないから」
 こうだ。望から目を逸らしながら言う春香だった。 
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