ウルトラマンカイナ
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外星編 ウルトラホピスファイト part10
前書き
『デェァァッ!』
――そして、決着の直後。
ミラリは右手に集中させたエネルギーを圧縮し、掌底打ちの要領で必殺の光線「ミラリウムウェーブ」を撃ち放っていた。
その光線の着弾点に発生した小さなブラックホールが、爆発によって飛散するキングジョーの残骸を次々と飲み込んで行く。
『あのウルトラマンの光線で、ブラックホールが……! キングジョーの破片が吸い込まれて行く……!?』
『私達の機体を、破片の飛散から守ろうとしているんだわ……!』
それは爆発に伴う破片の飛散で、BURKスコーピオンやBURKセイバー隊に被害が及ばないようにするための措置であった。特に片翼をもがれている劉静機では、破片の回避は難しい。
そこまで状況を読み込んでいた手力の機転により、BURK側は一切の被害を受けることなく、戦いの終幕を見届けることが出来たのである。
「や……やった! やったぞ駒門ッ! あいつら、とうとうやりやがったッ!」
「はっ……はいッ! 隊長、我々の……BURKの勝利ですッ!」
『……よぉおしっ! キングジョー、完全に沈黙っ! 私達BURKセイバー隊の完・全・勝・利ですねぇえっ!』
ウルトラ戦士達の必殺技を浴び、虚空の果てに跡形もなく消滅したキングジョー。その最期を目の当たりにした弘原海やリーゼロッテ達は、ウルトラマン達とBURKの勝利を確信し、爆発的な歓声を上げるのだった。
「……ふぅっ。まさに首の皮一枚、と言ったところね。あのキングジョーが万全な状態だったら、誰か1人でも欠けていたら……私達が押し負けていたところよ」
BURKスコーピオンのコクピット内に座していたシャーロットも、深く安堵の息を漏らしている。そんな彼女の近くでも、乗組員達の歓声が沸き立っていた。
『シュウワッチッ!』
「……ホピス星人。あなた達の無念は、いつか私達が必ず晴らすわ。そうでなければ、次に滅びるのはきっと……私達の方だもの」
戦いと分離を終えたウルトラマン達は、やがて両手を広げて勢いよく飛び去って行く。その光景に弘原海やリーゼロッテ達が笑顔で手を振る中、シャーロットだけは複雑な表情を浮かべていた。
「おーい、弘原海隊長ーッ!」
「あっ!? おいお前ら、一体どこをほっつき歩いていやがったんだッ! 心配掛けやがってッ!」
「す、すいません! 俺達はあの後……あの後、どうしてたんだっけか……?」
その後、行方不明のままとなっていた士道達が、遥か遠方から手を振って駆け寄って来た――のだが。洞窟の崩落から先の記憶が無いのか、彼らは互いの目を見合わせて小首を傾げている。
それでも、無事に生きて帰って来たことが何よりも嬉しかったのだろう。弘原海は怒号を飛ばしながらも頬に熱い雫を伝わせ、部下達の肩を抱き寄せている。琴乃もその様子を遠巻きに見守りつつ、人知れず目元を拭っていた。
『……ふ、ふんっ! あの地上部隊の男共、一体今までどこで油を売っていたのですかっ! 地球に帰ったら全員お尻ぺんぺんですっ!』
『ふふっ……そんなこと言って、本当は隊長もずっと心配だったのではありませんか? 顔に出てますよ』
『んなっ!? か、勝手なことばかり言わないでもらえますかっ!』
そんな弘原海達の和気藹々とした様子を、BURKセイバー隊の女性陣は微笑ましげに見守っている。表面上は悪態を吐いているリーゼロッテも、内心の安堵を隠し切れずにいるのか、その白い頬を優しげに緩ませていた。
弘原海率いる調査隊と、リーゼロッテ率いるBURKセイバー隊。彼らを取り巻く和やかな雰囲気には、シャーロットも微笑を浮かべている。
「……そうよ。彼らのような、勇敢な若者達を死なせるようなことがあってはならない。このホピス星のような悲劇を、繰り返してはならない……!」
だが――ウルトラマン達が飛び去って行った方向を見上げた時。彼女の面持ちは、悲壮な決意を固めた険しい色へと変貌していた。
◇
「……ん?」
そんな中――弘原海や琴乃達と共に、BURKスコーピオンの船内へと撤収して行く途中で、士道は独りその足を止めていた。
ふと足元を見遣ると、そこには一輪の花が横たわっていたのである。端々が焦げているその花を手に取った士道は、吸い寄せられるように花びらを見つめていた。
草一つ生えていないこの大地に、何故このようなものが残っているのか。そんな疑問を抱く彼の頭上を、BURKセイバー隊の機体が勢いよく駆け抜けていた。
「おーい、士道っ! 何してんだぁ? 一旦船に戻ろうぜぇーっ!」
「……あ、あぁ。今行く」
やがて士道は、背後から響いて来た手力の声に振り返ると、花を手にしたままその場を後にして行く。
キングジョーがボディの内側で密かに守り続けていた、この星の存在を証明する最後の残滓。
その一輪が、外星からの来訪者達に託された瞬間であった――。
◇
――その頃。ホピス星から遥か遠くに位置するとある惑星には、蒼い身体を持つ1人の宇宙人の姿があった。そこはホピス星と同様に、ありとあらゆる命が刈り尽くされた「死の大地」と化している。
『……我が「絶世哮」で星ごと焼き払ってもなお、あれほどの戦闘機能を維持していたとはな。ペダニウム宇宙合金、やはり侮れん硬度だ』
禍々しく凶悪な外観を持つその宇宙人は、天に広がる星空を静かに仰いでいた。そんな彼の背後では、この星に棲息していた「冷凍怪獣」ペギラの屍肉を貪り食う怪獣達が、その咀嚼音を響かせている。
『分離合体機能を排し、純粋な戦闘力のみを追求した防衛用改修機……「ホピスナイトカスタム」、か。ホピス星人共も愚かなものよ。我が「軍団」への隷属を誓い、あのキングジョーを差し出していれば数百年は見逃してやったというのに。弱者が縋る「誇り」というものはいつも、真実を視る目を曇らせる』
その下僕達の様子を一瞥する宇宙人は、深々とため息をつき――足元に転がるペギラの頭部を踏み潰していた。ホピス星を滅ぼしてから間も無く、この星を蹂躙し尽くしていた彼らこそが、全ての災厄の元凶だったのである。
『それにしても……宇宙警備隊の武力介入があったとはいえ、我が「絶世哮」すらも凌いだキングジョーを仕留めるとはな。太陽系第3惑星「地球」の戦士達……か』
その「元凶」たる怪獣軍団を率いている宇宙人は、自身が強者と認めていたキングジョーを倒した地球人達へと思いを馳せていた。遥か遠方の惑星からホピス星の戦いを観測していた彼の興味は、何万光年も遠く離れた蒼い星へと向けられている。
『……ふっ、くくく、面白い。我が「軍団」の贄となるに相応しい絶好の「餌場」ではないか。我々が赴く日まで、せいぜい束の間の平和を謳歌しているが良い……ははははははッ!』
やがてその宇宙人――「極悪宇宙人」テンペラー星人は高笑いを上げ、轟音と共に歩み出して行く。新たな獲物を見つけた主人に続くように、「食事」を中断した怪獣達もその後に続いていた。
「宇宙恐竜」ゼットン。「宇宙怪獣」エレキング。「用心棒怪獣」ブラックキング。「一角超獣」バキシム。そして、「火山怪鳥」バードン。
原種に対してあまりにも醜悪で、凶悪な容貌を持つ5体の怪獣は――食い散らかされたペギラの屍肉を無慈悲に踏み躙り、「テンペラー軍団」の一員として主人に追従している。
彼らが地球に襲来することになる「運命の日」まで、残り5年半。
それが地球の命運を左右するタイムリミットであることなど、この当時の弘原海達には知る由もないのであった――。
後書き
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