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人を呪わば

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第四章

「僕でも」
「汚れちまった悲しみというけれどね」
「中原中也ですね」
「そうしたものは誰でもあって」
「隠したいものですね」
「それを言われるとね、犯罪でなくとも」
「家庭は壊れて」
「仕事も上手くなくなるよ」 
 そうなるというのだ。
「まさにね」
「それでそれがですね」
「彼がしたかったことなんだ」
「そうですか」
「彼はずっと怨んで憎んでいたんだ」
 野上はというのだ。
「本当にね。しかし」
「しかし?」
「そうしたことをした人をどう思うかな」 
 長内は難しい顔で彼に問うた。
「一体」
「正直好きになれないですね」
 彼は長内に苦い顔で答えた。
「いじめられたことは同情すべきですが」
「それでもだね」
「あそこまでしたことは」
「批判されるべきだよ」
「小さな子供の頃のもので」
「四半世紀位前のね」
「しかも人生を壊す様な」
 そこまでのというのだ。
「酷いものは」
「どう見てもやり過ぎだ」
「そうですよね」
「それで平然としているな」
「当然のことをしたとです」
「思っているな」
「はい、復讐を果たして」
 そうしてというのだ。
「すっきりした感じですね」
「何人もの人生を壊してな」
「むしろまだ何かしそうですね」
「復讐を果たしても怨みや憎しみは消えない場合があるんだ」
 長内は苦い顔で述べた。
「そんな人もいるんだ」
「それが野上準教授ですか」
「そういうことだ、ああなるとな」
 長内はさらに話した。
「もうな」
「どうにもならないですか」
「怨みや憎しみは誰でもあるよ」
 長内は人のその感情を述べた。
「だからね」
「野上準教授もですか」
「それは人として当然と言えばね」
「当然ですか」
「ただ誰でもあっても」
 それでもというのだ。
「あっていいものかどうかは」
「また別ですね」
「あっていいものではないよ」
「そうですね、やはり」
「そして野上君は」
 彼はというと。 
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