借金王
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第一章
借金王
ユリウス=カエサルは有名であった。
女好きで学問にも造詣が深く気前がよく有能でしかも。
「でかいな」
「ああ、しかも髪の毛が薄いな」
「男色の噂もあるしな」
「後の二つは言わないでもらいたい」
カエサル本人がむっとして言ってきた、見ればローマの他の者達よりも頭一つ大きく色白で全身に毛がなく髪の毛をカールにしているが後退している。
「私は女性は好きだがな」
「それでもですか」
「そっちの趣味はないですか」
「そして髪の毛は気のせいだ」
こう言うのだった。
「君達の目の錯覚だ」
「髪の毛って錯覚します?」
「前からきてません?」
「お若い時に比べて」
「それは君達の気のせいで錯覚だと言っておく」
あくまでこう言う、見れば見事なトーガを着ている。彼は服にも凝っている。
いい書物があると聞くと即座に買って読み女性への贈りものを欠かさない、そして政治資金も遠慮なく使い。
催しも開き公共事業も行った、金は何も考えることなく使った。
だが家の者が彼に真っ青になって語った。
「あの、お金が」
「顔が青いぞ、いや真っ白になっている」
カエサルはその家の者の顔を見て述べた。
「病気か。すぐに医者に診てもらうことだ」
「私は健康です」
家の者は青くなっている顔で答えた。
「借金がまた増えまして」
「何だ、そんなことか」
カエサルは平然として返した。
「何かと思えば。そなたが無事で何よりだ」
「借金がどんどん膨らんでいるのですが」
「大丈夫だ、借金はしても私は生きている」
カエサルは平然としたままこうも言った。
「それでどうして困ることがある」
「今や旦那様はローマ一の借金持ちですが」
「一番か、それはいいことだ」
「よくありません、このまま増えていけばです」
「髪の毛が増える方がいいな」
「またご冗談を、首が回らなくなりますが」
「それでも生きているならいいではないか」
カエサルは相変わらずだった。
「首が回らなくなろうとも生きていればどうでもなる」
「ではまたですか」
「そうだ、何かあれば借りる」
何でもないといった言葉だった、そして実際にだった。
カエサルは金を借り続けた、何時しかその額は途方もないものでありかなりの数の軍団を結構な間食わせられるだけになった。
それで金を貸した者達が常にカエサルのところに来たが。
カエサルは彼等にだ、逆にこう言う始末だった。
「また借りたいだが」
「あの、返してもらいに来たのですが」
「私達はその為に来たのですが」
「それで、ですか」
「またお借りしたいのですか」
「そうだ、今度は今付き合っているある女性に宝石をあげたくてな」
その為にというのだ。
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