地味な兄と思ったら
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第二章
千紗は兄に最後通告の様に告げた。
「今度彼氏連れて来るから」
「そうなんだ」
「お父さんお母さんにも紹介してね」
そしてと言うのだった。
「お兄ちゃんにも紹介するから」
「そうしてくれるんだ」
「そうよ、だからその時はね」
交際相手を紹介する時はというのだ。
「スーツ着てね、しかし本当に色白いわね」
「日に当たっていないっていうんだね」
「ええ、いつも言ってるのに」
「忙しいともうずっと」
「そうはいかないわ、けれどいいわね」
「僕もだね」
「結婚を前提としてお付き合いしてるから」
真面目な顔と声で話した。
「その時は会ってね」
「それじゃあね」
こうした話をしてだった。
その日が来た、そしてだった。
千紗は後藤元義一九〇を越える逞しい長身で長方形の顔と分厚い唇に小さな穏やかな光を放つ黒いスポーツ刈りの彼がだ。
千紗に連れられて家に来た、後藤は極めて礼儀正しい紳士的な物腰で両親は笑顔で彼ならと思った。
そして兄にも挨拶をしたが。
兄がイラストレーターをしていると聞いてだ、後藤は彼に尋ねた。
「お仕事の時のお名前は何といいますか?」
「キンタローといいますが」
「キンタローさん!?あの」
「えっ、あのって」
千紗は後藤の驚いた声に自分も驚いて言った。
「どうしたの?」
「知らないの?数多くのライトノベルのイラストやアニメのキャラクターデザインを手掛けている人だよ」
後藤は千紗に貌を向けて答えた。
「ゲームの方もしていてね」
「絵のお仕事ってそうだったの」
「うん、それにだよ」
後藤はさらに話した。
「CGアートも有名で売れっ子の」
「お兄ちゃんってそんな人だったの」
「そうだよ、まさか米村さんのお兄さんがあのキンタローさんなんて」
「そういえば今度個展開くそうだな」
「そうよね」
父の幹哉と母の真希絵は何でもないという口調でこう言った、息子は父に娘は母に似ている感じである。
「CGアートで」
「売れてると聞いてたが」
「凄いわね」
「個展って」
千紗はその話に顎を外れんばかりに驚いて言った。
「お兄ちゃんそこまで凄かったの」
「いや、別に」
「別にじゃないでしょ、嘘でしょ」
「嘘じゃないよ、これからもお願いします」
その千紗に言ってからだった。
後藤は恒興に貌を戻して平伏せんばかりになって言った。
「これからお願いします、ファンなんです僕」
「そうだったんだ」
「これからも頑張って下さい」
「僕より妹を大事にしてね」
「そうします」
こう恒興に約束した、そしてだった。
後藤は千紗を大事にしていき遂に結婚もした、千紗は結婚すると家を出て彼と暮らしはじめたが時々実家に帰り。
今も家にいる兄にこんなことを言うのだった。
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