古文書の中身
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第一章
古文書の中身
工藤美優の夫である亨の実家は新潟の農家である、この年の夏夫婦でそちらに里帰りしたが。
夫の家を見てだ、美優はまずは驚いた。細く量が多い黒髪を肩を覆う位の長さで切っており大きくきらきらとした目である。顎に黒子のある色白の顔で背は一六〇程で普通位のスタイルだ。
「江戸時代の民家みたいね」
「実際古い家だよ」
夫もこう返した、色黒で細面で小さな細い目である。黒髪を短くしていて背は一七五程で痩せている。
「うちは」
「お庭の方に倉あるわね」
「それがあるみたいな家で」
「昔からここに暮らしていたの」
「代々な、僕は街に出たけれど」
新潟市にだ、そこの会社で働いていてそこで美優と出会って結婚して夫婦でそちらに暮らしているのだ。
「米農家でね」
「昔からここでなのね」
「暮らしてるんだよ」
「だからこんな古い家なのね」
「今は親父とお袋と姉ちゃん夫婦と甥二人が暮らしてるから」
「じゃあ今からお邪魔して」
「挨拶しような」
こう話してだった。
夫婦で家に入った、夫の実家の家族は皆好人物で美優は優しく迎えられてもてなしてもらった。そしてだった。
一日目は楽しく過ごしたがふとだった。
義母の富恵夫が歳を取って白髪を伸ばした風な顔立ちの彼女が庭掃除をしているのを見て申し出た。
「お義母さん私も」
「手伝ってくれるの?」
「はい、休んでばかりもいられないので」
それでと申し出た。
「させて下さい」
「今から倉掃除もするけれど」
「そちらもさせて下さい」
「そう言ってくれるなら」
それならとだ、義母も頷いてだった。
二人でまずは庭掃除をしてだった、それから倉掃除に入ったが。
倉は随分埃が多くしかも色々な古いものがあった、義母はそこを掃除しつつ手伝っている美優に話した。
「この通りね」
「色々なものがありますね」
「そうなの、古い家だから」
それでというのだ。
「昔からのものもね」
「あるんですね」
「そうなの、じゃあ埃をね」
「掃うんですね」
「そうしていきましょう、季節ごとにお掃除をしてるから」
義母は美優に話した。
「そんなに汚れてないからすぐに終わるわよ」
「そうですか」
「じゃあお手伝いお願いするわ」
こう話してだった。
二人で掃除をしていった、その中で。
美優はふと何点かの巻物を見付けて義母に言った。
「お義母さん何かです」
「どうしたの?」
「巻物あるんですが」
「あら、そんなのあったの」
義母は今知ったという様な声で応えた。
「うちに」
「古い箱に入っていまして」
「それをお掃除したらなの」
「中も奇麗にしようとしましたが」
「別にそこまでしなくてもいいわよ」
「そうですか」
「けれど巻物ね。ちょっと見せてくれるかしら」
美優に少し考える顔になって言ってきた。
「そうしてくれるかしら」
「わかりました」
美優も応えてだった。
そうして義母に渡すとだった、義母はこう言った。
「難しいことが昔の言葉で書いてあるみたいね」
「古文書ですか」
「時代劇に出て来るみたいな」
「ああ、そうした風な」
「そうしたのが出て来るんですが」
「若しかしたら」
義母は美優に少し考えてから言った。
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