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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十四話 黄龍、娘を救うのことその三

 そして実際にローリングアッパーを放ってだ。曇りのない笑顔で言うのだった。
「あの頃はとてもな。同じ技を出してもな」
「濁っていたな」
「俺も変わったんだよ」
 ミッキーは晴れやかな顔で話す。
「色々あったからな」
「俺もそうだな」
「そうだな。あんた今軍を辞めてだよな」
「空の仕事やってるぜ」
 それが彼の今の仕事だった。
「空から宣伝のチラシ撒いたり畑に農薬撒いたりしてな」
「それで暮らしてるんだな」
「いい仕事だぜ。充実してる」
 ジョンも満足している顔だった。
「まあ武器の横流しはあれはな」
「あんたも断るつもりはなかっただろ」
「ジェームスの頼みだからな」
 ミスタービッグのだ。それでだというのだ。
「それにあいつも何か申し訳なさそうに頼んできたしな」
「あのミスタービッグがかよ」
「確かに裏の世界にいるさ」
 それが今のミスタービッグだ。彼は軍人からそうなったのだ。
 その彼についてだ。ジョンはミッキーにこう話した。
「けれどな。根はいい奴なんだよ」
「そうなんだな。あれでか」
「ああ、あんたもそれはわかるか?」
「いや、どうもな」
 少し難しい顔になってだ。ミッキーはジョンにも答えた。
「あまり深く付き合ってないからな」
「だからよくわからないか」
「悪いな、その辺りは」
 ミッキーはにこりとせずにジョンに話した。
「ただ。それでもなんだな」
「いい奴なんだよ、あれで」
「そうか。そういえば孤児院に寄付もしてたな」
 ミッキーもそのことは聞いて知っていた。噂で聞いたにしてもだ。
「それで撃墜されたあんたを命令を無視してか」
「自分の命も顧みずにな」
 そうしたというのだ。彼は。
「パイロット候補生の頃は教官だったしな」
「そういう人なんだな」
「そうさ。俺が今あるのはジェームスのお陰だよ」
 こうまで言うジョンだった。
「どれだけ礼を言っても足りないさ」
「そうか。本当に命の恩人なんだな」
「ああ、そうさ」
「あんたもそうした人がいるんだな」
「あんたはいるかい?そうした相手が」
「弟がいるさ」
 ミッキーにもだ。そうした相手がいるというのだ。
 それでだ。こう言うのだった。
「そいつにチャンプの話を言われてな。それでなんだよ」
「成程な。じゃあ弟さんの為にもか」
「俺は戦うぜ」
 こんな話をしていた二人だった。二人は今は充実していた。目も晴れやかだ。
 戦局は次第にだ。連合軍に傾いていっていた。それを見てだ。
 司馬尉がだ。後方で難しい顔をしていた。そうして言うのだった。
「この状況はね」
「予想外でしたか」
「思いの他しぶといわね」
 司馬尉はこう于吉に述べた。
「私の落雷の術も使えないし」
「妖術の類は全て封印されていますからね」
「貴方の術もよね」
「はい、残念ながら」
 その通りだとだ。于吉は司馬尉に答える。
「ですからこうして後方にいるのです」
「小さな術なら使えるのではなくて?」
「いえ、それすらもです」
 無理だというのだ。今はだ。
「敵も考えたものです。陣全体に結界を敷いています」
「やるものね。そこまでしているの」
「そうです。残念ながら」
「わかったわ。じゃあ今はね」
「私達は指揮を執るだけです」
「兵法には自身があるわ」
 それは司馬尉の得意とするものの一つだった。伊達に何進の軍師だった訳ではない。
 それで白装束の者達を的確に動かしてはいた。しかしだった。
 顔を顰めさせてだ。彼女はこうも言った。
「けれどね」
「それでもですね」
「ええ。敵の将帥が揃い過ぎているわ」
 そのせいでだというのだ。
 
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