ドリトル先生のダイヤモンド婚式
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第六幕その四
「とてもね」
「そうしたものがなくて」
「ハイカラなものがお好きでね」
「王風の置き時計もなんだ」
「お好きなの」
「お二人の子供の頃、お若い頃はまだ憧れの品だったんだね」
「そうだったからね」
それでというのです。
「お好きなのよ」
「成程ね、そうした事情があったんだね」
「今はジョニ黒だって飲めるわね」
「日本でもね」
「ジョニ赤もね」
「イギリスからのウイスキーもね」
そのジョニ黒やジョニ赤だけでなくというのです。
「普通にスーパーで売っていてね」
「飲めるわね」
「酒屋さんに行ったら」
それこそというのです。
「色々な種類のイギリスからのお酒があるよ」
「そうよね」
「けれどお二人の若い時は」
その頃の日本はというのです。
「そんなものもね」
「なかったんだね」
「とても高価で」
それでというのです。
「吉田茂さんが最高級のスコッチウイスキーを飲んでいるのは」
「物凄い贅沢だったね」
「あの人は服は和服だったけれど」
こちらが好みだったというのです。
「薔薇を愛してステッキを持って葉巻を吸って」
「イギリスにいたからね、あの人は」
「嗜好もそれでね」
「お好きなお酒はそれだったけれど」
最高級のスコッチウイスキーでというのです。
「そのスコッチでもよ」
「当時の日本ではね」
「本当に物凄い贅沢なものだったのよ」
「そうした時代で」
「それでね」
その為にというのです。
「お二人は若い頃は」
「そうした時計もだね」
「高価なものだったのよ」
「当時の日本はそうだったんだね」
「先生は確かに日本文化を隅から隅までご存知で」
それでというのです。
「日本人になったわ」
「国籍の問題でなくてだね」
「けれど今の日本人でね」
「当時の日本のことは知っていても」
「そう、それでもね」
日本人でもというのです。
「当時のことは肌で走らないわね」
「それを言うとね」
実際にとです、先生も答えました。
「確かにね」
「その通りだね」
「そう、だからね」
それでというのです。
「当時の日本のことを肌身で知っていると」
「そのことがよくわかるんだね」
「ええ、あの頃の日本はね」
「そうした日本だったんだね」
「今とは全然違うわ」
何もかもがそうだというのです。
「本当にね」
「そういうことだね」
「だから欧風の置き時計をプレゼントしてくれたら」
「僕がだね」
「本当に喜んでくれるわ」
「それだととびきりのものを選ばせてもらうよ」
「今は何でもないものでも」
それでもというのです。
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