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海賊と酒神

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第二章

「やっていいことと悪いことがあるんだ」
「全くですね」
「だから俺達は船を襲ってもものを獲るだけで後は放免だ」
「身代金を貰っても人質は返す」
「そうしてます」
「奴隷を売ってもいい商人に売ってます」
「そうだろ、それなら神様を捕まえたらな」
 若しそうであるならというのだ。
「いいな」
「無礼はない様に」
「そうしないと駄目ですね」
「人として」
「人の道は守って」
「これがゼウス様なら美女か美少年を紹介してだ」 
 好色で知られるこの神ならというのだ。
「機嫌をなおしてもらうがだ」
「まあゼウス様って感じじゃないですね」
「そうした外見じゃないです」
「そっちの用意はしなくていいですね」
「今回は」
「ああ、僕はゼウス様じゃないから」
 ディオニュソスは海賊達に笑って話した。
「安心してね」
「とのことだな」
「じゃあ誰なんだ」
「俺達も人間じゃないって思えてきたが」
「だとしたら一体誰なんだ」
「神様にしても」
「ここに空の樽があるね」
 ディオニュソスは丁度自分に傍にそれがあることに気付いた。
「そうだね、ここに僕の力を見せよう」
「何と、樽がワインで満たされたぞ」
「赤いワインで」
「ワインを出したということは」
「この方はまさか」
「そのまさか、ディオニュソスだよ」 
 神は自ら名乗った。
「僕はね」
「そうでしたか」
「ディオニュソス様でしたか」
「神とは知らず失礼をしました」
「何と言っていいのか」
「あの、ここはです」
 頭は驚く海賊達の前に出て恐縮して言ってきた。
「どうかご機嫌を直して下さい」
「本当に命を奪うとかは考えていなかったです」
 舵取りも言ってきた。
「ですから」
「わかっているよ、これで人を好んで殺す様な外道なら僕も許さないよ」
 ディオニュソスは笑って応えた。
「決してね、けれd君達は根っからの悪人じゃない」
「はい、何分わし等の村は海辺にありますが魚も少なく」
 頭が答えた。
「こうしてです」
「海賊をするしかないんだね」
「それでしか生きられないので」
 それが為にというのだ。
「仕方なく」
「事情はわかったよ、では他に生きる糧があれば海賊はしないね」
「これも厄介な仕事で」 
 海賊のそれはというのだ。 
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