元カノだけれど

　　　　　　　　　　　　　　　　元カノだけれど
　夫の実家に法事で帰ってだった。
　林田澄佳は夫の淳一の従姉の紗友里を見て即座にわかった。そしてそのわかったことを。
　義母の紗枝がこっそりと話してきた。
「あの、紗友里ちゃんはね」
「うちの人のですよね」
「そうなのよ」　
　小声で話した、澄佳はやや短くした黒髪を後ろで束ねていて大きな垂れ目で左目の付け根に泣き黒子がある。やや丸顔で背は一六六程で胸は九十近くありズボンでもわかるまでに見事な脚のラインである。
　その彼女にだ、穏やかな顔をして白髪が目立ってきている長身の義母が話すのだ。
「高校時代はね」
「そうでしたか」
「それも皆敢えて言わなかったけれど」
　それでもというのだ。
「深い仲だったのよ」
「そうでしたか」
「そういうのわかるから」
　周りはというのだ。
「ああした年頃は仕方ないってね」
「興味ある年頃なので」
「だからね」
　それでというのだ。
「皆言わなったけれどね」
「あの人はそうした人ですね」
「今は何もないけれど」
　それでもというのだ。
「そうした娘だっていうことはね」
「はい、私も見てわかりました」
「じゃあ尚更ね」
「言わないことですね」
「今は何もないから」
　二人の間にはというのだ。
「そうしてね」
「わかりました」
　澄佳は義母の言葉に頷いた、そしてだった。
　何気なくを装って法事に参加した、その間。
　面長で清潔な感じの黒髪に明るい顔立ちに眼鏡をかけた妻より十センチは背の高い夫は息子といつも一緒にいた。
　そして紗友里黒い長い髪の毛を腰までストレートにして顎の先が尖った顔の形で高い鼻と日本人離れした彫のある顔立ちでモデルの様なスタイルの彼女はせっせと自分の夫と共に法事の仕事をしていた。そして。
　淳一とは軽い挨拶だけで自分の夫といつも一緒にいた、そうしてだった。
　法事を仕切っていたがこれは彼女がだ。
「ご主人の仁一さんは本家の長男さんだから」
「その奥さんだからですか」
「ええ、一緒にいるのよ。実はうちの淳一と別れて」　
　そしてというのだ。
「大学を卒業してからはね」
「あの人とですか」
「お付き合いをはじめて」
　そうしてというのだ。
「結婚したのよ」
「そうなんですね」
「仁一さんも知ってるわよ」　
　本家の長男である彼もというのだ。
「うちの子とあの娘のことは」
「そうですか」
「けれどね」
　それでもというのだ。