人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった
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59話 疑惑のSunshine
「は........?」
「んなわけねぇだろ。嘘だってバレバレだぞ?」
「そ、そうだ。才が人殺しって..........いくら何でも嘘では突き通せないぞ?」
シャドームーンの放った言葉に竜介は単純に嘘と決め込み、虎太郎は鋭い眼光で平静を保ち、稜と魁は特に動揺する。
「信じるかどうかはお前たち次第だが.............」
「オイ!!」
「変な言葉残して消滅しあがって.............ん?何かあるぞ。」
「ッ!!」
虎太郎の言葉を聞いた途端に稜がシャドームーンが横たわっていた草むらに足を運ぶ。そこには一枚の写真が落ちていた。稜は嫌な予感がしながらもその写真を—————————
「うっ...........うわぁぁぁぁぁ!!!」
「稜!?一体何の..................!?!?」
慟哭を上げる稜、立ちすくむ魁。この事実の重みというのは幼馴染の2人にしかわからないだろう。事実、虎太郎と竜介には全く意味が分からなかった。ただ稜がおかしくなってしまったとしか言いようがないくらいには。
真実がいつも正しいとは限らない.....................
—————————※——————————
「やったぁ!!!ライブ大成功!!!」
「楽しかった〜!」
「マルもう動けないずら..........でも前のゲリラライブより楽しかった!」
「そうだね花丸ちゃん!」
「リトルデーモンたちとの真夏の饗宴............楽しかったわ!」
「この期に及んで厨二発動するなよ善子。」
「善子言うな!!厨二も言うな!!」
花火の下でのライブは大成功。ライブの背景スクリーンにはAqoursのメンバーのイメージカラーに花を加え、花火大会にかけた絵柄である。
みんなのテンションが高いのはドーパミンが放出されている証拠。いや、こんな最高潮の状態で化学物質の話をするなんて興醒めか。
ここでテンションが高い中でも比較的冷静だった梨子とダイヤが4人に物陰に気づく。
「あっ!!竜介先生!虎太郎君!」
「魁さん、稜さん———————おかえりなさい。」
「あぁ.........」
「稜...........稜!!」
稜たちがこちらに来ているのに気づいた鞠莉は稜に向かって走り出し、人目なんか全く気に留めずに、稜に思いっきりハグする。その目は潤いすぎていたことを俺だけが視認できた。皆がそれを確認するとしたら声だろう。
稜は恥ずかしがるわけでもなければ嫌がるわけでもなく、ただただ複雑な表情で鞠莉のハグを受け止めているだけだった。
「.......ごめんなさいごめんなさい..............《《明らかにしちゃいけない》》過去だってあるってわかった。それが分からなかった私が悪かったわ..............!」
「鞠莉——————こっちこそごめん。でも謝る必要はない。お前の言う通り、真実は待ってくれない。真実は暴かなきゃいけない。《《どんな真実でも起こったそれが現実》》だからな。」
「稜...........」
「たとえそれがどんなに《《嫌な現実》》でも。」
どんなことを話しているかは正確には聞こえなかった。だが良くはない話になっていることは大体わかった。鞠莉は気づいていないだろうが。いや、気づいてはいけないのだろう。
真実がわかった上でその真実に他を巻き込むかという事だ。俺はまっぴらごめんだ。Aqoursをそれに大きく巻き込んだところで誰かが傷つくことになれば、俺はどうすればいい?そんな光景はとてもじゃないが見られない。それを目の当たりにすれば、自分がどうにかなってしまいそうだ。だから絶対に巻き込まない。
千歌に誘われた時からそう決めていたんだ。
—————————※———————————
「何だよ4人だけって...........才は呼ばないのか!?」
「その才が議題の張本人だから.........だろ?」
「———————————」
虎太郎、竜介、稜が伊口邸で共同生活を送る中での寝室に集合した才以外のライダー4人。そもそも才に関わる議題をよりにもよって本人の自宅でするのもおかしいと思うのだが、稜にとってそれは留意するべき点ではないようだ。
「まず..........これを見てくれ。」
「!?!?!?!?」
「———————これ、間違いなく才だな。」
「ああ、そしてその後ろに倒れているのは顔こそ見えないが—————俺の父さんだ。」
「お前の父さんって...........」
「竜介先生と虎太郎には言ってなかったけど、稜の父さんは———————正確には育ての父親は2年前に起こった殺人事件の被害者だ。ただ、爆発の影響か遺体もひどく損傷していて、ここ最近じゃ珍しい未解決事件として扱われてる。これは地元ではオハラエンタープライズと黒澤家の対立の背景で起こった事だと思われていて、黒澤系の人間を俺のクソ親父が殺害を命じたと思っていたけど.................」
「なるほど..............確かにこの写真は合成とはとてもじゃないけど言い難い。」
「でもアークなら不可能じゃない。ディープフェイクで極限までシンクロすれば再現可能だ。」
「確かにそうだけど———————」
今まで全幅の信頼を寄せていた仲間のこんな写真が出回れば、パニックになってもおかしくない。竜介先生がわかりやすく再現してくれている。魁だって王の品格も(元々かもしれないが)少し薄れるし、稜だってこの事に未だ困惑している。そんな中で冷静でいられる虎太郎にはあの才ですら、冷静さトップを譲っている。
ところでこの写真には才の後ろ姿しか写されていない。構図としては倒れ込んでいる体を見つめる才を後ろから写真に収めているものだ。大した証拠になるかと言われれば、否めないが、肯定もできない。
「稜はこれを信じているのか?」
「——————わからない。調べてみなければわからない。たとえ信じ難い疑惑であっても、それが嘘であるとわかるまでは。」
「でも才がそんなことするわけねぇ!」
「だから!それを嘘だと証明するんですよ!!」
「でも調べる価値があるってことは少なからずそう疑ってるんだろ?」
語勢の強い竜介に共鳴してしまい、語勢が強くなった稜だが虎太郎の再びの質問に冷静さを取り戻す。
「................ああ。でもそうなった場合、今まで俺は自分が恨んできた相手と共に戦ってきた事になる。もちろんそんな事にはしなくない。だからこそ.........」
「俺は稜の意見に賛成だ。Aqours☆HEROESの仲間の疑惑は俺たちが改めなきゃいけない。そうだろ?」
「俺はそんなの信じねぇ。だから調べねぇよ。」
「ちょっと竜介先生!!」
魁の呼びかけ虚しく、竜介は寝室から立ち去ってしまう。そこで今まで序の口の質問だけだった虎太郎が座っていた自分のベッドから立ち上がる。
「さて、これで話もややこしくならずに済むから話そうか。」
「話がややこしくって................まぁ確かに。」
「———————結論から言うなら、俺もその意見は《《全否定》》させてもらう。」
「え?」
「............お前らしくない言い方だな。虎太郎。」
稜が言った通り、らしくない言い方だ。そもそも今まで虎太郎は特定の意見を言うのはそこまでなかった。怒る時も自分の姉を侮辱された時とかその辺に止まっている。そんな彼が全否定するとは少し考えづらいのだ。
「才は———————俺が憧れ、目標にして、ヒーローらしいと思った2人の男のうちのだからだ。」
「「————————???」」
「だから何があっても俺は才についていく。」
「もし才が殺人犯だったとしても........か?」
「そうだ、魁。才の言っていることは基本的には正しい。俺たちは《《正義の》》仮面ライダーなんだ。善いことが決して正しいとも限らないし、悪事が決して間違っているとも限らない。俺たちだってそうだ。大きな力は破壊しか生まない。振るうこと自体は悪だ。それを悪意を持って振るうか、その悪意を砕くかのどちらかだ。そうやって悪事を行い、悪を調整し続けるのが正義だ。正義を実行するには悪事をしなきゃいけないことだってあるんだ。そういうわけで俺は才を疑うことにはオリさせてもらうぞ。」
「虎太郎............それがお前の正義なのか?」
「稜。お前は正義の意味を履き違えている。お前がやっているのは善意のように見えるエゴだ。エゴを通すのは構わないけれど、正義は誰にでも通じなきゃ意味がない。俺たちの使命は《《Aqoursを守るというエゴと世界を守るという正義》》を貫くことだ。それに反した行動は俺は極力避ける。もちろんお前のやる事を止めはしないけど。」
稜にとっては竜介よりも虎太郎の言ったことの方が余計にタチが悪かった。Aqoursを守ることはエゴであっても、そうは認識され難い。集団でそれを行なっているわけだから。だが才を疑い、その真相を確かめるのはもはや言い訳のしようがない。
稜はもう一度体裁を立て直そうとベッドに座り、考え込む。
「竜介先生や虎太郎がいない以上、俺と魁だけじゃ調査しようがない。何か切り札が有れば————————」
「——————ないこともない。」
「何だ?何か打開策でもあるのか?」
「いや、あまりにそれは踏み込みすぎだけど———————父さんに頼んでみようか。」
「なっ!?」
驚く稜。それはあの傍若無人で利益の追求以外に考えない最低な自分の父親を、あの小原兆一郎に応援要請という提案をするのだ。意外さも甚だしい。
「——————俺の父さんは元々オハラエンタープライズの所属だし、生みの親はそこの全ての元凶とも言える科学者だ。どちらかと言えばアイツらが殺った可能性の方が高い。それを俺たちが低い可能性の方を検証するためにアイツらの口車に乗せられることだって................」
「結局犯人がソイツらだった場合は容赦なく倒す。でもあの才の写真を調べ上げるとなると、アークから得たオハラの技術が必要になってくる。ここは.........それに賭けてみるのも悪くないんじゃないか?」
「——————————————————わかった。早速あの社長のところに乗り込もう。」
—————————※——————————
「花火大会が雨にならなかってよかったな............まぁ、必然だけど。」
夏の夜の雨は少し肌寒い。いわゆるスコールのような雨が暗闇に降っている。そんな中をたった1つの薬用タバコの火だけが輝く。たった1人の暗い部室でただただタバコを吹かしている。
そういえば夜といっても深夜だったか............
「さて、明日はAqoursは休みだ。俺も明日はゆっくりと羽を伸ばさせてもらうぜ!!」
そう高らかに独り宣言して、部室の整理整頓。完全に戸締りをして傘を持ち加えタバコをしながら学校の敷地から出て行く。
これから何のゲームをしようかと迷って、足を早々と進めている
———————だが、《《敵》》というのは不意に訪れる。
そんなビジョンが脳裏に映った。姿をはっきりと目視できないが、攻撃を仕掛けてくる。右、左、バク転、ロンダート、跳び回し蹴り。お安い御用だ。
導き出した答えに従って右左に避け、バク転とロンダートで避けるかつ空中に飛び上がり、高圧水流を右足で切り裂く。
そこでようやく後ろを見るとサメの形をした仮面ライダーが背後に立っていた。腕についている重重そうなコバンザメ型の機械を見るに、おそらくさっきのは奴の攻撃だろう。
「アイツは仮面ライダーアビスか..........ちょうどゲームしたいところだったんだ。特訓に付き合ってもらうぜ。」
『あ!!見つけた!!エグゼイドだ!!』
「は?」
無邪気な——————というより、どう考えても頭がおかしい人間の発言だ。しかしこの状況で俺に声をかけるということは、余程の強者か身の程知らずしかできないものだ。そんな興味本位で後ろを振り向く。
すると2人組の男がこちらに向かって歩いてきていた。1人は既視感のある金髪にヘアバンドの男。もう1人は布切れでできたフードを着た青年が子供のようにはしゃぎ歩いていた。
正直、気持ち悪い。
「滅............こんな夜遅くに俺に何の用だ?お前も俺とゲームしに来たのか?」
「お前の要望に応えたつもりではない。今日はお前に我々の新しい同士の訓練であり、お披露目でもある。」
「?———————その精神破綻者のことか?」
俺はソイツに指差して同時に嘲笑の眼差しを向ける。するとその青年は興奮した様子で前に出てくる。
「そう!!僕は迅!!滅亡迅雷.netのメンバーだよ!!」
「いや聞いてねぇよ。そもそも興味ないって。」
「そんな............!滅!!こいつ嫌い!!」
「あぁ。俺も嫌いだ。その憎悪は人間を滅ぼす糧となる...........!!」
「もうお前ら何でも人類滅亡につなげるじゃん。」
「だが今日はお前の後ろのやつを使っての迅のテストだ——————《《仮面ライダー》》のな。」
「そういうこと!!」
≪フォースライザー!≫
不穏な雰囲気を醸し出す—————滅が使っていたドライバーを腰に巻きつける。迅はピンク色のプログライズキーを一度空中に投げ、再びキャッチする。
≪ウィング!≫
フォースライザーにキーをセットする。するとベルトから金属構成の鷹が現れる。人1人を覆えるような迫力に、正面にいた俺は道路の脇に避ける。
「変身♪」
楽しそうな変身の掛け声とともにレバーを引く。
≪フォースライズ!!≫
≪フライングファルコン!≫
≪Break down.........≫
金属構成の鷹は迅の体を覆い、その装甲と化す。マスクは鋭利な隼のよう。背中にはそれを物語るような金属翼が装着されている
——————仮面ライダー迅 フライングファルコン
「よーし!!いっくよー!!!」
俺の目の前を助走路として大空に駆け出す迅。薬用タバコの吸殻とともに俺の前髪が後ろへと向かうほどの風が発生する。
迅は空中から自身の鋼鉄の羽根を鋭利なカッターのように多数射出する。しかしその相手は俺ではなく、後ろにいるアビスだった。
地上に降り立った迅は怯んだアビスに横蹴りを入れる。
≪ソードベント!≫
アビスはソードベントを発動し、アビスセイバーを召喚。追撃を行おうとした迅の胸部装甲を切り裂く。
「痛てて........やったなぁ〜!!」
「迅!これを使え。」
「これは.........盾かな?」
自分の推測を信じて、迅はその板——————もとい盾でその斬撃を防ぎ、接近したところを再び強力なキックをアビスの腹部に放つ。
「ん?ここを展開すると...........」
≪アタッシュショットガン!≫
「わぁ!!すごーい!!これでも喰らえ!!」
盾のようなそれはアタッシュケースを模倣した銃であった。アタッシュショットガンの放った銃弾はアビスにクリティカルヒットする。
≪ストライクベント!≫
「右腕が変わった?だったら僕も本気出しちゃおっと!!」
≪リボルバー!≫
≪ Progrise key confirmed. Ready to utilize.≫
≪ヘッジホッグズアビリティ!≫
≪ガトリングカバンショット!!!≫
鮫状に変形したアビスの右腕から水流が打ち込まれるが、迅は再び空へと飛び、空から無限に降り続けるかのような大量のハリネズミの針をアビスに掃射する。こんなもの並みの怪人なら一掃されてしまうだろう。
「じゃあトドメ!!確かレバーをもう一回..........」
≪フライングディストピア!!≫
空中で回転して自身のスピードを増強して、空からの飛び蹴りをアビスの胸部装甲に打ち込む。その装甲は抉れ、爆発四散してしまう。
「やったー!!!!勝ったー!!!」
「意外に早かったな...........滅、アイツお前よりセンスあるかもな。」
「————何?」
「お前は処理演算とかで結論づけるやり方の戦士—————でも迅はそれに加えて、情もある。それこそライダーには必須なのかもな。良くも悪くも.............」
「情..............それがアークの言うモノか。」
「ねぇ滅!!あの仮面ライダーやっつけたよ!?コイツもやっつける???」
迅が俺を指差して言う。全く無知で無垢なロボットだ。だがこういう類いの感情が戦闘に持ち込まれると恐ろしい事になるが.........俺には及ばない。
滅はニヤッと不気味に笑う。
「迅、今回は撤退だ。」
「えぇー!!なんで!?」
「今回はテストだと言ったはずだ。予定外のことをするな。それがアークの定めた意思だ。」
「うぅ...........わかったよ——————」
「伊口才、近いうちにお前は滅びる。滅びずともその布石は必ず生まれる。せいぜい首を洗って待っていろ............」
取り出したガシャコンバグヴァイザーのビームガンで爆煙を立て、それを霧に消えてしまった。
「滅びの布石ね.............ふぅ。」
ゲームは始まっているのかもしれない.......................
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