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国立大学を出てもこれでは

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第一章

                国立大学を出てもこれでは
 ガチャ目で痩せた色黒の二十代前半だというのに髪の毛が殆どないしかも視線がおかしな感じの地歴所の写真を見てだ。
 ランドセルを造っている工場を経営している坂本球児初老で黒髪がそろそろ前から来ていて顔は膨らんできていて腹もそうなっている中背の彼は作業服姿で娘の織子烏の濡れ羽色の髪の毛を後ろで束ねた小柄で大きなはっきりとした目と小さな唇と丸めの顔を持つ彼女に問うた。
「お前の同級生だな」
「そうよ、同じクラスだったこともあるわ」
「経歴見たら凄いな」
 坂本は履歴書に書いてあるそれを見て言った。
「うちの県で一番の進学校出てか」
「国立大出てるでしょ」
「教員免許に図書館の司書に博物館の学芸員にか」
「普通免許も持ってるわ」
「大型までな」
「だから戦力にはね」
 採用してもというのだ。
「なるわ」
「それはわかるんだがな」 
 それでもとだ、坂本はその彼伊藤和博の顔写真を観つつ言った。
「何でそんな人がな」
「うちみたいな地元の中小企業に来たかよね」
「大企業とか学校の先生とかなれるだろ」 
 その学歴に修得している資格を見て言った。
「そうだろ」
「そいつ性格悪いのよ」
 織子はむっとした顔で答えた。
「それも滅茶苦茶ね」
「そうなのか」
「勉強は出来るけれど」
 それでもというのだ。
「自己中で思いやりがなくてね」
「そんな人か」
「協調性もなくて自分の言うことばかりで自分が絶対正しくて」
 それでというのだ。
「プライド滅茶苦茶高くて他人はどうなってもいい」
「それで性格悪いのか」
「自慢したがりでね、やたらとマウント取って」
「嫌われてたんだな」
「中学校でもそれで有名だったわ」
 嫌われ者でというのだ。
「それで何でうちに来たかわからないわ」
「そうだったのか」
「正直うちに来ても会社の雰囲気悪くするだけだから」
 その性格故にというのだ。
「採用しない方がいいわ」
「しかし今人手不足だからな」
 それでとだ、坂本は織子に話した。
「それにこれだけの資格持ってるとな」
「採用したいのね」
「ああ、試しにな」
「私はお勧めしないけれど」
「暫く働いてもらってな」
 そうしてというのだ。
「正式に採用するかどうかな」
「決めるのね」
「そうするな」
「私は仮採用も反対だけれど」
「誰でも働いてみないとわからないしな」
 こう言ってだった。 
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