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人生コンティニューしたらスクールアイドルを守るチートゲーマーになった

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13話 再び不幸な1日

「ウチに帰って朝飯を食うという選択肢は無かったんですかねぇ?」
「悪りぃ、無かった。」
「あって欲しかったなぁ..........」


朝っぱらからこんな呼び出しを喰らっている今日この頃。日常茶飯事になって欲しくはないが、竜介先生から朝飯を週末に通っているジムに配達して欲しいという伝言が入ったのでプロテインを添えてわざわざ朝7時過ぎに配達員となったのである。


「タンパク質の補給は欠かせないぜ〜!」
「筋肉バカとはこの事ですね.......」
「バカって何だよ!せめて筋肉つけてからもの言えよ!」
「いや話が噛み合ってませんって、何で筋肉つけるとかいう結論に至るんですか。」
「あー!そんな堅苦しいことばっかり言い上がって!」
「いやそんな堅苦しい言葉言った覚えないんですけど—————」



仮面ライダービルドは名作であったとオーマジオウに取って貰った記憶のダビングDVDを見ていててつくづく感じている。

だがそれと同時に万丈龍我という人物のバカさも大きく目立っていた。その転生後の人物がこの浦江竜介という男だ。世界が変わっても、筋肉とバカは変わらないらしい。でもその無鉄砲なバカさが戦闘では大いに役に立つ時だってあるんだ。



「じゃあ、俺はこれから家に戻りますから。」
「おう、怪人見つけたら倒しておけよ〜」
「了解」


了承の言葉を述べてから、自宅へとよりを戻そうとジムから出て行く。このデリバリーのせいで昨日やれなかったノックアウトファイター2を存分に楽しむという最重要事項が入っている今日の予定が大きく狂い込んでいる。

それ以外にもパーフェクトパズルとかギリギリチャンバラも予定の中に組み込まれている。そんな大切な予定を切り崩すわけにはいかないのだ。


「早く帰らないと————————ん?」



ジムから出た俺が沼津の街を歩いている途中に発見したもの。おそらく、今現在、2番目に会いたくなかったかもしれない連中だった。それは一体誰かと言うと—————


「ククク..........この最強の魔術書でよりリトルデーモンを増やすのよ.........!」
「多分騙されたずら。」
「しかも『初級』って書いてあるじゃない。」
「何よ!本当に効果ある—————はず!」
「自分も自信ないずらか。」
「あれ?才君じゃない!?」
「うわ。帰ろ。」
「何帰ろうとしてんのよ。ちょっとぐらい話に付き合ってくれたっていいじゃない。」
「いや特にお前の魔術話を聞く気はさらさらない。」
「ピンポイントで言うな!」


気づいて少しばかりフリーズしたことが命取りになったか...........どう言う訳か、俺の目の前にいるのは善子・梨子・花丸というある意味異色とも言えるトリオだ。ただ、昨日のようちかの件もあるから、なるべくプライベートでスクールアイドルとは関わりたくはないのだが——————


「3人で買い物でもしてたのか?」
「いえ、梨子ちゃんとは途中でばったり出会ったから一緒にいたずら。」
「同じ—————じゃなくて、本を買いに来たらたまたまね。」
「そこに————魔術書を探し求めていた善子ちゃんが..........」
「なるほどな。事情は大体分かった。—————じゃ、また明日な。」
「いやいやいや!何で帰ろうとするの!?」
「別に帰らない要素がないだろ。俺だって忙しいからな。」
「才君が忙しいって言う時は大体ゲームしに行くから信用ありません。」
「お前らゲームをバカにすんじゃねぇ!こういう人がゲームを悪っていう風潮を形作って行くんだよな〜」
「そんなこといいから、取り敢えず私たちについて来なさい。」
「勝手に決めるなよ!」
「賛成ずら。」
「さすがにこれは才に非があるわね。」
「うふふ、3ー1ね。多数決で決定!」
「最悪だ...........」


ちょっと待ってください。今日は3連休最終日だぞ?昨日はまだ日曜日だったから許容範囲だっただけで、明日からは学校だぞ?ゲームできなくなるんだぞ?ふざけるんじゃねぇ!!———————と言いたかったのだが、梨子の笑顔の圧力と数の暴力によって不幸にも俺は3人に連行されることになった............泣いていいですかね?

てか善子に至っては完全にうざ晴らしだろ............



—————※—————





「またこのショッピングモールか——————」
「またって........才君昨日行ってたの?」
「いや、その........まぁね。」
「ゲームの買い出しずら?」
「何でもかんでもゲームに結びつけるんじゃありません。」
「じゃあ何してたのよ。」
「———————いや、別に。」
「その間は何よ。その間は。何かやましい事があったとでも言うの?」





読者の諸君は分かっているだろうが、何を隠そうここは昨日ようちかエロファッションショーの会場であったのだ。昨日の衣装はかなり目に焼き付いている。ここでその衣装の内容を公開してしまうのは、まだ時期尚早だろう。したがって梨子たちにもシークレットを突き通さなくてはいけないのだ。





「千歌と曜に誘われて買い物の荷物持ちを...........」
「ふーん。じゃあ私たちの荷物も持ってくれるって言う事だよね?」
「はぁ!?!?」
「なるほど!ここに才君が現れたのは荷物持ちをする運命だからずらか〜!」
「ククク......これぞ堕天使の運命を動かす力........!」
「ちょっと待て!ほんとは『じゃあ早速音楽用品エリアに行くわよ』





口から出まかせを言っておけば、何とか撒けるのではと思っていた俺が甘かった。それを逆手にとって梨子は俺に荷物持ちを要求してきた。というよりもともとこの雑用を俺にやらせる算段だったのかもしれない。そう考えると、俺が梨子たちに会った時点で運命は決まっていたのかもしれない。この運命は流石に変えられないかな..........




















花丸、善子、梨子はそれぞれの部門で分かれた。荷物持ちであるから先に終わりそうな梨子から俺はついて行った。





「さてと........ヴィオラの交換用の弦とニッパーは—————あった。」
「そういや梨子はピアノ以外にもヴィオラも弾けるんだったよな?」
「うん、でも最近はピアノの方がよく触れてるから趣味程度で弾いてるの。」
「ヴィオラって高くもなく低くもない音が良いなって思うんだよ。———————オーケストラではヴァイオリンが絶対的だけど、中和剤の役割を果たすものっていうのは俺の中では陰の主役だよ。」
「じゃあ才君はAqoursにとってのヴィオラかしらね。」
「——————そうなれたら良いけどな..........いや、ならなきゃいけないんだよな。それが俺の使命であるんだからな。」
「才君........」





ヴァイオリン奏者からヴィオラ奏者に転身することは事実上の降格らしい。だが、ヴィオラがあるからこそヴァイオリンが輝けるのである。それは逆もまた然り。ヴァイオリンが主旋律であったとしてもそれを成り立たせる全てがあってこそ輝けるんだから。


俺たちはピアノ用品の場所まで移動してきた。そこで梨子はピアノの手入れ用品をあさり始める。



「じゃあ、これとこれとこれもお願いね。」
「いや買いすぎだろ!手入れするのにそんなに予備が必要か?」
「ピアノの細かな手入れは私にとって必須だからね。細かな手入れが音をより美しくするのよ?」
「だからってこんなに買わなくても.........」
「買い置きよ。買い置き。」
「俺が荷物持ちだからって良い気になりあがって...........」
「うふふ。」
「ピアノの繊細さを磨くことは作曲により磨きがかかることに繋がるの————ということは才君の仕事にも当てはまるってことよね?」
「ぐっ—————何も言い返せない..........」


尋常ではない数の手入れ用品を買い物カゴに入れるが、入り切らずもう一つの買い物カゴを持ってくる羽目になってしまった。梨子の買うものですでに一つのカゴが飽和状態となってしまったことに、この先のことに暗雲が立ち込め始めた..........

でも確かにピアノの手入れは俺たちにとっても、梨子にとっても勿論のこと重要なことである。俺の中ではピアノは梨子の象徴の一部のような存在であると認識している。だから、このように続けた。
「ピアノもまた、ソロとアンサンブルかによって役割が変わってくる————けど、どれもに共通してるのはどちらも主役に躍り出るってことだ。ソロもいいけどさ...........重奏も俺は多用な奏で方があって良いなと思う。」
「梨子はソロでも充分輝いてたけどさ、重奏(スクールアイドル)やってる方がもっと輝ける。輝きをより多くの人に知ってもらえる—————と思うな。」
「才君—————」
「だから—————————これから頑張ろうな?梨子。」
「うん!—————ありがと♪」


普段は大人っぽい雰囲気を漂わせる梨子とは違って、少しばかり紅潮した顔に子供のような可愛らしさを秘めた笑顔を俺に向ける。俺はお世辞にも良い事を言ったという気は更々ない。ただ、それに梨子が喜び、モチベーションが上がったのであればそれで良いのだ。


それこそ本来俺がやるべきスクールアイドル事業ではないだろうか?放置してはいけない。かと言って過干渉になり過ぎれば、それはサウザーが目指すような管理された有名ありきのスクールアイドル活動になってしまう。



—————だから........これで良いんだよ。




—————※—————






「花丸はやっぱり本屋か—————頼むから異常な量は買わないでくれよ?」
「分かってるずら。——————苦しいけど何とか絞ってみるずら。」


すでに両方の手が塞がっているのだ。これ以上の負担は負いたくないのだが.........花丸の慈悲深さに賭けるしかないな——————



話は変わるが、花丸の読んでいる本には比較的興味がある。少なくとも堕天使とかいうものよりは。俺もゲーム以外はよく六法全書とか医学書とかを愛読しているが、物語というものはあまり読んだ事がないので————という理由だ。


「それは.........夏目漱石の『それから』か......」
「文豪って呼ばれてる人たちは大抵、周りに異様な者だと思われてる。————でもそれはみんな同じ。ただみんなが文豪たちとは違って、個性を出せずに一生を終えてるってマルは思ってるんだ。」
「なるほど—————俺とは違っていつも物語に触れている花丸だからこそわかることだな。でもその攻略法は間違ってないと思うぜ。」
「この小説の主人公は元々想いを寄せていた恋人を学生時代に親友の方が幸せにできるって判断して結婚を仲立ちするんだけど、最終的に夫婦仲がうまくいかず借金を抱えた親友と絶交してその恋人と結婚することになるんだ。」
「へぇ〜そいつも葛藤しただろうな〜恋人を救うために堕落していたとしても、親友と絶交するなんてさ。」
「しかも義理の姉が持ってきた財閥の娘との縁談を破談にして、実家から勘当されても—————ずら。」
「度胸あるよな〜流石は主人公ってところか.........」
「—————————才君にそんなこと言う資格はないと思うずら。」
「え?」


一瞬花丸を怒らせてしまったのではないかと、少しばかりたじろぐ。そして自分にあった反省点を捜索し始めていた。一見探した気になっただけでは反省点は分からないものと言うが、それを踏まえても見えなかったのだ。ということは—————?


「俺なにか悪いこと言ったか?」
「そういう意味じゃないずら。—————この主人公がちょっとだけ才君に似てるってことずら。」
「俺に?」
「そう。才君もこの主人公と同じように、Aqoursの事を大切に想ってくれてる。とりわけあの社長とかルビィちゃんのお父さんから守ってくれるくらいにはね。」
「花丸————————」
「そんなところはマル、カッコいいと思うずら。」
「そうか............それがカッコいいって思ったこともなかったな。—————いや、俺はそんなこと思ったらいけないけどさ。」
「?」
「かっこよさとか自分の為に戦ってるんなら、それは正義のヒーローなんかじゃない。——————って、竜介先生が言ってたんだ。俺はそれを信じて生きていく。」
「———————ほんと、やっぱり才君はヒーローずら。」


そう。——————仮面ライダーが脈々と受け継いできた意思なのかもしれないが、みんなの為に戦ってこその仮面ライダーなんだ。自分のエゴのために戦ってたら、それは正義なんてこれっぽっちもありはしない。俺の中では自分のエゴは自分で守るが、それ以外は仮面ライダーが守るんだ。


花丸の書物捜索はいまだに続いている。


「じゃあ、これをお願いするずら。」
「ちょっと待て!これをっていうレベルの多さじゃないだろ!?」
「え〜それ以上は絞れないずら。」
「いや余裕で50冊はあるんですけど!?」


花丸に渡された本の量は1番大きいショッピングカートを全て埋め尽くしてしまうほどの本を俺に託してきた...........

これに気を取られる俺はこの時知る由もなかった。

——————発刊された会社がどこであるということに。裏面に大体的に書かれていたPresented by “OHARA”という不気味すぎる文言に—————そう、それこそこれから向かう未来の1つなのかもしれない.........








—————※—————





「お前もう買うな。」
「何でよ!梨子とずら丸がこんなにたくさん買ってるのに私が買わないわけがないでしょう!?」
「いやどうせお前堕天使グッズなんざ有り余るほど持ってるだろ?また今度にしろ。」
「無理な話ね。」


もう梨子と花丸の荷物の重圧が凄すぎて、何かの技を喰らっているかのような感覚に襲われている。こんな事をしていれば、肩こりどころか鎖骨がどうにかなってしまいそうだ。


「てか、堕天使グッズなんてこのショッピングモールに売ってないだろ。はい終わり。」
「何勝手に決めつけてんのよ。堕天使グッズは作るものなのよ!」


やってきたのは百均だ。そこで善子が求めていたものは、電気スタンドや電気コード。ネオンサインなどのようなものだ。


「あーなるほど。ネオンサインで魔法陣を形成しようってんだな。」
「巨大魔法陣を形成し、巨大リトルデーモンの召喚する—————」
「はいはい、すごいすごい。」
「適当に流すな!」
「と言われてもな——————」
「堕天使衣装以外はほとんど自分で作ってるの。そういう時はこの百均のものが役に立つの。」
「そうか........こう考えたら善子って結構手先が器用なんだな。」
「そう?」
「ああ、やっぱり堕天使ヨハネだな」
「フフフ.......ヨハネにかかればこんな事!造作もないことよ!」


調子に乗る善子。でもこれについては調子に乗ってもいいのではないかと俺は思う。今まで堕天使キャラを表立って出すことが出来なかった善子が今となっては個性を極限までに出してくれているのだ。——————それに冷ややかな目を向けられようと、もう善子は厭わないのだ。その点だけでも大きな成長だ。


「ほんと、お前は成長したよ。」
「フッ、神を倒すまでこの堕天使ヨハネは何度でも強くなる..........でもそのきっかけをくれたのは千歌たちはもちろん、あなたもその一端を担いでるのよ?」
「俺が?——————別に何かした覚えはないんだけどな..........」
「何にでもなれる...........:この言葉がなかったらまだAqoursに入ってなかったかもしれないわ。」
「そう言ってくれると嬉しいな。」
「はい、これ。」
「——————何かお前が1番普通な量だわ。あの2人が異常な量を買っただけの話だろうけど。やっぱり善い子の善子だな。」
「善子言うな!」 
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