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ヘタリア大帝国

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TURN49 騎士と海賊その七

「飾らないんだよ」
「飾らないというよりは」
「帝らしくないっていうんだな」
「マリー様の様です」
 エイリス王室のムードメーカーである彼女に通じるものがあるというのだ。
「これは」
「あの王女さんのことは有名だな」
「飾らず利発的な方です」
 ネルソンは何気にマリーを褒める。
「セーラ様とはまた違った素晴らしさを持っておられます」
「その王女さんと似てるか」
「私の見たところ」
 そうだというのだ。
「そうですか。この方がですか」
「我が国の国家元首であられる帝という訳だ」
「そうなのですね。それでは」
「今回私の前に来てくれた理由ですが」
 帝はあらためてネルソンに言う。微笑みと共に。
「あのことでしょうか」
「はい、貴国は太平洋経済圏を築かれましたね」
「その通りです」
 帝は微笑みと共にネルソンに答えた。
「その議長国を務めさせてもらっています」
「議長ですか」
「戦争中は我が国ですが」
 非常時、戦争中なのでそこは変えられなかった。指導者が頻繁に変わる様ではまともな指導ができないからである。
「戦争が終わればです」
「議長国は変わるのですね」
「一年ごとに変わります」
 そうなるというのだ。
「各国の持ち回りになります」
「ではやはり貴国は」
「太平洋を征服、統治するつもりはありません」
 帝はネルソンにこうも答えた。
「太平洋は皆のものですから」
「だから植民地もですか」
「ありません。韓国さんと台湾さんにも独立してもらいました」
「主権国家同士の経済圏ですか」
「関税同盟や軍事同盟でもありますが」
「言うなれば共同体でしょうか」
「いえ、太平洋各国はそれぞれ文化や経済規模、システムでかなりの違いがありますので」
 それでだというのだ。
「緩やかな国家連合になるでしょうか」
「それが太平洋経済圏ですか」
「そうです」
「それではまともに機能するかどうか疑問です」
 ネルソンはここでもエイリスの植民地主義から話した。
「指導国も一年ごとに交代するのは」
「疑問ですか」
「どうしても大国主導になるでしょうが」
 日米中、それにインドであることは言うまでもない。
「そうした平等主義は理想論です」
「そうですね、しかしです」
「あえてその理想をですか」
「実現したいと思っています。そして実際に」
「実際にですか」
「各国にインフラ投資や経済援助を行なっています」
 そうしているというのだ。
「新しく内相に就任した五藤ミナキさんにお願いしています」
「今彼女は出張でここにはいないがな」
 伊藤がこの事情を話す。
「頑張ってくれている」
「そして民間レベルでの相互交流も深めています」
 また話す帝だった。
「そのうえで少しずつですが」
「相互理解も深めていますか」
「そうしています」
「そういえば」
 ここでネルソンは思い出した。彼が今いる太平洋経済圏の状況がどういったものになっているかを。
「日本人もインド人も四国人もマレー人も」
「全ての国の人達がですね」
「交流し楽しく過ごしていますね」
「私達はゆっくりとそうした関係を築こうと考えています」
「植民地とは違い」
「植民地ではエイリス人と現地の人達で違いますね」
「明確な階級がありました」
 ネルソンはやや暗い顔になって答えた。 
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