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おぢばにおかえり

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第七十話 詰所はお家その十五

「そのことはね」
「はい、ですから今も」
「ワリカンなのね」
「それでいいですよね」
「私が新一君の分を払わないならね」
「そういうことで。図々しいのって本当に嫌いなんですよ」
「いや、それはわかったから」 
 これは新一君の短所だと思いました、嫌いだと徹底的なのは。
「じゃあお勘定はそういうことでね」
「はい、自分の分は自分で」
「じゃあワリカンじゃないわね」
「だって僕の方がよく食べたんですよ」
 だからだというのです。
「それでワリカンだったら先輩が損じゃないですか」
「だから自分の分はなのね」
「そういうことで」
「それじゃあね」
 私も納得しました、少なくとも新一君は人が一歩退いたら一歩前に出る様な人ではないことはわかりました。むしろ退く人だと。
 それでお勘定を済ませてでした。
 私達は自転車で詰所に戻りました、帰りは坂道でしたが。
「かえって安全ですね」
「登り坂の方がなのね」
「スピード出ないですから」
「そうね、下りだとどうしても出るわね」
 このことは私もわかりました。
「だからね」
「はい、それに緩やかですからね」
 その登り坂もというのです。
「これ位だと何でもないです」
「そう?結構な坂道でしょ」
「全然。僕の住んでるところ山ばかりなんで」
「坂道も多いの」
「はい、物凄いですよ」
「そうなのね」
「先輩もじゃないですか」
 ここで私にも言ってきました。 
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