八条学園騒動記
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第六百六十一話 朝に思うことその十
「自分の子供にドイツ風の名前をつけておった」
「日本のものじゃなくて」
「そこに無理に漢字を当てはめたのじゃ」
「そうだったんですか」
「所謂キラキラネームのはしりじゃった」
この言葉もまたこの時代でも使われている。
「それでじゃ」
「しかもじゃ」
「まだあるんですか」
「細菌を警戒して風呂に入らず生ものも食べんかった」
このことも伝えられている。
「寿司もじゃ」
「食べなかったんですか」
「細菌だらけの手で握った生ものなぞと言ってな」
「昔は今よりずっと衛生がしっかりしてなかったですね」
「そのこともあってな」
「お寿司も食べなかったんですか」
「わしは江戸時代から食しておった」
今は生は生だがフルーツを食べつつ話した。
「そうしておった」
「その博士から見ますと」
「この男は好きになれぬのな」
「思われたんですね」
「うむ」
その通りという返事だった。
「到底な」
「それで今もそう言われるんですね」
「ちなみに大福茶漬けが好きであった」
「甘党だったんですか」
「酒は飲まずな」
「そうだったんですね」
「ちなみに脚気は当時ほぼ日本だけの病気であった」
他の国にはなかったのだ。
「そう言ってよかった」
「確実に主食がお米だからですね」
「中国では包も餅も食べるであろう」
「麦のものですね」
「それで同じアジアでもじゃ」
「中国では脚気がなかったんですね」
「そうであった、タイとかでも別にな」
「なかったんですね」
「あってもあそこまではな」
当時の日本程はというのだ。
「当時の日本はおかずも中々じゃ」
「ビタミンB1がなかったんですね」
「そのせいでな」
「脚気が多くて」
「それでじゃ」
またサラダを食べながら話した。
「街ではな」
「沢山の人が亡くなったんですね」
「そうなのじゃ」
「それも歴史ですね」
「ただな」
博士はこうも言った。
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