八条学園騒動記
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第六百六十一話 朝に思うことその四
「今日の朝食は」
「お気に召されましたか」
「どれもな」
そのヨーグルトも食べて答えた。
「実にな」
「実はいつも買っている近所のスーパーで」
「あそこでか」
「買ったものですが」
「そうなのか」
「買ったもののメーカーも」
野上君はさらに話した。
「一緒なんです」
「どれもいつも通りか」
「そのヨーグルトもジャムもそうで」
「他の食材もな」
「全部同じです」
これまでと、というのだ。
「本当に」
「しかしどれも前より美味いぞ」
「多分メーカーの方でよりです」
「美味しくしてきたか」
「そうじゃないですか?」
商品自体の質を上げてきたというのだ。
「これは」
「そうなのか」
「こうしたものも日進月歩ですよね」
「うむ、味のこともな」
「ですから」
それでというのだ。
「前よりもです」
「どれも美味くなっておるのじゃな」
「努力しませんと」
「他のメーカーも頑張っておるからな」
「それでです」
「どれも美味くなっておるか」
「ええ、同じ商品でも」
それでもというのだ。
「味のレベルはです」
「上がっていっておるのじゃな」
「そうですよ、というか博士も資本主義はご存知ですよね」
「うむ、競争社会でな」
博士も即座に答えた。
「その競争でじゃ」
「進歩していきますね」
「弱肉強食と言えば聞こえは悪いが」
「競争でよくなりますね」
「皆努力してな」
「やっぱりご存知じゃないですか」
「だがわしは二百億年生きておる」
この宇宙がはじまった頃からだ。
「この宇宙ではな」
「世界樹の管理人の一人でしたね」
「この宇宙に入る前はな」
「それでこの宇宙では二百億歳ですか」
「それで二百億年生きているとな」
それだけの歳月をというのだ。
「時間の感覚が違うのじゃ」
「一年は何でもないですか」
「だから一年の間に変わることはな」
「然程なんですね」
「気付かぬ」
そうだというのだ。
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