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銀河を漂うタンザナイト

作者:ASHTAROTH
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アスターテ星域会戦①

 
前書き
他の人が書いてるのを見たのと、学校で原作小説呼んで急に書きたくなった。だから書きました。読みずらかったり変なところがありますがそれは単に作者の腕が悪いだけです。 

 
宇宙歴796年/帝国歴487年2月 アスターテ星域 自由惑星同盟軍第4艦隊旗艦レオニダス 艦橋


『それで、そちらはどうなったんだ?』
「正直言って微妙なところだ、パストーレ閣下には敵が分進合撃する我々に対して各個撃破戦法を取るかもしれない事を伝えたが、いまいち聞き入れてもらえなかったな」

第4艦隊作戦参謀のアラン・クロパチェク大佐はそう言うと手元に置いてあった紙コップをつかんでコーヒーを口に含んだ。

『まあ、確かにね』

モニターから聞こえる声の主は第2艦隊作戦参謀のヤン・ウェンリー准将だった。
現在、彼らは帝国軍が実行するであろう作戦について話し合っていたのだ。

「それで、ラップの方はどうなんだ?」
『こっちも似たようなものさ、司令官のムーア中将は頑固でいらっしゃるし、他の幕僚たちも司令官の意見に同調してこちらの話に耳を傾けようとしない』
「なるほど、つまり皆各個撃破される危険性に気づいていないという訳か。ま、気持ちはわからんでもないがな…」

クロパチェクはそう言いながら肩をすくめた。
同盟軍の兵力は約4万隻と帝国軍遠征艦隊の2倍であり、この戦力差があれば勝てると考えるのは当然であったろう。それに今回の会戦はかつて自由惑星同盟軍が圧勝したダゴンの戦いをと同じ布陣であり、その自信の程も伺えるというものだった。
だが、クロパチェクやヤンのような冷静かつ慎重な人間はそのような楽観論を信じてはいなかった。
そもそもダゴンの戦いでは同盟軍は奇襲攻撃に成功し、敵指揮官が無能で地理に不慣れであったために勝利する事が出来たのである。帝国軍も今回はそれを警戒しているはずなのだ。

「そもそも、上の連中はあまりに楽観的すぎる。此方が敵の2倍近い数だからと言ってろくに連携せずに勝てると本気で考えてるのか、だとしたらあまりにアホすぎる。それにいくら敵の陣容がリークされたとはいえ、フェザーンからの情報だけですべてを判断するとは…、もっと慎重に行動するべきだろうに。もし偽情報だったらどうするつもりなんだまったく…」
『それは私も同感だよ』

ヤンの言葉にも苦々しさが含まれていた。

「ま、そうだとしても我々の任務は変わらんさ。帝国軍が攻めてくる、我々が迎え撃つ。結局極端に突き詰めればそういう事だな」
『ああ、しかしそれならそれで仕方が無い。我々は軍人として与えられた命令を遂行するだけさ』
「その通りだ。だが問題は……」

クロパチェクはそこで言葉を濁らせた。彼は同盟の将来を憂慮していたのだ。このままでは遠からずして帝国との戦争に敗れてしまうのではないか?

(いや、まさかな。そう簡単に同盟が滅ぶとは考えたくないが…)

クロパチェクは自分の考えを振り払った。
今度の戦闘はいつものごとく一時的なものであるはずだ。今回同盟が勝とうが負けようが、終わればまた元の平和な日々が訪れる事になるはずである。

(自由惑星同盟の1軍人としての立場から考えればこの上なくいい事ではあるがな…)

クロパチェクは心の中でつぶやくと、自分の仕事に取り掛かるべくヤンとラップに別れを告げて通信を切った。

「じゃあな、またパストーレ中将を説得してくる」
『ああ、…てくれ…"ガガッ"、がわる…くて…"ジジッ"』

ノイズ混じりの声を最後に二人の友人との通信は終了した。

「?、なぁナン技術少佐、さっき急に通信状態が悪くなったんだが通信機の故障か?」
「いえ、特に故障ではありませんが……」

聞かれたナンは首を傾げつつ答えた。

「しかし、妙ですね。さっきまで何の問題も無く通信出来ていたのに……」
「…なら敵だな」

クロパチェクはそう呟くとナン少佐に向きなおる。

「すぐに全艦隊に通達しろ、敵襲の可能性が高い」
「し、しかし司令官閣下のご裁可を得ずには…」
「問題ない、今から許可を得る」
「ですが……」

ナンが何か言おうとするのを無視してクロパチェクはナンの腕をつかんでパストーレの元へ向かう。

「閣下、至急お伝えしたい事があります!」

クロパチェクの報告を受けたパストーレの顔には困惑の表情が浮かんでいた。

「敵襲だと!?どういう事だ!?」
「はい、先程小官は第2・第6両艦隊の同僚と通信を行っていましたが、突如通信が妨害されました。恐らく敵軍による電波妨害ではないかと思われます」
「なんと……」

パストーレは信じられないという顔をした。

「本当なのかね?」
「はい、少なくとも私はそう思います」
「えぇと…、小官もクロパチェク大佐の意見に賛成であります。現に大佐殿が通信していた時は感度は良好でしたし、通信機に問題は見られませんでした」
「まさか、そんなことが…」

パストーレは考え込む。

「確かに可能性としてはあるかもしれない。だが、まだ確証がある訳ではないのだろ?」
「はい、しかし状況証拠から見てまず間違いないかと……」
「ふむ…いやしかし戦術理論的に考えればあり得ないことだ、普通はこのような状況では防御に徹するのが常識だ。それなのに攻撃してくるというのは…」

パストーレは腕組みをして考える。

「なにより帝国軍の各個撃破戦法はこちらの戦力集中を招くだけだ。それが分かっている以上帝国軍は我々に対して攻勢をかけるはずがない」
「しかし、帝国軍は我々よりはるかに優位に立っています。帝国軍が勝利を得るためには我々を各個撃破する以外に方法はありません。なぜなら帝国軍は総兵力こそ我々の2分の1ですが、個の数でみれば敵は2万隻なのに対して我々は1万半程度です。戦力比は帝国軍が圧倒的に有利で、総力戦ならともかく局地戦では勝ち目がありません」
「…………」

パストーレは黙り込んでしまった。彼の顔からは血の気が引き、その額には汗が滲んでいる。作戦開始後こそ始めはクロパチェクの各個撃破を懸念する発言や作戦案ををあり得ないと一蹴したが、実際に敵が仕掛けてきたという事になれば話は別である。
彼は自由惑星同盟軍の軍人として多くの戦場を経験し、その中で常に冷静かつ合理的な判断を下して来た。同期の第2艦隊司令官パエッタをして『百戦錬磨』と言わしめたその経験からくる自信が彼を支えていたのである。だが、その経験をもってしても想定外の事態に遭遇すると混乱するのは器量というより彼の性格に起因するものであった。

「閣下、今は悩んでいる時ではありません。決断しなければ帝国軍が攻撃を開始してしまいます。そうなってしまえば我々は為す術もなく敗北してしまうでしょう。それは閣下の望むところではないと思いますが」

クロパチェクの言葉にパストーレはハッとした。

「そ、そうだな、君の言う通りだ。よし、全艦隊臨戦態勢を取れ、ドゥラクロワ准将の先頭集団は偵察機を発艦させて敵の位置を特定せよ」

パストーレの命令に幕僚たちは敬礼して答える。

「了解しました」
「それと、艦隊から足の速い巡航艦2,3隻ずつ抜き取って、第2、第6艦隊への連絡に回せ!」
「分かりました」
命令を受けた副官は早速行動に移るべく部屋を出て行った。
「さて、後は待つだけか……」

パストーレは椅子に腰掛けると机の上に肘を突き両手を組んだ。

「司令官閣下、お飲み物でもいかがですか?」
「ん?ああ、コーヒーを頼む」

クロパチェクはうなずくと、自分のコーヒーを用意しつつパストーレにもコーヒーを差し出す


「どうぞ、インスタントで申し訳ありませんが」
「いや、構わん」

クロパチェクは差し出されたカップを受け取ると、自分の席に戻り、何も入れていないブラックのそれを口へ運んだ。

「……」
「……」

沈黙が流れる。パストーレは組んだ手を見つめたまま微動だにしない。クロパチェクはその横顔を眺めながらパストーレが口を開くのを待った。

(さすがに緊張しているようだな)

そう思うとクロパチェクはパストーレの心中を思いやった。

(無理もない、この状況で平静を保てる方がどうかしている。俺だってこんな状況はそう遭遇したことも無い……)

ふと、クロパチュクは思った。自分とパストーレの違い。それは軍人としての経験の差である。士官学校を出たばかりの自分が、すでに30年近く軍に在籍し数々の修羅場をくぐってきたパストーレと同じような気持ちになるなどおこがましい事だった。

(いかんな、やはり俺はまだまだ未熟だ)

そう考えると彼は落ち着こうとコーヒーをまた飲んだ。

(コーヒーは苦くて冷たい方がいいな…)

気分転換にそうとりとめもないことを考えた時だった。

「司令!敵影確認しました!」

艦橋の指揮机に駆け込んできた伝令兵の報告にクロパチェクは思わず立ち上がって叫んだ。

「どこだ!?」
「はっ、敵艦隊は我が艦隊の前方に位置しており、約1時間で先頭集団と接敵します!!」
「…よし分かった、全巻総力戦用意!!これより敵艦隊を迎撃する!」

クロパチェクの言葉にパストーレは我に返る。

「はい、直ちに」

パストーレはそういうと通信士に指示を出した。

「第5集団、第7集団は前進微速、敵艦隊を包み込みつつ十字砲火を浴びせてやれ!」
「了解です」

第2、第6艦隊への連絡に向っていた巡航艦6隻が命令を受けて、敵襲を伝えるべく加速した。

「ドゥラクロワ准将の戦闘集団を直ちに後退、本隊と合流させろ!」
「了解…、っダメです、敵艦隊の通信妨害が激しく連絡が取れません!」
「何だと!?、なら連絡艇を出せ、急げ!」
「は、はい」
「敵艦隊が接近しています、急ぎましょう」

クロパチェクが声をかける。

「よし、全艦発砲用意、先頭集団との合流後に攻撃を開始する」

パストーレが宣言すると幕僚たちは一斉に動き出した。

しかしことはパストーレの想定よりも早く動いたのだった。

「報告、先頭集団、敵艦隊と交戦開始!」
「連絡艇は⁉」
「まだ移動中です」
「バ、バカな、早すぎる…」
「閣下、敵の戦力は我々の2倍近いのです、予想される交戦時間も長くなるでしょう、ここは後退して味方艦隊と合流すべきかと」

クロパチェクの言葉にパストーレは歯ぎしりをした。
「わ、分かっている、だが、まさかここまでとは思わなかったのだ…」
「閣下、今は後悔している時ではありません、酷ですがとにかく我々だけでも撤退を」
「……仕方あるまい、全艦後退して友軍と合流するぞ」
「了解」

パストーレは悔しさをにじませながらも命令を下した矢先…。

「報告!ドゥラクロワ准将戦死、先頭集団壊滅しつつあり‼」

その言葉にパストーレの顔が青ざめた。

「な、何だと!?どういうことだ」

パストーレは動揺しながらも報告してきた兵士に声をかけた。

「はい、それが敵艦隊がこちらの常識を上回る速度で突撃してきたため、先頭集団は鎧袖一触で蹴散らされた模様です」
「ば、馬鹿な……」

パストーレは信じられないといった顔でつぶやいた。

「閣下、もはやここは味方部隊と一刻も早く合流すべきかと考えます、すぐにでも後退命令を」

クロパチュクの言葉にパストーレは一瞬考え込んだが、やがて意を決したように言った。

「…全艦砲戦用意、これより敵艦隊と交戦する‼」
「な、何を言っているのですか、この状況下で戦闘など自殺行為です!ここは直ちに味方艦隊との合流をs「うるさい黙れ!指揮官は私だ!」

パストーレは叫ぶと、さらに命令を発した。

「各艦一斉射撃、ファイヤー‼」

クロパチェクの制止を振り切り、パストーレは全艦砲撃を命じた。

「……ッ」

パストーレの命令から10秒と経たずに旗艦レオニダスの装備する40門の艦首25㎝中性子ビーム砲の一斉射を皮切りに各艦が発砲を開始した。


銀河帝国軍遠征艦隊 旗艦ブリュンヒルト 艦橋

「敵艦隊より高エネルギー反応!」

レーダー席からの警告にラインハルトは小さく目を見開いた。

「なんだと?」
「敵艦隊が発砲、反撃来ます!」
「回避行動!」

ブリュンヒルト艦長シュタインメッツ大佐の指示に操舵手が即座に対応、艦を右へ急速旋回させた。
その直後、ブリュンヒルトの乗り込んでいた者達は今まで航行していた宙域に閃光と衝撃が走るのを感じた。

「被害状況を報告せよ」
「損傷なし、シールド出力がやや低下しただけです」
「構わん、我が方も応戦する。前方のメルカッツ艦隊とファーレンファイト艦隊を先頭に続けて敵本隊に攻撃を開始せよ」
「了解しました」

そう言うとシュタインメッツはオペレーターたちに指示を出す。

「全艦戦闘開始、目標敵第4艦隊」
「了解!」

ブリュンヒルトと後方に続く艦艇から放たれた無数の中性子ビームからなる光の束がが敵艦隊に襲い掛かる。

「ふむ、敵もやるようだ」

ラインハルトは感心したような声を上げる。

「ラインハルト様、喜んでおいでですか?」
「まあな、どうやら敵の指揮官はそれなりに優秀らしい」

キルヒアイスの言葉に答えると、ラインハルトは笑みを浮かべて言った。

「こんな戦いとは言え、ある程度的に歯ごたえが無くては退屈してしまうからな」
「その通りですね」

キルヒアイスも同意した。

「最も、結局はそれなりに優秀どまりだがな…」

ラインハルトは皮肉気に少しばかりの軽蔑の色を含めた発言をした。


一方ファーレンハイト少将率いる帝国軍分艦隊はメルカッツ分艦隊に先駆けて、同盟軍第4艦隊先頭集団約3000隻を一撃で屠った後、そのまま後続の敵本隊へ確固たる意志と迅速さを持って向かっていた。

「全艦ワルキューレを発進させよ、近接戦闘に移るぞ!」

ファーレンハイトが生き生きとした声で命令を下す。

(まずは勝つことが先決だ。ローエングラム伯の功績になるにしても、とにかく勝つ戦いならば勝ってやるさ!)

「了解、ワルキューレ隊発進します」

通信士の報告と同時に、帝国軍各艦から次々に宇宙戦闘艇であるワルキューレが次々と発艦していった。
白銀に塗装され、腕状の兵装ユニットとブースターを持つその姿は、まさに死の天使と形容するにふさわしい外観だった。

「全機出撃完了」
「よし、敵本隊を叩くぞ」

ファーレンハイトは意気揚々と命令を下した。
帝国軍分艦隊のワルキューレ隊は同盟軍第4艦隊本隊に猛然と襲い掛かった。

「報告、敵戦闘艇接近!」
「こちらもスパルタニアンを向かわせろ!」

第4艦隊司令のパストーレ中将はそう命令すると、自らも迎撃のために戦闘空中哨戒任務についていたスパルタニアン部隊を前進させる。

「スパルタニアン部隊前へ、敵を近づけるな!!」

パストーレの命令により、スパルタニアン部隊は一斉に散開してワルキューレ部隊に攻撃をしかける。
対するワルキューレは両腕部に搭載された4門のレーザー砲を発射、強力なビームの奔流が敵スパルタニアン部隊を襲う。スパルタニアン部隊は戦闘空中哨戒任務に就いていたものと新たに発艦したものも合わせてかなりの数だったが、帝国軍の方が数で優っており母艦ごと宇宙の塵になった部隊もあり、じわじわと押され始める。そして、ついに敵のワルキューレ部隊が艦艇を射程距離に収め、攻撃を開始する。

「戦艦ククルカン被弾!」
「畜生、なんとしても持ちこたえろ!」

パストーレは必死に命令を発しながら、次々と破壊されていく味方の艦艇を見て唇を強く噛み締めた。

「おのれ、帝国め!」

パストーレは怒りの声を上げながらも、自軍の戦力が劣勢に立たされていることを認識していた。
更に同盟軍第4艦隊にとっての不運は続く。

「右側配に高エネルギー反応!」
「何!?」

オペレーターの言葉に思わず声を上げたパストーレが見たものは、高速で飛来する無数の光弾だった。それはワルキューレ隊が放った中性子ビームではなく、帝国軍のメルカッツ分艦隊からの攻撃だった。
予想外の事態にパストーレは驚きつつも、すぐさま命令を発する。

「くそっ!各艦応戦せよ!!」
「駄目です、敵の数が多すぎて対応できません!」
「な、なんだと!?」

パストーレは絶望的な表情を浮かべた。メルカッツ大将麾下の分艦隊はファーレンハイト少将の分艦隊のワルキューレとほぼ同数の宙雷艇を繰り出しており、それが一気に襲いかかってきたのだ。

「雷撃艇部隊は攻撃を開始せよ!」

メルカッツ大将指揮下の元、メルカッツ艦隊所属の宙雷艇部隊は母艦から発進し、すでにファーレンハイト艦隊と交戦中の第4艦隊に襲い掛かる。
次々と雷撃艇の攻撃を受け艦艇が撃沈していく。第5集団所属の戦艦ネストルは正面の敵艦を砲撃していたところ、真下から雷撃艇の攻撃をうけ24発もの中性子弾頭を被弾、それらが艦内で全弾炸裂し乗員660名全員が死亡。乗員を失い慣性航行しているところ、僚艦レムノスの前方へ出てしまう。

「い、いかん!砲撃中止ッ!」

レムノス艦長は慌てて砲撃中止を命令したが時既に遅く、レムノスは主砲を発射。レムノスから発射された中性子ビームは寸分たがわずネストルの艦首を貫き、ネストルを撃沈。かくいうネストルも僚艦を撃沈した褒美として死を賜り、至近距離からの発砲によりレムノスの爆発に巻き込まれて誘爆、沈没している。
この目も覆わんばかりの醜態に対し

「何をやっているのだ!?」
「何をやっていやがる…」

パストーレとファーレンハイトは同時に同じ言葉を発した、ただしその声の調子は全く違ったが…。


「提督!もはや戦況は決しました!ここは一旦退却すべきです!」

クロパチェクが進言するも、パストーレは首を振ってそれを拒否した。

「馬鹿を言うな!ここで退却したら帝国軍にいいようにされるだけだぞ!今逃げるわけにはいかん!」
「しかし……このままでは全滅してしまいす、ここは恥を忍んででも撤退して雪辱の機会をs「敵弾接近!」
「回避しろ!?」

旗艦レオニダス艦長キャリントン中佐が叫ぶも間に合わず、戦艦レオニダスは艦橋付近に直撃を受け、亀裂が生じる。

「ぐわぁあああ!!」
「うわぁああ!!」
「助けてくれぇぇ!」

亀裂が生じた部分から次々と艦橋にいた人間とがれきがまとめてゴミのように真空の宇宙空間に放り出されていく。そしてそれは艦橋だけでなく艦体全体に及んでおり、もはや艦としての機能を喪失していた。

「きゃあああ!!誰か手を貸してくれ!足がないんだ!」
「腕だけでもいい、早く引っ張ってくれ!」
「痛い、肩の骨が折れた!!」

艦全体が阿鼻叫喚の嵐に包まれていた。パストーレは血まみれになりながら艦外へ放り出されようとしており、放り出されながら叫んだ。

「ばかな、こんなことが…こんな非常識なことが……」

パストーレの意識は酸欠によってそこで途切れ、彼は宇宙空間に放り出された。そして第4艦隊首脳部も一部を除き、大半は司令官と同じ末路をたどったのだった。
そして幸か不幸か第4艦隊幕僚団に所属する参謀の一人であるアラン・クロパチェク大佐は磁力靴を機能させていたおかげで何とか艦橋から宇宙空間に放り出されずに済んだ一人であった。 
 

 
後書き
まぁ最初の一話にしてはまぁまぁかけたと思います。一応今のところはアスターテ会戦の話が続きます。 
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