微姉妹の様に
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第一章
微姉妹の様に
ベトナムのユエで金物屋をやっているファン家には二人の娘がいる。フォン=トゥイとティ=サウである。
二人共まだ中学生であるがいつも学校から帰ると家業に勤しんでいる。店は繁盛していていつも忙しいが。
小柄で日に焼けた肌の二人はいつも率先して働いている、それで父のウォン=ザップは妻のシャー=ミンにいつもこう言っていた。
「俺達よりも働いてるな」
「ええ、二人共ね」
妻も応えた、夫は一六八位の背でがっしりした体格で四角い顔に細い目である、黒髪をセンター分けにしている。妻は細面で黒髪を後ろで団子にしていて大きな目を持っている。二人共半袖にズボンという恰好だ。
「そうよね」
「うちは忙しいけれどな」
「特に最近ね」
「ものが売れるのはいいことだよ」
父はこのことを素直に喜んで述べた。
「何と言ってもな」
「それは言うまでもないわね」
「ああ、けれどな」
「それでもね」
「俺達二人だけだとな」
どうしてもというのだ。
「最近は特にだよ」
「忙しいから」
「とても手が回らないところだ」
「だから人を雇ってるけれど」
二人程来もらっている。
「お休みの日もあるし」
「それにな」
「ええ、だから学校帰りだけでもね」
「二人がいてくれると有り難いな」
「お掃除と閉店の時にいてくれるだけでもよ」
「有り難いな」
「店番もしてくれるし」
この仕事もしてくれてというのだ。
「何かとね」
「二人がいてくれて有り難いな」
「特に休日はね」
「本当にそうだな」
娘達についてこう言うのだった、姉は黒髪をロングにしていて妹はロングでも左右を髷にしている。はっきりした目ですらりとしたスタイルだ。
二人はいつも学校から帰ると家業を手伝い休日は特に働いてだった。
家事もしていた、そんな二人に店に入ってだった。
トンカチを買った近所の老人ゴー=オン=ミン腰がやや曲がり飄々とした風で顔と身体には若い時のアメリカやカンボジア、中国のとの戦争で多くの傷がある彼が言った。
「いつも頑張ってるのう」
「だってお仕事だからね」
「お仕事がないと食べられないからね」
姉妹は明るい笑顔で応えた。
「やっぱり頑張らないとね」
「食べる為にね」
「その通り、働かないと食えん」
老人もその通りだと答えた。
「働かざる者食うべからずと言うからな」
「それでね」
「私達もお父さんとお母さんに子供の頃から言われてるし」
「だからよ」
「頑張って働いてるのよ」
「それでいい、というか働かずしてと言えるうちはいい」
老人はここでこんなことを言った。
「戦わざる者とならんならな」
「それよね」
「我が国ってずっと戦争してきたしね」
「アメリカが来てね」
「中国も来たし」
「カンボジアともやり合って」
「フランスもあったわ」
二人も学校の授業で習ったことから答えた。
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