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大衆の正義

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第一章

               大衆の正義
 小西理は凶悪犯である、前科十一犯であり中学の時から札付きであった。
 その罪状は強盗、強姦、傷害、殺人未遂、麻薬密売、銃刀法違反と碌でもないものばかりだ。裏の社会でも誰もが見放すまでの輩だった。
 丸い目には剣呑な光があり頬が込めた五角形の顔はやけに白く小柄で痩せている。茶色の髪の毛をマッシュルームカットにしている。
 性格は残虐で底意地が悪く異常なまでに自己中心的で尊大だ。そしてこの小西が十九歳の誕生日にだった。
「一家六人を殺したのか」
「それも強盗に入って」
「縛って一人ずつ嬲り殺しで家族の目の前でか」
「一歳の末っ子男の子まで殺したのか」
「遊ぶ金欲しさに入ってそれか」
「母親も娘さん三人強姦か」
「それも家族の目の前で」
 小西の悪辣な犯罪のことはすぐに世に知られた。
「とんでもない奴だ」
「しかも反省の色なしか」
「捕まってもしばくぞばかり言ってるらしいな」
「とことん屑だな」
「これまでも十一犯かよ」
「こんな奴更正する見込みあるかよ」
「少年院と娑婆ずっと行き来してこれだぞ」
 ネットでは怒りの声が殺到した。
「死刑廃止とか少年法とか言う奴出て来るよな」
「更正する見込みありとか言ってな」
「こんな奴更正するか」
「そんな筈ないだろ」
「死刑にしろ、死刑に」
「さっさとそうしろ」
「死刑になるまでの間税金で養うだけでも嫌だぞ」
 こうした言葉が出て来た、だが日本は法治国家である。
 取り調べと裁判が行われた、それでだった。
 その間小西は留置所と裁判所を行き来していたが。
「本当に反省していないな」
「悪態ばかりじゃねえか」
「何がそこにいたのが悪いだ」
「金出してりゃ犯すだけで済ませただと?」
「ふざけんじゃねえぞ」
「六人殺してそれかよ」
「一歳の子供まで殺してな」
「高校生と中学生と小学生の娘も犯して殺して」
 その行いが振り返られその無反省さに余計に怒りが沸き上がった。
「あの態度か」
「本当に死刑にしろ」
「さっさと死刑にしろ」
「もう事実はわかってるだろ」
「しかもまだ死刑にするなとか言う奴いるしな」
「マスコミとか弁護士に」
「そう言う奴自分の家族がああいう奴にどうかなって言えるのかよ」
 彼等にも怒りが向けられた。
「更正するとか言ってるけれどな」
「まだ未成年とかな」
「六人強盗強姦殺人してあの態度だぞ」
「しかも前科十一犯だぞ」
「そんな奴が更正するか」
「それで無期懲役にしてもどうなんだ」
 死刑にならないならというのだ。
「出てまたやらかすに決まってるだろ」
「それでまた殺された人出たらどうするんだ」
「その時責任取れるのかよ」
「取らないに決まってるけれどな」
「ああしたこと言う奴が責任取る筈ないしな」
「しかも日本は裁判時間かかるしな」
 ここでこのことが指摘された。
「長々続いて終わらないからな」
「ああ、そうだよな」
「日本の裁判って滅茶苦茶時間かかるよな」
「もう呆れる位な」
「兎に角時間かかるよな」
「本当にな」
「その間ずっとあいつは税金で飯食うしな」 
 このことも言われた。 
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