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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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ハーケン会戦~リィンの未来~

~ハーケン平原~



「いやまあ、確かに教官の考え――――――”灰獅子隊を結成したメンフィル帝国の真の思惑”にはドン引きしましたけど………」

「教官が今仰ったように私達はメンフィル帝国に仕えている軍人――――――つまりは”臣下”なのだから、それが私達への”命令”なら従うだけだし、個人的にはやりがいのある仕事だと考えているわ。」

「ああ。かつてのクラスメイトが集まって共に協力してメンフィル帝国の領土を治めるなんて仕事等、”軍人”に限らずどんな職業でも実現は厳しいだろうからな。」

「それにマーズテリアと我が国の”因縁”もそうですが、マーズテリアが”光陣営”の中でも魔族のような”闇陣営”に分類される人々を根絶やしにする事を目指しているいわゆる”強硬派”であり、その根絶やしにする対象には当然我が国が含まれている事は我が国の歴史の授業を通して知っていますから、いずれ我が国はマーズテリアと雌雄を決さなければならない事も覚悟しています。」

「というか今の話通りなら、お前達が望んでいた事――――――”エレボニアが存続する事”もそうだが、リィンとの”絆”も途切れない事になるから、お前達にとっても万々歳な話なんじゃないのか?」

リシテアは疲れた表情で、エーデルガルトとディミトリ、イングリットは静かな表情でそれぞれ答え、クロードは呆れた表情でアリサ達に指摘した。



「それは………」

「だ、だからといって”犠牲”――――――それも、エレボニアに”犠牲”が生じる事を防ぐ為に”第三の風”として今まで活動してきた僕達にとっては万々歳じゃない話だ!」

「貴女は今の話について、どう考えているの?今の話通りなら、貴女を含めて”斑鳩”もメンフィルの思惑に利用されるかもしれないのよ!?」

クロードの指摘に対して反論できないラウラが複雑そうな表情で答えを濁している中マキアスは真剣な表情で反論し、アリサはシズナを見つめて問いかけた。

「まあ、今の話通りなら多分メンフィルは私達”斑鳩”を”弟弟子達を裏側から支える裏の協力者候補”にしているんだろうね。――――――で?私達”斑鳩”が”猟兵”だと理解していて、本気で”そんなわかりきった答え”を聞いているのかい?君の級友であるそちらの”猟兵王”殿の娘ならわかるはずだよ。」

「…………”猟兵はミラ次第でどのような仕事も請け負う”、だね。」

アリサの問いかけに対して苦笑しながら答えたシズナは意味ありげな笑みを浮かべてフィーに問いかけ、問いかけられたフィーは静かな表情で答えた。

「その通り。勿論私達”斑鳩”にも”斑鳩としての誇り”があるから、その”誇り”を穢すような仕事を請けるつもりはないけど、メンフィル帝国もそのあたりの空気は読んで、私達に仕事を依頼すると思うし………――――――可愛い弟弟子の支えになるのも一興だし、私自身、弟弟子が”本気の私”を超える事ができたら、弟弟子のハーレムの一員になってあげてもいいと考えているよ。」

「へ………」

「ハアッ!?」

「何でそこで、あのリア充シスコン剣士のハーレムの一員になる話に繋がるんだよ!?」

笑顔を浮かべてとんでもない事を口にしたシズナの答えを聞いたアリサが呆けている中セリーヌは困惑の表情で声を上げ、クロウは疲れた表情で指摘した。



「フフ、私だってこれでも花も恥じらう乙女だからね。個人的に弟弟子のような男は好みだというのもあるが、同じ”師”を持つ弟子同士の間に生まれた子供に弟弟子の”八葉”と私の”黒神”を継がせるのも面白そうだからね。――――――案外ユン老師(せんせい)もそれを狙って、私と弟弟子を邂逅させたかもしれないかな。」

「……ッ!じゃあやっぱり、お祖父(じい)ちゃんが貴女にこの戦争でリィン君に協力するように言ったんだ……」

シズナの説明を聞いたその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アネラスは辛そうな表情で唇を噛みしめた後シズナを見つめ

「シ、シズナさんが”花も恥じらう乙女”って……」

「フン、”剣聖”で”猟兵”の癖に自らをそんな風に呼ぶとは厚かましいにも程があるな。」

我に返ったマキアスとユーシスはジト目でシズナを見つめ

「失敬だね。あ、さっきも言ったように、私が弟弟子のハーレムの一員になる必要条件として”弟弟子が本気の私を超える事ができた場合”だから、私を君達もよく知っている弟弟子の”天然ジゴロ”な性格で弟弟子のハーレムメンバーになったエリゼ達と一緒くたにしないでくれよ?」

「やれやれ、冗談抜きでとんでもない恋の強敵手(ライバル)が現れたようだね、アリサ君。」

「リィン様自身の元々の実力もそうですが、ベルフェゴール様達との契約による強化もありますから、リィン様でしたらいずれ、本気のシズナ様を超える可能性は十分に考えられますわね♪」

「ちょっ、二人ともこんな時に何を言っているのよ!?」

シズナの笑顔での念押しにその場にいる多くの者達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アンゼリカは苦笑しながら、シャロンはからかいの表情でアリサを見つめて指摘し、二人に見つめられたアリサは二人に突っ込んだ。



「いやはや、”大戦の戦場”という状況でありながら初々しい話を出して場を和ませるとはさすがは”白銀の剣聖”殿です。白銀殿に続くという訳ではありませんが、私達黒月(ヘイユエ)も是非共”灰色の騎士”殿と縁談で繋がり、異世界でのメンフィル帝国と”光陣営”による大規模な宗教戦争が勃発した時のメンフィル帝国への支援もそうですが”灰色の騎士”殿達によるゼムリア側の守護のお手伝いをさせて頂きたいですね。」

「ったく、アンタの事だからどうせそんなことを言うだろうと思ったぜ。」

「フフ、さすがは”白蘭竜を継ぐ者”ですわね。――――――本気でリィンとの縁談を考えているのでしたら、アシェン嬢あたりをリィンに嫁がせるおつもりですか?」

するとその時チョウが拍手をしながら笑顔で話を続け、チョウの話を聞いたヴァンが呆れている中、セシリアは苦笑しながらチョウに問いかけた。

「さすがは魔道軍将殿。アシェン様の現在の年齢を考えると”縁談”はさすがに少々早い話ですし、”アシェン様自身も今はそのような事を考えている状況ではない”でしょうから、折を見ていずれ当主様達に提案させて頂こうと思っております。」

「その”アシェン”って誰?」

セシリアの指摘に対して恭しく礼をして答えたチョウの話が気になったフィーはチョウに訊ね

「アシェン様とは私がお仕えしている”ルウ家”の跡継ぎであられるシン・ルウ様の姉君――――――つまりは”ルウ家の姫君”でございます。ちなみに年齢は今年で13歳になりますね。」

「ハアッ!?13って事は俺より二つも年下じゃねぇか!?」

「対してリィンは今年で18歳……5歳差の縁談等決して珍しい話ではないが……」

「ちょっ、黒月(きみたち)が将来滅茶苦茶出世することになるリィンと縁談で繋がったりしたら今以上に滅茶苦茶厄介な存在になるから、勘弁してよ~!」

チョウの説明を聞いたアッシュは困惑の表情で声を上げ、ラウラは真剣な表情で呟き、ミリアムは疲れた表情で声を上げた。



「フフ、話が逸れてきたようですから、最後に皆さんも気になっている”この大戦が終わった後のエレボニアについての処遇”――――――つまりは”エレボニアの存続”を目指している皆さんもそうですが、”エレボニアを救う”為に今まで戦ってきたリィンにとっても”朗報”となる情報を教えてさしあげますわ。」

「ぼ、僕達もそうですがリィンさん達にとっても”朗報”となる情報ですか……?」

「……今までの話から推測するにヴァイスラント新生軍の連合に対する今までの貢献もそうだが、皇女殿下達――――――連合の戦争相手の国家にとっては重要な家系の者達がメンフィルの”義勇兵”として今までメンフィル――――――連合に貢献してきた事に免じて、エレボニアは領土は削られ、莫大な賠償金や謝罪金を含めた様々なエレボニアにとっては不利な条件は科せられる条約はあるが、”エレボニアが国として存続する事を許す”といった所か?」

苦笑しながら答えたセシリアの答えが気になったセドリックが戸惑っている中アルゼイド子爵は真剣な表情でセシリアに訊ねた。

「まあ、概ねの流れはそうですね。――――――まず、この”大戦”を”メンフィル・クロスベル連合とヴァイスラント新生軍、そしてリベール王国の勝利という形”で終結させた後私は”エレボニア帝国征伐軍のメンフィル帝国軍の総参謀”並びに”現メンフィル皇帝であられるシルヴァン皇帝陛下の側妃”の立場として、”灰獅子隊”の”軍団長”として今まで功績を挙げ続けたリィンの働きを評価してシルヴァン皇帝陛下にリィンの”少将から将軍への昇進”を進言致しますわ。」

「ええっ!?リ、リィンが”少将から将軍に昇進”!?」

「10代のリィンさんが”将軍”に昇進するなんて、幾ら”実力主義”のメンフィル帝国でも”異例”だとは思うのですが……」

「さっきの話――――――”メンフィルの光陣営との全面戦争に向けての思惑”の件を考えると、その”異例”を通すんでしょうね。」

アルゼイド子爵の推測に肯定した後話を続けたセシリアの話にアリサ達に加えてエーデルガルト達もそれぞれ血相を変えている中エリオットは驚きの表情で声を上げ、複雑そうな表情で呟いたエマに続くようにセリーヌは真剣な表情で推測した。



「そして同時に”国としての存続は許されてはいるものの、この戦争で敗戦したエレボニアが存続の為に受け入れなければならない条約の一つであるメンフィル帝国による保護を受け入れたエレボニアに駐留する事になるメンフィル帝国政府・軍の統括存在であるエレボニア総督”にリィンを就かせる事を進言致しますわ。」

「エ、”エレボニアがメンフィル帝国による保護を受け入れる”って………何故、エレボニアと戦争をしていたメンフィルがエレボニアの”保護”をするんですか……!?」

「しかもリィン様が”エレボニアに駐留するメンフィル帝国政府・軍の統括存在であるエレボニア総督”に就くという事は”保護を受け入れざるを得ないエレボニアにとってはエレボニア総督という地位はユーゲント皇帝陛下よりも上”という事になりますから実質、”リィン様がエレボニアの最上位存在という事になりますわね。”」

セシリアの説明を聞いた紅き翼の面々に加えてエーデルガルト達”灰獅子隊”の面々もそれぞれ再び血相を変えて驚いている中アリサは信じられない表情で疑問を口にし、シャロンは真剣な表情で呟いた。

「……メンフィルがエレボニアを”保護”する理由は多分だけど、内戦とこの戦争で著しく疲弊したエレボニアは例え他国――――――例えばリベールやレミフェリアの力を借りたとしても復興は相当困難で、最悪内戦とこの戦争の件で陛下達アルノール皇家やエレボニア帝国政府に不満や不信感を抱いたエレボニアの国民達が反乱を起こして、その出来事によってエレボニアが滅んだら、メンフィルがエレボニアに対して求めている賠償金や謝罪金と言った”将来必ず起こるメンフィルと光陣営との全面戦争に必要となるゼムリア側の支援”の一部が得られなくなるから”保護”をしてエレボニアの復興にメンフィルが介入するつもりなんだと思うよ。」

「エレボニアを敗戦させたメンフィルがエレボニアの復興に介入――――――実質、メンフィルがエレボニアの統治権を握れば陛下達や政府に対して不満や不信感を抱いている国民達も従わざるを得ない上、今回と共和国との戦争でリベールを含めた各国が抱いているであろうメンフィルに対する不信感もある程度緩和されることになるという狙いもあるのだろうな。」

「そしてリィンを”メンフィルの保護を受けている間のエレボニア総督――――――実質、エレボニアの最上位存在”にする理由は、内戦を終結させた”英雄”――――――”灰色の騎士”であり、今回の戦争でもエレボニアを救う為に戦ってきたリィンがエレボニアの最上位存在なら、国民達のメンフィルもそうだが、エレボニアの皇家や政府に対する不満もある程度抑えられるという考えか……」

「おまけにアルフィン皇女殿下がリィン君の”専属使用人兼娼婦”としてリィン君に仕えているから、国民達への説得力も更に増すだろうね。……まあ、さすがに世間体を考えて”アルフィン皇女殿下がリィン君の専属娼婦という事実”は隠蔽するとは思うけどね。」

アリサの疑問に対してトワは複雑そうな表情で推測し、ユーシスとラウラは重々しい様子を纏って推測を口にし、アンゼリカは疲れた表情で二人の推測を捕捉する推測を答えた。

「リィンを”エレボニア総督”にする理由はわかったけど、”将軍”に昇進させるのは何でなんだろう?」

「”総督”とは占領地や植民地における”最高指揮官”を指すから、当然”総督に就任する資格”として”軍の場合は相応の軍位”が必要で、その”相応の軍位”は最低でも”将軍”でなければならないからだと思うわ。」

アメリアの疑問にエーデルガルトは静かな表情で推測を答えた。



「それよりもセシリア将軍は先程メンフィルによるエレボニアの保護の件を”この戦争で敗戦したエレボニアが存続の為に受け入れなければならない条約の一つ”と言っていたが………まさかとは思うが……」

「テメェらメンフィルはこの戦争でエレボニアを叩き潰した後にエレボニアに呑ませる”条約”とやらも、既に用意してやがったんだな!?」

「という事はリィンをエレボニアの”総督”にする話も”予め決めていた”と思うから、セシリア将軍の現メンフィル皇帝への進言も皇帝を含めたメンフィルの上層部の人達にとってはほとんど”茶番”のようなものだろうね。」

「多分ですけど、リウイ陛下達もセシリア将軍が今言った話も既にご存知なんでしょうね……」

「ああ……いつそんな話の流れに発展したからは知らねぇが、間違いなく話が決まった時点で知らされていただろうな。」

真剣な表情で呟いたガイウスに続くようにアッシュとフィーはそれぞれ厳しい表情で推測を口にし、複雑そうな表情で呟いたアネラスの推測にアガットは厳しい表情で頷いた。

「つーか、内戦が始まるまで”学生”だったリィンにいきなりエレボニアのトップなんて務まるのかよ?」

「そうね……特に政治方面の能力が疑問視されるけど……まさか、”灰色の騎士”を”お飾りの総督”にするつもりなのかしら?」

呆れた表情で疑問を口にしたクロウの疑問に同意したエレインは真剣な表情でセシリアに指摘した。

「勿論、”今のリィンに政治能力が低い事”は承知していますわ。その為、パント様がリィンの”補佐”についてリィンに政治能力を鍛えつつ、パント様が”リィンの政治家としての能力が合格”という判断を出すまでの間はパント様がリィンの代わりに”総督としての政治判断”をしてもらう事になっていますわ。」

「その”パント”という人物は何者だ?」

「”英雄王”と現メンフィル皇帝を支えたメンフィルの元”宰相”で、今は”英雄王”の代わりにメンフィル帝国の大使を務めている人物です。メンフィルの元宰相をリィンの補佐につける本当の理由は大方、将来クロイツェン州の統括領主に内定しているリィンの領主としての能力を鍛える事もそうだけど、リィンに”エレボニア総督を就かせる真の理由”は”クロイツェン州統括領主に就任させる前の領地経営の練習”と言った所ね!?」

セシリアの口から出た聞き覚えのない人物の名前を耳にして眉を顰めているジンの疑問に答えたサラは厳しい表情で自身の推測をセシリアに指摘した。



「フフ、それはあくまで”真の理由の一つ”で、他にも様々な理由はありますけどね。」

「やれやれ、”エレボニア総督としての経験を将来の領地経営の練習”にするなんて、スケールが大きすぎる”練習”だね。」

「万が一失敗しても被害を受けるのはエレボニアで、メンフィルが失うのは復興の為の投資分くらいだから、メンフィルにとっては”リスク無しで実践でリィンの政治能力を鍛えられる”ようなものだね。」

「幾らエレボニアに非があるからと言って、テメェらメンフィルはエレボニアをどれだけ食い物にすれば気が済むんだっ!?」

苦笑しながらサラの推測を肯定したセシリアの答えを聞いたアンゼリカは疲れた表情で溜息を吐き、フィーは真剣な表情で推測し、アッシュは怒りの表情でセシリアに指摘した。

「”エレボニア総督”の件があるとはいえ、”我が国がエレボニアを食い物にする”は考えすぎですわよ。パント様の政治方針は”融和”ですから、メンフィルの保護を受けているとはいえ”他国”であるエレボニアに対する過度な干渉は控えますし、当然エレボニアの人々を苦しめてメンフィルに対する怒りを強めるといった浅はかな支配政治は決して実行しませんわ。――――――それに何よりも、”貴方達が信じているリィンが保護を建前にした我が国がエレボニアに対して過度な干渉を行ったり、エレボニアの人々を苦しめる事を許さないでしょうし、皆さんも何らかの形でリィンに協力するのでしょう?”――――――パント様はあくまで”補佐”で、”立場としてはリィンがパント様よりも上”なのですから。」

「……ッ!」

「……リィン様が”エレボニア総督”になれば、わたくし達も何らかの形でリィン様の力になると確信した上で、リィン様に”エレボニア総督”を就任させる事を決められたようですから、今までわたくし達が誤解していた考え――――――”わたくし達とリィン様達の関係を断たせる為”という考えよりもある意味性質の悪い策略――――――いえ、”政策”ですわね。」

「リィンやエレボニアの為に”オレ達が協力することも想定済み”という事か……」

アッシュの指摘に対して反論した後微笑みながら指摘したセシリアの指摘に対してアリサが辛そうな表情で唇を噛みしめている中、シャロンは真剣な表情で呟き、ガイウスは複雑そうな表情で呟いた。

「フフ、我が国は”外国人であるリィン達による内戦での貢献に対する勲章の授与どころか、報酬すらも支払わないエレボニア”とは違いますから、我が国が保護をしている間のエレボニアに何か問題が起こり、その解決に貢献すれば当然”報酬”も支払いますし、もし何らかの理由で特定の機関、人物に対する紹介が必要なら紹介状も用意しますわよ。」

「内戦を勃発させた”元凶”である俺が言えた義理じゃねぇが、エレボニアがリィン達に内戦の件で表彰もそうだが、報酬も支払わなかった事について、あんた実は結構根に持っているだろ!?」

「ですがセシリア将軍の怒りは当然だと僕も思います。エレボニアは他国人であるリィンさん達を内戦で迷惑をかけた所か、内戦終結の為の大きな貢献までしてもらったにも関わらず、勲章の授与もそうですが報酬――――――”謝礼金”も支払わなかったのですから……」

「皇太子殿下………」

「……不敬を承知で進言させて頂きますが、内戦でのシュバルツァー少将達の件について後悔なされているのでしたら、この戦争――――――いえ、”黄昏”の件が終結した後に改めてシュバルツァー少将達を内戦終結の貢献の件での勲章の授与や報酬の支払いについて考える事は遅くないかと思われます。」

セシリアの答えに対してクロウは疲れた表情で指摘し、辛そうな表情で語るセドリックをユーシスは心配そうな表情で見つめ、オリエは静かな表情でセドリックに意見をし

「そうですね……内戦が終結して間もなくメンフィル・クロスベル連合との戦争が勃発した訳ですから、連合との戦争や”黄昏”の件を終えてから改めてリィン達への表彰や報酬の支払いについて考える事はオリエ殿の仰る通り、決して遅くないかと思われます。」

「オリエさん……ラウラさん……」

オリエに続くように意見をしたラウラの意見を聞いたセドリックは呆けた表情を浮かべた。



「いつからよ………」

「?」

するとその時サラは顔を俯かせて呟き、サラの様子が気になったセシリアは不思議そうな表情を浮かべて眉を顰め

「一体いつから、あんた達はこの戦争でエレボニアを叩き潰した後の事を考えていたのよ!?」

顔を俯かせていたサラは怒りの表情でセシリアを睨んで問いかけた。

「フフ………――――――”紅き(あなたたち)が和解の為に大使館を訊ねた日に、この戦争でエレボニアに勝利した後のエレボニアの処遇についての我が国の方針は既に決定していましたわ。”」

「なっ!?ぼ、”僕達が和解の為に大使館を訊ねた日”って事は、オリヴァルト殿下達がパント臨時大使やセシリア将軍達と会談している間に決まったという事ですか!?」

サラの問いかけに対してセシリアは静かな笑みを浮かべた後アリサ達とエーデルガルト達の双方が驚く答えを口にし、その答えを聞いたマキアスは信じられない表情で訊ねた。

「ええ。実は、貴方達が大使館を訊ねたあの時間にリウイ陛下達――――――メンフィル・クロスベル連合の代表者であるリウイ陛下達とヴァイスラント決起軍の代表者であるミルディーヌ公女との会談が平行して行われ、その会談によってヴァイスラント決起軍がメンフィル・クロスベル連合と協力関係を結ぶ事になった報告を受けたメンフィルの”本国”――――――つまりは、シルヴァン皇帝陛下達が先程説明した”この戦争でエレボニアを徹底的に叩き潰した後のエレボニアの処遇の諸々について、正式に決定しました。”」

「そ、そんなにも前から決まっていたなんて………」

「しかもあの時の同じ時間に、ミュゼ達――――――ヴァイスラント決起軍がメンフィル・クロスベル連合と協力関係になる会談が行われていたとは……」

「ミュゼ君達――――――”ヴァイスラント決起軍と協力関係を結ぶ事を知った直後に正式に決定した”という事は、元々その案が出ていて、ミュゼ君達ヴァイスラント決起軍の申し出もそうですが、アルフィン皇女殿下が内戦での1度目のユミル襲撃の件での責任を取る為にメンフィルの要望通り、自らエレボニアを離れてメンフィルが求める皇女殿下の処罰を申し出た事が”決定打”になったという所ですか?」

セシリアの答えを聞いたエリオットとガイウスは複雑そうな表情で呟き、アンゼリカは真剣な表情で指摘した。



「ええ。――――――ちなみにですが、処罰の件でのアルフィン皇女の奉公先についてリィンを含めて複数の候補がいた話は皆さんもご存知とは思いますが、その候補の一人としてリィンを挙げたのは私です。」

「ええっ!?セ、セシリア将軍が皇女殿下の奉公先の候補としてリィンを……!?」

「セシリア将軍がリィンを候補に挙げたのも、先程の話にあったリィンを”ゼムリア側のメンフィルの守護者”にする件と関係しているのだろうか?」

セシリアの口から語られた驚愕の事実にアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは驚きの表情で声を上げ、ガイウスは真剣な表情で訊ねた。

「いいえ、そもそもその時点ではリィンをそんな”大役”を任せる事までは考えていませんでした。――――――その時は”純粋なリィンのかつての担当教官としてのリィンにできるせめてもの気遣い”でしたわよ?留学や内戦でのリィンと貴方達が関わった出来事もそうですがリィン自身の性格を考えたら、アルフィン皇女の処罰の件で強い責任を感じるのは目に見えていたというのもありますが、皆さんもよくご存じのリィンの”無意識で人を惹きつける罪深い性格”も考えたら、アルフィン皇女がリィンに想いを寄せている可能性も十分に考えられましたからね。アルフィン皇女の処罰の件で盟友たるリベール王国も納得せざるを得ないという意味もあり、リィンを候補に挙げました。……まあ、アルフィン皇女の処罰の件で元々エリゼがリフィア殿下にリィンを候補に挙げるように頼んでいたそうですから、どの道私が意見をしなくても、リィンは候補として挙がっていたようですが。」

「エリゼさんがリフィア殿下に………」

「皇女殿下と親しいエリス君の姉であるエリゼ君なら、恐らくエリス君から皇女殿下の件も知らされていただろうから、リィン君やエリス君の為にもリフィア殿下に頼んだんだろうね。」

「……改めて我らは内戦の件で、エリゼから多くの恩がある事を思い知らされたな……」

セシリアの答えにアリサ達に加えてエーデルガルト達もそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セドリックは呆け、疲れた表情で呟いたアンゼリカに続くようにラウラは重々しい様子を纏って呟いた。



「……アルフィン皇女の件でリィンを候補に挙げた時点ではそんなことを考えていなかったって言ったよね?それじゃあ、いつリィンを”ゼムリア側のメンフィルの守護者”にする事を考えたの?」

「――――――リィンがアイドス殿と契約を交わしたという報告を受けた時ですわ。」

「リィンさんがアイドスさん――――――”慈悲の女神”と”契約”を交わした報告を知ってから、リィンさんをそんなとてつもない大役を任せる事を考えたという事は、もしかしてセシリア将軍はその時点でリィンさんが”時代が求めた英雄”であると確信されたのですか……?」

フィーの質問に対して答えたセシリアの答えを聞いたエマは複雑そうな表情でセシリアに訊ねた。

「ええ。”魔神”であるベルフェゴール殿を使い魔にしたという報告を受けた時点で既にリィンが”今回の戦争の件での時代が求めた英雄”になるのではないかと疑っていましたが、アイドス殿と”契約”を交わしたという報告を受けた時点で”確信”しましたわ。――――――現にアイドス殿……いえ、ベルフェゴール殿を使い魔にした事を境にリィンの周りに次々と様々な立場、種族の方達が集まり続けてきたのですから。」

「……確かに言われてみれば、リィンさんがエレボニアを救う為にメンフィル帝国軍に戻る事を決意されてから、ベルフェゴール様の件を皮切りに様々な立場や種族の方々がリィンさんの仲間になりましたね。」

エマの疑問に答えたセシリアの説明を聞いたステラは今までリィンの仲間になった面々――――――ベルフェゴール達リィンの新たな使い魔の面々やアルティナ、アルフィン達、デュバリィ達”鉄機隊”、プリネ達にルシエル達を思い浮かべた後シズナに視線を向けた。

「フフ………特にベアトリース殿とルシエル殿、そしてミルディーヌ公女とミスルギ殿がリィンの仲間になった事はリィンもそうですが、我々メンフィル帝国にとっても大きかったですわ。」

「へ……な、何でそこでベアトリースとルシエル、ミュゼとシズナさんが出てくるんですか……?」

「――――――ベアトリースとルシエルは”戦場”を任せる事ができる”智勇の将”、”白銀の剣聖”は”斑鳩”の連中も含めて諜報活動もそうだけど”結社”のような”裏”の勢力に対抗できる”裏の協力者”、公女は政治方面を任せる事ができる”策士”と言った所かしら?」

セシリアの話が気になったマキアスは戸惑いの表情で訊ねると、セリーヌが目を細めて推測を口にした。



「まさにその通りですわ。ルシエル殿はリィンと”契約”を交わしてはいませんが……恐らく、この戦争でリィンとの”絆”は深まっている事もそうですがリィンの人柄にも惹かれているでしょうから、リィンに惹かれたルシエル殿が”契約”を交わして正式にリィンの仲間になる可能性は十分に考えられますし、私からもルシエル殿にルシエル殿を含めた天使部隊が正式にメンフィル――――――いえ、リィンに仕える事の提案をするつもりです。そしてミルディーヌ公女とミスルギ殿に関してはもはや説明は不要でしょう?」

「ふふっ、さっきも言ったように私達”斑鳩”は”相応の報酬”を支払ってくれるのだったら、”弟弟子(リィン)の裏の協力者”になってあげても構わないかな。」

「ミュゼは本人がリィンと結婚する気満々ですものねぇ。」

「……例え結婚はできなかったとしても、彼女は彼女の思惑の為にもリィンと協力関係を結ぶ事は確実でしょうね。」

セシリアに視線を向けられたシズナは意味ありげな笑みを浮かべて答え、リシテアは呆れた表情で答え、エーデルガルトは静かな表情で推測を口にした。

「皮算用を立てるにもほどがあるだろ……」

「ですが、リィン様の人柄や人望も考えるとセシリア将軍の想定は”皮算用”と言えないかもしれませんわ。」

セシリア達の話を聞いていたアガットは呆れた表情で溜息を吐き、シャロンは真剣な表情で呟いた。



「まさかリィンの”あの性格”すらも計算に入れて思惑通り事を運ばせるとは………これが、メンフィル帝国軍の”総参謀”の”策”か……」

「ルーファスどころか、ギリアスすらも足元にも及ばねぇ策士だぜ……で?さっき、エレボニアを叩き潰した後エレボニアを”保護”していずれエレボニアをメンフィルの”保護”から解放するって言っていたが、まさかとは思うがギリアスのやり方のように、メンフィルの資本をエレボニアに流れ込ませて”エレボニアがメンフィルに依存せざるを得ない状況”に追いやるって寸法じゃねぇだろうな?」

「そ、それって……」

「”ジュライ”を含めたオジサンが今まで併合してきた自治州や小国が”エレボニアの属州として併合せざるを得ない状況に追い詰めるやり方”だね~。」

ユーシスは重々しい様子を纏ってセシリアを見つめながら呟き、疲れた表情で溜息を吐いたクロウは厳しい表情でセシリアに問いかけ、クロウの問いかけを聞いてあることを察したエリオットは不安そうな表情を浮かべ、ミリアムは真剣な表情で呟いてセシリアを見つめた。

「フフ、その点に関しては安心して頂いて構いませんわ。――――――メンフィルによるエレボニアの”保護”の件を含めた敗戦後のエレボニアが受け入れなければならない”条約”は”西ゼムリア通商会議”の時のような”国際的な場で調印してもらう事になる”でしょうから、ゼムリア側のメンフィル領の絶対的な安寧の為にもそのような他国のVIPの方々をも騙すような真似をするつもりはありませんわ。」

「に、”西ゼムリア通商会議のような国際的な場で連合に敗戦したエレボニアが連合――――――いえ、メンフィルが考えた条約に調印する”って一体どういう事ですか……!?」

セシリアが口にした答えが気になったアネラスは不安そうな表情でセシリアに訊ねたが

「それについてはこの”大戦”が終結すればすぐにわかるでしょうし……―――――そもそも、今の貴方方には少し先の未来になる話を気にしている時間もないのでは?――――――Fenestram phantasma(幻想の小窓よ)」

セシリアは答えを誤魔化した後魔術を発動した。すると上空にヴァンダイク元帥達と対峙しているリィン達の様子が写った――――――





 
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