詩人皇帝
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第一章
詩人皇帝
建国されたばかりの隋は長安を中心として政を整えた、そうしながら東の北斉を攻め滅ぼしその後は南の陳となった。
この陳を攻める総大将に隋の皇帝後に文帝と言われる彼は次男の楊勇を選んだ、ここで皇帝はきりっとして勇壮な顔の彼に告げた。
「よいか、無駄な血はだ」
「流す必要はないですか」
「陳主は愛妃と遊び惚けてばかりという」
陳の皇帝のその様子も伝わっていた、それを言うのだった。
「それで国は綻んでおる、慎重に攻めればだ」
「それで、ですね」
「攻め滅ぼせる、無理に攻めずともだ」
そうせずともというのだ。
「滅ぼせる、だから無闇にだ」
「攻めず兵達の気を昂らせて」
「無益な殺生なぞな」
そうしたことはというのだ。
「ない様にな」
「民を傷付けぬ様にして」
「攻めよ、よいな」
「わかりました」
楊勇は父である皇帝に確かな声で頷いた、そうしてだった。
長安から兵を率いてはるばる江南まで至った、そのうえでいよいよ陳を攻めにかかったがここでだった。
長江のほとり、そしてその岸辺に周りの山や木々それにだった。
谷に民家を見てだ、彼は目を瞠った。
「これはまた」
「どうされましたか?」
「何かありましたか?」
「何と見事な景色か」
周りの者達に目を瞠って答えた。
「余はこれだけ素晴らしい景色を見たことがない」
「そういえば殿下はこちらははじめてでしたね」
「江南に来られたことは」
「左様でしたね」
「はじめて見たが」
実際にそうだがというのだ。
「実に素晴らしい、筆と紙をもて」
「筆と紙ですか」
「どうされるのですか」
「何をされるおつもりですか」
「書く」
こう周りに答えた。
「そうする、詩をな」
「詩ですか」
「それを書かれるのですか」
「これより」
「書かずにいられない、魏の武帝もそうであったな」
曹操、彼のことも話した。
「詩を愛したな」
「それでも知られていますね」
「確かに」
「左様ですね」
「魏の武帝は詩人でもありました」
「素晴らしい詩を多く残しています」
「その武帝の様にだ」
まさにというのだ。
「余も詩を書きたくなった、だからな」
「これよりですか」
「詩を書かれますか」
「そうされますか」
「そうする」
こう言って実際にだった。
楊勇は詩を書いた、それはこの時だけでなく。
江南にいる間続いた、そして戦を終えて陳を滅ぼし隋による統一を果たして長安に戻ってもだった。
江南についてだ、彼は話した。
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