おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
206 海上の撤退戦
前書き
《前回》
異世界の剣を奪取した三河口だったが、その場に杉山と同体化した戦争主義の世界の長・レーニンと相対する。三河口は杉山の本心を探った後、政美の超能力でマリエルと共にその場から離脱した。そしてかよ子は妲己に向けて岩石の攻撃を飛ばした際、間違えてりえごと殺害してしまったのかと自己嫌悪に陥ってしまったが、長山の捜索でりえは生きている事を知り、安堵する。さらにりえを連れた妲己が進む方角が藤木がいる方角と一致している事からかよ子達は藤木のいる場所へと急ぐ!!
かよ子はりえは無事だと言う事を知ってまた動き出す。
「そういえばあのりえって子、友達と一緒じゃなかったのかブー?」
「あ、そうだね・・・」
かよ子は気になった。もしりえが連れて行かれたならば彼女の友達も無事とは言えない筈だ。
「りえちゃんの友達に連絡してみるよ!」
かよ子は通信機を出してりえの友達へ連絡を試みた。
「こちら山田かよ子!りえちゃんの友達、誰か聞こえる!?返事して!」
しかし、返事はない。
『山田かよ子ちゃんですか?』
りえの友達とは異なる別の声がした。
「この声は、フローレンスさん!?」
『はい、安藤りえちゃんのお友達は気を失っていますが無事です。私達でやられます前に安全な場所へと移動させましたのでご安心下さい』
「あ、はい、ありがとうございます・・・」
『ところでそちらが安藤りえちゃんの友達の安否の確認をしに通信しましたといいます事はもしかして安藤りえちゃんと会いましたのですか?』
「はい、りえちゃんは女の人に連れ去られてました!私達が向かう方向と同じ所へと向かっています!」
『分かりました。安藤りえちゃんの救出及び杯の奪還は他の方に任せますので引き続き藤木茂君の救出に向かってください』
「は、はい!」
大野達との通信を終えた長山は、さりに呼ばれる。
「長山君、かよちゃん達との話を耳に挟んだんだけど、そのりえちゃんって子、杯の持ち主の子よね?」
「うん、山田や大野君達が見たって言うんだ。それにその安藤りえって子が女の人に連れ去られてるのを」
「って事は杯も取られたって事!?」
「ええ!?」
同行しているさきこや杉山の姉・もと子も、尾藤も、そしてテレーズも驚きを隠せなかった。
「って事は杯が敵の手中に収まってしまったって事になります!折角剣を取り返せたというのにまた別の問題ができてしまったという事ですよ!」
テレーズが説明した。
「剣・・・。杯・・・」
さりは考える。この二つは自分が持つ護符やかよ子が持つ杖と同じく、「この世界」において最上位の強さを持つ聖なる道具である。
(ゆり姉や健ちゃん達が剣を取り返し、それで異能の能力を持つ機械も無力化できた・・・。でも今度は杯を取られた・・・。かよちゃんの杖もいつ取られるかおかしくない状況だし、私の護符も・・・)
さりは己への警戒を緩めるわけにはいかなかった。だが、ある事が頭に浮かぶ。
(そう言えばあり姉がその杯を持ってる子と一緒にいたんじゃ・・・!?)
さりは自分の姉が気になった。
本部に繋がる海上でヴィクトリア女帝の艦隊がレーニンから通信で指示を受ける。
『こちらレーニン。剣を奪った者共がそちらに逃げた!クイーン・ベスの艦隊諸共迎え撃って皆殺しにしろ!』
「りょ、了解!!」
海兵達はただでさえ苦戦を強いられている状態であるのに無理な注文と思いながらも奪い返さなければという使命を持った。
戦争主義の世界の本拠地の海辺に剣奪還班は集合していた。ゆりは三河口から剣の奪還の報告を受けた後、政美の能力で海辺へ瞬間移動してい貰っていたのだった。
「マリエルちゃん、健ちゃんを豆の木から出してあげて」
「はい」
マリエルは本から豆を出し、豆の木の巨人が三河口を掴んで降りてきた。
「ありがとう、巨人。戻っていいわよ」
「了解」
巨人は木の上にある家へと戻り、豆の木は元の豆に戻った。マリエルはそれを本に戻した。
「おう、これが例の剣やな。あの時、広島から取られたちう」
鯉沢は三河口が持つ剣に顔を近づけた。
「さて、ブランデー・ナン。これからどう戻るか何か策は?」
ゆりはブランデー・ナンに質問した。
「はて、奴らはその剣を狙って追撃ちや迎撃を仕掛けてくる。さっきの花沢咲菜・マリエルの本を使ったやり方を二度使うのでは攻略されやすい。海を行く者と徳林奏子の羽衣で空を移動する者で二手に別れた方が良い。海を行く者でクイーン・ベスに加勢するのだ」
「了解。それじゃ、奏子ちゃんと濃藤君と健ちゃん、三人は羽衣で先に行きなさい。濃藤君の剣で羽衣や剣の気配を消すようにするのよ」
「はい」
奏子は羽衣を広げ、三河口と濃藤は奏子と共にその上に乗った。
「それじゃ、先に失礼します」
「無事を祈るわ」
三人は海の上空へと飛んで行った。濃藤が運命の剣を羽衣に刺した為か、すぐに姿が消えた。
「あの運命の剣は別の道具の能力をより強める事も可能なのだよ」
ブランデー・ナンが説明した。
「それじゃ、残りの皆で海を行くよ」
「うん!」
マリエルが本を開く。海の上に巨大な船が現れた。旗にはドクロのマークが掲げられていた。一人の高貴のようでいかつそうな男がその船から姿を現した。
「ようこそ。我が海賊の船へ」
「『ピーター・パン』に出てくる海賊船ね」
「左様。乗るとよい」
ブランデー・ナンが促した。
「まさか、殺されないよね?」
政美が疑った。
「まさか。私が交渉するわ」
マリエルが船長の前に挨拶する。
「フック船長ね。私はマリエル。ここから出る為、そしてクイーン・ベスの艦隊が有利に傾く為に一緒に戦ってほしいけどいいかしら?」
「おう、いいとも。お嬢さん達が手にしたお宝は手に入れたようだな」
「ええ、今、その『お宝』を持ってる人は別行動でいないけど、この海を越えた後で落ち合う約束をしているわ」
「了解。共に戦おう!スミ―、出航しよう!」
「合点承知!」
フック船長の海賊船は三河口、奏子、濃藤を除く剣奪還班を乗せて出航した。
クイーン・ベスの艦隊はヴィクトリア女帝の艦隊とぶつかり合っている最中だった。
「怯むな!」
先程の政美の奇襲で戦況はこちらに傾きかけてはいたものの、気が抜けない状況であった。そして自身も船に乗り、前線に立っていた。
「女王様、あちらに高速で走る船が一隻あります!」
「どれどれ・・・」
クイーン・ベスは察した。
「戻って来たんだね・・・。剣を取り返して・・・!!」
フック船長の海賊船に乗る剣奪還班は攻撃を始める。
「私達を狙いに来たわね・・・。戦闘態勢に入るわ」
ゆりが指令を出す。
「フック船長、あの船達を撃ち落とせるかしら?」
「ああ、やってやるともさ。皆の者、かかれい!」
フック船長は水夫達に命令した。水夫たちは砲撃の用意を始める。バーン、バーン、という船の大砲の発砲音が聞こえた。その威力はすさまじく、一気に3,4隻の船を吹き飛ばした。
「俺もやってやる!」
北勢田が放電した。多数の船が黒焦げにされ、爆発される。一方、ヴィクトリア女帝の艦隊は窮地に立たされる一方であった。
「政美ちゃん、水中移動で仕留め損ねを片付けて来て」
「はい」
政美は海中に潜った。魚のように呼吸に苦しむ事無く平気で沈没していく船の残骸や人々を確認する。命が助かった者は水上へ向かおうとする。
(させるかってんだよ!)
政美は左手を長い剣に変化させ、溺れる者を辻斬りしていく。その際中、砲撃がさらに強まる音が政美には聞こえていた。政美は探知能力を利用する。
(別方向からクイーン・ベスの艦隊も攻めて来てるな・・・)
一方、海賊船の船上では湘木が斧で巨木を出してそこから伸びる枝が敵の船を捉えてマストを折ったり、船をひっくり返していく。鯉沢も原子光線で多くの船を爆破していった。そして彼等の攻撃を光江の御守の能力で更に強化され、敵の艦隊は一気に殲滅した。
「船長、向こうにるのはクイーン・ベスの艦隊みたいだけど、向こうへ向かってくれるかしら?」
マリエルが頼んだ。
「どうやらそうみたいだな。よかろう」
フック船長は操縦室に向かった。船をクイーン・ベスの軍に向かわせた。
「クイーン・ベス!」
クイーン・ベスの乗る船に近づいた所でゆりが呼んだ。
「おお、勇士達か!剣を取り返せたのか?」
「ええ、今剣は安全の為、持ってる人は別行動を取らせているわ」
「そうか。ヴィクトリアの艦隊も崩壊に成功した。協力に礼を行っておく」
「そうだ、祝津ゆり。青葉政美がまだ水中にいる。戻るように伝えないと」
ブランデー・ナンが促した。
「ああ、そうだったわね。こちら祝津ゆり。政美ちゃん、船に戻って来て」
『了解』
政美が甲板上に戻って来た。
「私達も共に向こうの岸に戻るよ」
クイーン・ベスの軍の船とゆり達を乗せたフック船長の海賊船は岸へと戻った。
戦闘の様子を見物しながら三河口、奏子、濃藤は進む。その時、クイーン・ベスの艦隊を発見した。
「ゆりちゃん達はクイーン・ベスと再合流したみたいだな」
「ええ。あの海賊船みたいなのは何なのかしら?」
「マリエルの本で出したんじゃないか?」
三人は先回りで岸に到着し、ゆり達が来るまで待機した。そして待ち人達は訪れた。
「おお、あれが剣か!」
クイーン・ベスが歓喜の声を挙げた。
「ほう、宝はあの剣と言う訳だな」
フック船長も三河口が持つ剣を確認した。ゆり達が海賊船から降りた。
「船長、スミー、ありがとう」
「また用があったら呼んでくれ」
マリエルは海賊船を本の中に戻した。
「よし、我々はまた領土の攻防を続けるよ。諸君は本部へその剣を届けるのだ」
「ええ、行ってくるわ」
剣奪還班は奏子の羽衣に乗り、元来た道を戻る。
後書き
次回は・・・
「剣奪還班の分割」
妲己やレーニン・赤軍のリーダーとの戦いでやられた後、意識を取り戻したありはりえの捜索を全体に呼び掛ける。その報告を受けた後、剣奪還班はあり達のもとへ向かい、作戦の変更、そして次なる目的を決める・・・!!
ページ上へ戻る