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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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第十六話~相棒と相方~

 
前書き
アグスタ編中盤です。

今回は最後にアンケートもあるので答えてくれるとありがたいです。
 

 
ホテル・アグスタ近郊


 アグスタの周りは森に囲まれている。その森の中、闘気を発しながら立つ一人の人影があった。
 服装は黒のズボンとシャツ、その上から紺色のジャケットを着込み、そして白のコートを羽織ったものである。それはバリアジャケットを着たライであった。その右手にはひと振りの剣。刀身と柄の長さが同等で、普通の剣よりも刀身が少し短い。

ライ「敵は4機…蒼月、センサーで敵の機種は分かるか?」

 傍から見ると独り言を呟いているようにしか見えないがその問いかけに答える声があった。

蒼月「センサーで補足したデータと酷似しているのは無頼タイプ。4機とも同じ結果になりました。計算では接触まで約1分。」

 ライの持つ剣の柄の部分に埋め込まれているクリスタルのような部分が発光しそれに合わせて言葉が発せられる。それがライのデバイス“蒼月”の本体である。

ライ「無頼が4機か。初めての実戦だ。これからよろしく、蒼月。」

蒼月「よろしくお願いします、マスター。」

 そう言いながら思い出すのは前の世界での初めての実戦である『ナリタ攻防戦』である。あの時とは細部の状況こそ違うものの、単独で複数の敵機を抑えることと、周りの森の雰囲気が似ていた。
 過去の記憶を思い出している最中に少し離れた位置から音が聞こえ始めた。その音はライにとっては聞き慣れすぎている音。ナイトメアのランドスピナーのホイール音である。
 その音が聞こえた瞬間ライは思考を切り替えた。

ライ「まず敵の連携を崩す。揺さぶりをかけるぞ!」

蒼月「イエス マイ ロード」

 そう言うと自分の周囲に魔力弾のスフィアを形成し始める。その数八。それと同時にライも剣を両手で握り構える。
 そして木々のあいだから敵の無頼が姿を見せた瞬間ライは魔力弾を放った。放たれた魔力弾を敵の4機の内、2機が展開していたトンファーにAMFを纏わせその場に足を止め弾き、残りの2機は両腕でアサルトライフルを保持していたため回避行動をとる。
 回避行動をとった2機はそれぞれ分かれるように左右に移動するがそれをライは予想していた。

ライ「アクセル」

 静かに魔法の発動キーを唱えると足元に白銀の魔法陣が展開される。展開された瞬間にライの姿はその魔法陣の上にはいなかった。
 ライは回避行動をとった無頼の足元に加速魔法で移動し、そして蒼月を無頼の膝にめがけて横薙ぎに振るう。
 普通、敵が鉄の塊であればこんな暴挙にはでない。切れる切れない以前の問題として武器に負担がかかるからだ。
 しかしそんなことをあざ笑うように無頼の足はすんなりと切断された。体勢を崩した無頼は転倒するも、アサルトライフルを片手で持ちライにその銃口を向ける。向けた瞬間アサルトライフルの銃口にライは魔力弾を打ち込みそのまま打とうとしたライフルは爆発する。その爆発の影響でその無頼は行動を停止させた。
 それを確認したライはすぐに横に跳ぶようにして移動する。すると今までライのいた場所に鉛玉の爪痕が無数に刻まれる。その威力と音に動揺もせずにライは体勢を立て直す。
 ライは無頼から少し距離をとり、手元の蒼月を見つめ呟く。

ライ「やはり本来の出力は出ないか……」

 蒼月の刀身は赤く変化している。これはライが対ナイトメアフレーム戦を想定して組み込んだ機能の一つMVSである。元の世界ではメジャーな技術であったが、サクラダイトもユグドラシルドライブも存在しないこの世界の技術では完全に再現することはできなかった。そのため、本来のMVSの半分の切れ味程度しかなかった。
 しかし完全な再現はできなかったがそれでも敵に有効なことは今の攻撃で証明されたため、ライはそのことには安堵していた。

蒼月「申し訳ありません、マスター。」

ライ「え?」

 いきなりの謝罪の言葉に困惑する。

蒼月「私の性能はあなたの求めるものでは無かったようなので。」

 その言葉で先ほどの自分の言葉を思い出す。確かにあの言葉だけでは自分は不満しか言っていないのだ。
 自分の相棒の素直さと律儀さに苦笑しながらライは言葉を紡ぐ。

ライ「そんなことは無い。蒼月、君の性能は僕にとってとてもありがたい。これは慰めでもなく事実だから。さっきの言葉を気にしているのなら謝るよ。」

蒼月「しかし―」

ライ「それに君に求められているのはセンサーや通信能力だ。」

 現にAMFがジャミングに近い効果を発揮して、並のデバイスのセンサー類は無効化されているのだが蒼月はそのような影響は一切受けていない。

蒼月「……」

ライ「これからも頼りにしているよ。」

蒼月「イエス、マスター」

 会話を終えるとライは残りの無頼に向き直る。その表情は感情を表してはいなかったがその瞳には確かな力強さを写していた。

ライは「残り10分で片付ける。」

蒼月「イエス マイ ロード」

 そしてライは再び蒼月を構え、その刃を振るうために敵に向かい駆けた。



ホテル・アグスタ正面


 ライが無頼と交戦している頃、スバル、ティアナ、エリオ、キャロの四人は苦戦を強いられていた。その原因としてはリニアレールの時と違い防衛戦であること。さらに地形的に敵が広く展開でき、こちらの人員が少ないことから戦域全てをカバーしきれないのだ。
 そのことに一番焦りを覚えているのはこの場所の指揮をとっているティアナであった。そんな中一つの報告が入る。

シャマル『ゲスト1、敵を二機撃破!交戦を継続中!』

ティアナ「!……」

 戦闘の報告としては吉報ではあるのだが、今の彼女にとっては焦りを加速させるだけであった。

ティアナ(私たちがあんなに苦戦した相手をこうも簡単に…)

 彼女の胸に去来するのは妬みなどの嫉妬の感情が強かった。自分にとって実現が難しく、さらに言えば自分の理想とする能力を持っているのがライなのだ。彼が歴戦の魔道士ならこんな感情を彼女は持たなかった。しかし彼の表向きの経歴はただの学生で、しかもまだ魔法を使い始めて間もない。

シャマル『防衛ラインももう少し持ちこたえて。すぐにヴィータ副隊長が来るから』

ティアナ「守ってばかりじゃ、押し込まれます。ちゃんと全部落とします!」

 シャマルからの気遣いの声も今のティアナにとっては煩わしいものでしかなかった。だから彼女の指示に反射的に噛み付くように返事をし、自己判断で指示を出す。

ティアナ「エリオ、キャロと一緒に一度センターに下がって。スバルと私のツートップで行く。」

エリオ「はっ、はい。」

 近くにいたエリオはティアナの剣幕に若干怯えながらも、指示通りにキャロと一緒に後退する。

ティアナ「スバル、クロスシフトA!」

スバル「おう!」

 ティアナからの指示に力強い応答で応え、敵ガジェットを引き付けるようにウイングロードを展開しその上をかける。

ティアナ(証明するんだ。特殊な才能や魔力がなくてもできることを!)

クロスミラージュ「カートリッジロード」

ティアナ(私にも力があることを!)

 スバルが敵を引き付けている間にカートリッジを四発消費し大量の魔力弾のスフィアを形成していく。魔力の消費とコントロールに神経を集中させ手のひらにじっとりと汗がにじむ。そしてそんな中、スバルの声がティアナに届く。

スバル「ティア、引き付けたよ!」

 その声のする方に視線を集中させ敵ガジェットを視界に収める。

ティアナ「クロスファイヤーシューート!!」

 自分の中で暴発しそうになっている魔力を解放し、視界に収まる全ての敵を打ち抜いていく。自分の力で敵を減らしていることに一瞬満足感を覚えるティアナ。
 しかしその一瞬が致命的であった。気持ちに余裕ができた瞬間、一発の魔力弾のコントロールが甘くなり自分の相方であるスバルの背中に向かう。

スバル「っ!」

 スバルは自分の背後から迫る魔力弾に気付き体を硬直させる。その魔力弾はAMFに通用する程の威力である。いくら新人の中で一番防御に秀でているスバルといえど、それが直撃すればひとたまりもない。
 そこにいる誰もが最悪の結果を迎えると思った瞬間、魔力弾とスバルの間に割って入る赤い影があった。

ヴィータ「このっ!」

 その赤い影、ヴィータはグラーフアイゼンを振りかぶり掛け声と共に魔力弾を叩き落とし地面に着弾させた。

スバル「ヴィータ副隊長!」

 ヴィータの登場に驚きスバルは声を上げる。だがそんなスバルを無視してヴィータはティアナに向き直り、怒声をはりあげる。

ヴィータ「ティアナ!このバカ!無茶して味方に誤射してどうすんだ!」

ティアナ「あっ…あ…」

 自分の起こした結果に呆然とし、ティアナは言葉をうまく発せることができないでいた。それに気付いたスバルは代わりに言葉をかけるがそれは火に油を注ぐのと同様であった。

スバル「ヴィータ副隊長、あの…その、今のも連携の一部で…」

ヴィータ「ふざけんな!さっきのは直撃コースだよ!」

スバル「いえ…その…あれは…」

ヴィータ「もういい、あとはあたしがやる。2人とも後方で待機してろ!」

 さらに言い訳を重ねようとするスバルと未だに呆然としているティアナの二人にヴィータは業を煮やし命令する。

ティアナ「私…は……」

完全に戦意を喪失したティアナは思考が停止し何も考えられなかった。
 
 

 
後書き
というわけでティアナの誤射までです。
次回は原作とは若干違う展開になりますが読んでいただけたらと思います。

アンケート
現在作者の頭の中にいくつかの新しい話の構想(妄想)があります。それをこの作品と同時進行で投稿するかどうか迷っています。ちなみに文章にするにあたり投稿するのを決意しても新作を投稿するのに少し時間をいただきますが。
なので皆さんの意見をお聞きしたいです。以下の選択肢から選んでください。

①この作品をある程度完結させてから次に移るべき

②少しペースは下がるが同時進行でも構わない

③その他(こんなのを書いて欲しい等)

以上です。現在も決して早いペースではありませんがそれでも読んでくださっている方々には感謝しています。
このアンケートは一月いっぱいまで受け付けますのでできるだけ多くの意見をお待ちしております。m(_ _)m


ご意見・ご感想をお待ちしております。
 
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