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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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共存編
  純一:予期せぬ来訪者

ここは人里にある八百屋「八百長」。
小春日和となったある日曜日の午後、店主の小泉純一は2人の来訪者と話しをしていた。
客人は2人とも日本の首都・東京を警固する警視庁の警察官だった。1人は現行制服を、そしてもう1人はなぜか旧型制服を着ている。


?「いやあ、まさか小泉総理とお話しできる機会が巡ってくるとは!感激ですなあ」


現行制服を着た警官が言った。名を大原(おおはら)大次郎(だいじろう)といい、階級は巡査部長だ。


?「しかも“幻想郷”という我々が暮らしている世界とはまた違う場所で、ですよ。私もこれまで世界各国はもとより過去や未来、天国に地獄、果ては宇宙と色々な場所に行きましたが幻想郷(ここ)は初めてです」


旧型制服を着たもう一人の警官が言った。名を両津(りょうつ)勘吉(かんきち)といい、階級は巡査長だ。
彼らは外界の漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の登場人物だ。両津が主人公で、大原は両津直属の上司という立場である。

派出所で通常の勤務にあたっていたところなぜか2人揃って意識を失い、ふと気づけば八百長の前に倒れていた。そしてたまたま店番をしていた純一に助けを求め今に至る。


純一「恐らく日本で一番知名度が高い警察官と思われるお二人とお会いすることができて私も光栄です。両津さんの武勇伝の数々は私の耳にも入っておりますぞ」

両津「本当ですか⁉︎ いやあ参ったなァ!」

大原「図に乗りやがって…バカが」


両津の「武勇伝」。
それはおよそ不名誉なものばかりで決して誉められるようなものではなかった。


純一「ここはとても居心地がいいんですよ。お二方も移住なさってはいかがです?」

両津「えっ、いいんですか⁉︎」

大原「お誘いはありがたいんですが、我々には“都民を守る”という重要な任務がありますからなあ…」

両津「部長!」


渋る大原に両津が噛みついた。ちなみに「部長」とは大原の通称である。


両津「部長はもう十分に警察官としての任務を果たしたようなもんじゃないですか!第二の人生(セカンドライフ)を異郷の地で始める絶好のチャンスなんですよ⁉︎」

大原「中川君や麗子君のことはどうするつもりだ」

両津「うっ…」


共通の部下である中川(なかがわ)圭一(けいいち)巡査と秋本(あきもと)・カトリーヌ・麗子(れいこ)巡査の名前を大原が出すと、両津は答えに窮して押し黙ってしまった。


両津「……まあ、あいつらはウチの派出所に配属されてもう長いですし、2人で何とかやっていくでしょう。それにいつまでも甘やかしていてはダメ!今こそ千尋(せんじん)の谷底に突き落とすべきです‼︎」

大原「いつもはお前が甘えてるクセに…」

両津「くっ…!」


中川、麗子ともに財力は上司である両津を凌駕していた。それをいいことに両津は度々2人に金の無心をしていたのである。


両津「うるさいなあ!そもそも帰ろうったって方法がないんだからどうしようもないじゃないですか‼︎」

大原「そうだった…」


大原はガクッと膝をついた。


両津(フッ、これで勝ったな。)


それを横目にほくそ笑む両津。
しかし直後、純一が驚きの言葉を口にした。


純一「大原さん、帰る方法ならありますぞ」

大原「なに⁉︎」

両津「なんだって⁉︎」


『信じられない』という表情の2人をよそに、純一はある人物の名を呼んだ。


純一「紫さん、いるんでしょう?」


呼びかけに反応するように中空に「スキマ」と呼ばれる空間が出現し、その中から一人の女性が出てきた。八雲紫ーーー「妖怪の賢者」の異名を持つ古参のスキマ妖怪だ。


紫「はーい、純ちゃん?」

両津「おお、金髪(パツキン)ギャル!」

大原「美人だ…」

純一「こちらはすきま妖怪の八雲紫さんです」

紫「初めまして両津さん、大原さん。八雲紫です」

大原「はあ、どうも」

紫「経緯はずっと見ていましたわ。元の世界に戻る方法…よね?」

両津「さすがに無理ですよね?だってホラ、異世界に来ちゃったわけだし⁉︎」

紫「それができちゃうのよー。私の能力にかかれば……ね?」


紫はそう言って右の人差し指で空中をつぅーっとなぞった。するとどうだろう、なぞったとおりにスキマができたではないか!


紫「ここを通れば派出所は目の前ですわ」

両津「ちょっと待て!今のはどういう手品なんだ⁉︎」

紫「これが私の能力ですもの。タネも仕掛けもございませんわ」

両津「そうだった!あまりに人間そっくりなもんだから妖怪ってのを忘れていたぞ!」

大原「背丈も麗子君ぐらいあるしな(それに胸も…)」


思わず胸元に目がいく大原。


両津「部長、なに紫さんの胸見てるんですか」

大原「なっ…何が悪い!男の本能なんだから仕方ないだろう⁉︎」

両津「冗談ですよ。まさか本当に見ていたとか…?」

大原「うるさい馬鹿者!」

紫(ふむ、面白いコンビね…。)


子供のようにギャーギャー言い争う2人を紫は微笑ましく見ていた。



ーー
ーーー


純一「月光仮面ではありませんが、疾風(はやて)のように現れて嵐のように去っていきましたね」

紫「ええ、そうね」


結局、2人は帰っていった。
紫が「また幻想郷に来たければいつでも呼びなさいね」と言うと(特に両津が)嬉しそうにしていた。


紫「私の予想ではあの2人はまた来るわね。それも近いうちに」

純一「はてさて、どうでしょうな…。ところで紫さん、もう夜ですがもしよければ夕飯ご一緒しませんか?」

紫「あら、いいの?それじゃあせっかくだからご相伴にあずかろうかしら」

純一「了解しました。それでは準備してまいりますので少々お待ちを」


純一はそう言うと台所へ向かった。




ーーー幻想郷の夜はまだ始まったばかりである。 
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