軽蔑
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第一章
軽蔑
高校一年生の長谷美佳はこの時クラスメイトの瀬能浩紀を嫌っていた、それも徹底的に。
それでだ、女の友人達に彼を忌々し気に見ながら話した。
「私あいつ大嫌いなのよ」
「暗いし頭悪いしね」
「それなのに何か大物ぶって恰好つけてね」
「気取って女の子に告白とかして」
「勘違いしてるしね」
「あんな奴クラスにいるだけでもね」
背は高いが丸々と太っている彼を見てさらに言った、見れば茶色の長いふわりとした髪の毛で色白でやや垂れた長い睫毛の目だ。黒い目はきらきらとしていて唇はピンク色だ。背は普通位dだがスタイルはいい。
「腹立つわ」
「体育の授業も全然で」
「どうしようもない奴だしね」
「私もあいつ嫌いよ」
「私もよ」
他の友人達も口々に言った、そして。
美佳は自然と浩紀に対して色々と言ってする様になった、それも裏からだけでなく表立ってでもだった。
そうしてだ、ある日のこと美佳は友人達に意地悪い笑顔で提案した。
「あいつが下校する時にね」
「今度は何するの?」
「一体何するの?」
「校門で待ち伏せしてね」
そうしてというのだ。
「色々言ってやりましょう、あいつがしたこと」
「あいつ自身になのね」
「そうしてやるのね」
「ここは」
「そう、そうしてやりましょう」
こう言うのだった。
「今度は」
「いいわね、やりましょう」
「あんな奴どうしてもいいしね」
「じゃあね」
「今日はそうしてやりましょう」
友人達と共に底意地の悪い笑みを浮かべてだ。
彼女達の執拗な攻撃ですっかりしょげ返って俯いている彼の下校を待ち伏せてだった。美佳は友人達と共に言った。
「あいつ最低よね」
「イキってても弱いしね」
「成績学年でビリの方でしょ?」
「デブでね」
「それで格好いいつもりだしね」
「もう軽蔑」
美佳は浩紀を指差して笑って言った。
「あんな奴軽蔑するわ」
「私もよ」
「私もあんな奴軽蔑するわよ」
「死ねばいいのに」
「本当にそうよね」
友人達と共に嘲笑って話した、そして。
彼を汚がりクラスの男子達にも彼と付き合うなと圧力をかけて孤立させた、そうして一年を過ごし。
以後は彼と同じクラスにならなかった、だが高校を卒業してから暫く経って。
大学に入学していた彼女は家に帰るといきなりだった。
一つ上の兄に拳で左頬を殴られて言われた。
「痛いか」
「ちょ、ちょっといきなり何するのよ」
美佳は左頬を抑えて兄の悠一に問うた、背が高く精悍な顔立ちで黒髪を長くしている彼に対して。
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