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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百十五話 鷲塚、小次郎を気遣うのことその五

「こうしているとだ」
「どうしたのだ?鷲塚殿」
「うむ、新撰組の頃を思い出す」
 こう言うのだった。
「あの頃のことをな」
「そうだな。私も貴殿もよくこうして京の都を見回っていたな」
「そして攘夷の者達と戦っていた」
「今となってはいい思い出だ」
 こうも言う鷲塚だった。
「あの頃のことは」
「あの後幕府は滅ぶか」
 小次郎はこちらで彼等から見て未来から来た者達の話を思いだしながら述べる。
「我等はあくまで守りたかったが」
「いや、守るべきものはまだある」
「あれか」
「そうだ。誠だ」
 それだとだ。鷲塚は言うのだった。
「我々が守るべきはだ。それだ」
「誠。人としての誠」
「それは永遠に変わらぬ。だからだ」
「そうだな。私もまた」
「だが真田君、君は」
「私は真田小次郎だ」
 鷲塚が何を言いたいのかを察してだ。小次郎は自分から言った。
「新撰組零番隊隊長だ」
「だからか」
「私もまた剣を持つ」
 こう言うのだった。
「それは変わらない」
「そう言うのだな」
「それは変わらぬ。そしてだ」
 さらにだというのである。
「私はこの世界でも誠を守ろう」
「わかった」
 鷲塚は小次郎の話を受けてだ。強い声で応えた。
「では私もそうしよう」
「それは局長も言われる筈だ」
 近藤勇、彼もだというのだ。
「誠は人と共に常にあり」
「我々はそれを守るべきだとだな」
「そう思う」
 小次郎は小次郎として話していく。
「私もまた」
「そうだな。しかしだ」
 ここでだ。不意にだ。鷲塚は話を変えてきた。
 そうしてだ。彼のことを言うのだった。
「紫鏡のことは聞いたか」
「孫策殿への刺客なりだな」
「そうだ。処刑された」
 そうなったことをだ。彼はここで小次郎に話したのである。
「そうなった」
「話は聞いている」
 小次郎もだ。知っていると返した。
「だが出来ればだ」
「御主のその手でか」
「決着をつけたかった」
 歯噛みをしながらだ。小次郎は述べた。
「この私がだ」
「だがあの男は死んだ」
 鷲塚は前を見ながらその小次郎に告げる。
「最早御主の願いは果たされたのだ」
「そう思っていていいのだな」
「そうだ。だから忘れるのだ」
 鷲塚への気遣いだった。その気遣いを見ながら。
 そうしてだ。巡回を続ける。その中でだった。
 陣中には兵達がいる。彼等はそれぞれ訓練をしたり雑用をしたりしている。中には休息を取っている者もいる。何処もおかしなところはない普通の陣中である。
 だがその陣中にだ。小次郎は見たのだった。
「!?」
「どうしたのだ?」
「いた」
 こう言ったのである。
「確かにいた。あの男が」
「あの男、まさか」
「そうだ。あの男だ」
 こうだ。小次郎は強張った顔でその場所を見ながら鷲塚に返す。
「あの男がいた。間違いなく」
「まさかと思うが」
「刹那もまたこの世界に来ている」
 小次郎はこのことから考えて述べる。
 
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