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おっちょこちょいのかよちゃん

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199 偽物の剣

 
前書き
《前回》
 九尾の狐に変化する女・妲己や赤軍の長・重信房子に戦争主義の世界の長・レーニンと遭遇したりえ達はその場にいる人物達で総力戦で返り討ちにしようとする。しかし、杉山を取り込んだレーニン達には異能の能力(ちから)を出す機械がある為に撃退しきれず、りえはそのまま杯ごと妲己に連れ去られてしまう。その一方、とある岸には一人の女性と九人の高校生が到着していた!! 

 
 剣奪還班は海岸に訪れていた。
「ここの海岸にクイーン・ベスとやらがいるんけんか?」
 鯉沢は周りを見回した。
「れにしても、よう不気味な岸じゃけんのう。でも向こうだけ澄んだ気配がしちょる」
「私も、女王みたいな人が見えるね」
 政美はマフラーの能力の一つ、探索能力を利用した。
「もしかしたらその人がクイーン・ベスって人なのかもしれないわね。近づいてみましょう」
 ゆりは進言した。そして待機している女王のような人物、そしてその兵士達の元へ訪れた。
「もしもし。貴女がもしかしてクイーン・ベスですか?」
「左様。もしや貴女方が剣を取り返しに来た者達かな?」
「ええ、この手紙をフローレンスから預かっているわ」
 ゆりがクイーン・ベスに手紙を渡した。クイーン・ベスはその手紙の封を開けて読む。

 クイーン・ベス殿

 この手紙を持たせました者達が異世界の最上位の宝具であります剣を取り返します役目を担います者達です。その中でも鍵となります人物が三河口健といいます少年です。その者に私がお預かりさせました例の物・偽物の剣を彼に持たせてください。そしてこの者達が海上のヴィクトリア女帝の警護兵の殲滅および機械の無力化に貢献してくれますでしょう。

 フローレンス

「三河口健という少年はいるかな?」
「俺の事だが」
 三河口が前に出た。
「君にこれを渡せとフローレンスから伝言を受け取っている」
 クイーン・ベスが渡した物は剣だった。
「これは・・・、異世界最上位の剣?」
「そう見えるだろう。外見ほほぼ剣そのものだが、これは偽物だ。本物はあの本拠地にある」
 クイーン・ベスは指を指す方角は北の方だった。三河口や鯉沢からして異常な程の禍々しさを感じさせる建物だった。
「あれが、戦争主義の世界の本拠地・・・?」
 光江が呟いた。
「左様。ヴィクトリア女帝の手先である警護の者が増えており、我が無敵艦隊も劣勢に傾いてしまっている状態だ。お前達がその状態を塗り替えられるという精鋭達と聞く」
「でも、警護の人間が増えていたら簡単に剣を取り返せない筈じゃないかしら?」
 ゆりが懸念した。
「それに関してだが、他に一名、協力者に来て貰っている」
 また別の女性が現れた。
「あ、ブランデー・ナン!」
 マリエルが現れた女性の姿を見て再会に喜んだ。
「マリエル、知ってるのか?」
 湘木が聞いた。
「ええ、私の本はこの人から貰ったの」
「久しぶりだね、花沢咲菜・マリエル。また会えて私も嬉しいよ」
「では、ブランデー・ナン。お前の作戦を教えて頂きたい」
「ああ、皆の情報はフローレンスとイマヌエルから聞いていてね、先ずは敵に気づかれずに進む事だね」
「その為には?」
 ゆりが聞いた。
「徳林奏子、お主の羽衣は水中の中で皆を包めて移動させる事ができる。それで敵をかい潜ればよい。必要に応じて濃藤徳崇の剣で守りつつ青葉政美の水中移動する能力で邪魔な敵は奇襲せよ。それからだな、花沢咲菜・マリエル。お主の本の一種に『ジャックと豆の木』の話があるだろ?」
「え、ええ・・・」
「その豆の木の巨人の家に三河口健を封印するのだ。偽物の剣を用意してある事を直前まで知られてはよくないのでね」
「つまり、本部突入は健ちゃんとマリエルちゃんでやる訳ね」
「あとは祝津ゆりの指揮に任せよう」
「了解。マリエルちゃん、本を用意して」
「はい」
 マリエルは本から豆を出した。それを地に投げると豆から芽が出て、急速に巨大化し、その天空にある家から巨人が出て降りてきた。
(こんなところで巨人を出して目立たんだろうか・・・)
 三河口はそう懸念した。
「お呼びかな?ご主人」
「ええ、この人を貴方の家に匿わせて。必要な時にまた呼ぶわ。乱暴に扱わないでね」
「ああ、よかろう」
 豆の木の巨人は三河口を掌に包みこんで家へと戻って行った。そして豆の木は縮んで元の豆に戻ってマリエルの本の中に戻った。
「あいつ、食われへんかな?」
 鯉沢が冗談を言った
「こっちで作戦を潰してもしょうがないでしょ」
「それじゃ、奏子ちゃん、皆を羽衣に包んで行きましょう」
「ゆりさん、私は必要に応じて水中移動するよ」
「いいわよ」
「それでは、我々も盛大に援護する。気を付けて参るがよい!」
「はい」
 皆は奏子の羽衣に包まれて海の中に入って行った。

 かよ子達藤木救出班は目的地への方角へと進み直した。
(りえちゃん達、大丈夫かな・・・?杉山君、あのレーニンと同化してるから、凄い手強くなってる筈・・・)
「山田かよ子、杉山さとしと杯の所有者の事がどうしても気がかりなのか?」
 石松が尋ねた。
「あ・・・、う、うん・・・」
「きっと何かあったら同行者も連絡を皆に寄こすであろう。今は彼女らの無事を祈るしかあるまい」
「そうだよね・・・」
 かよ子はなぜか杉山にヤキモチを焼き始めていた。

 剣奪還班は羽衣を使用して海中へと潜って戦争主義の世界の本部へと向かっていた。
「なあ、ここは気持ちワリいくらいの胸騒ぎがするけんのう」
「おそらく、クイーン・ベスの艦隊を撃墜しようとする連中だろうな」
 北勢田が考察した。
「一応、私達も狙われている身よ。迎撃はしておくべきね」
 その時、マリエルには何か戦闘が始まるような未来が見えていた。
「・・・もしかして、海上で戦闘が始まる。そんな予感がしたわ」
「予感?それも見聞の能力(ちから)なん?」
 光江が聞いた。
「ええ、私はなぜか次に人が何をしようとするのか頭から聞こえて見えるの・・・」
「どうやら、マリエルちゃんの見聞の能力(ちから)は健ちゃんや輝愛ちゃんとかと違って未来予知ができるのかもしれないわね」
 ゆりは察知した。その一方で政美は探知能力を使用していた。
「マリエルの言ってる事は間違ってないよ・・・。敵の勢力がうじゃうじゃいる」
「濃藤君、君の剣で私達が気付かれないようにできるかしら?」
「はい」
 濃藤は運命の剣(デステニーソード)を羽衣に刺した。羽衣が先程よりも高速で移動した。
「政美ちゃん、敵が動いたら奇襲をしていいわよ。ブランデー・ナンもそう言ってたし」
「はい」
 ゆりが指示を出した。政美は海上の様子をマフラーの能力で察知した。
「私達の上は敵だらけだね・・・。行ってくるよ!」
 政美が瞬間移動で羽衣の中から離脱した。
「青葉さん、無事に戻って来られるかしら・・・」
 光江が心配した。
「でも、水中でも一番動けるのは彼女だから信じるしかないだろうな」
 北勢田が答えた。

 青葉政美は九つの能力を持つマフラーの中で水中でも魚や鯨、海豚(いるか)のように普通に生息、行動可能な能力を利用して周囲を巡回していた。
(あれが敵の船の底か・・・。よし!)
 政美は船の甲板に接近した。そしてその船底を突き破る。他の敵船も次々と穴を空けた。
「こちら青葉政美!今敵の船底の数機穴を空けた!今戻る!」
 政美は超能力の一種・瞬間移動で羽衣の中に戻って来た。
「何機か沈むと思うよ」
「政美ちゃん、お疲れ様」
 そして剣奪還班は敵の本拠地へと進む。

 クイーン・ベスは敵の船が沈み始める様子を見た。
「今が機会のようだな。行くぞ!」
 クイーン・ベスは船に乗り込み、自身の艦隊を出航させた。そして配下の者達に告ぐ。
「全員に告ぐ。剣を取り返さんとする者達の援護で敵の船が次々と傾きかけている。反撃をするなら今だ!」
「了解!」
 艦隊が船から砲撃をかました。
「ヴィクトリアよ・・・。増兵も無意味に終わらせてくれる!」
 クイーン・ベスは剣奪還班の援護で事態を優勢へと傾かせていく。
「クイーン・ベス。私はブランデーを一杯頂こう」
「お前はブランデーが命の次に大事だな」
 クイーン・ベスは冷やかした。ブランデー・ナンは携帯用の酒瓶を出して飲んだ。ブランデー・ナンの周りに炎が現れ、彼女はその場から消えた。
(移動の能力を持つブランデーか・・・)

 奏子の羽衣は砲撃の中を抜けて岸の一角に辿り着いた。
「あっちはやばいけんのう」
 鯉沢は戦いの最中の海を眺めた。
「本部の裏側に回ったみたいだな」
 濃藤は見回す。
「ああ、この辺りの守衛は殆どクイーン・ベスの艦隊が陥落させた」
「ブランデー・ナン!?先回りしてたの?」
 マリエルが驚いて聞いた。
「ああ、瞬間移動のこのブランデーを飲んだんだ。私はブランデーを飲む事で能力(ちから)が発揮されるからね。だが、ここからが問題だよ。剣の奪還は簡単にはいかんと思う。私に考えがあるのだよ」
 ゆりはブランデー・ナンの意見を無視する手はないと察した。
「その考えって・・・?」 
 

 
後書き
次回は・・・
「敵の本部への侵攻」
 剣の奪還を進めるゆり達はブランデー・ナンと作戦を立て続ける。ブランデー・ナンは三河口の偽物を作り出して敵を攪乱させる事を提案する。そして遂に戦争を正義とする世界の本部への侵攻が始まる・・・!! 
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