ウルトラマンカイナ
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特別編 ウルトラカイナファイト part14
5人の後輩ウルトラマン達が放つ必殺技に、テンペラー軍団の怪獣達は続々と斃れ。残るは、その群れを率いる首魁ただ独りとなった。
『バカな……ありえん! 我が軍団が、あのような若造共に遅れを取るなどッ!』
『ダァ、アァッ!』
予想だにしなかった劣勢に、焦燥を隠し切れないテンペラー星人。東京スカイツリーの前に立つ彼は、満身創痍のまま組み付いて来るウルトラマンカイナを電撃の鞭で叩き伏せながら、怒号を吐き散らかしている。
5大怪獣の敗北も確かに想定外だった。が、何よりもテンペラー星人の精神を乱していたのは、常軌を逸するカイナのタフネスであった。
カラータイマーの点滅は、5人のウルトラマンが到着する前から始まっていたというのに。その輝きは今もなお、止まっていないのである。
不死身を疑うほどの継戦能力を見せつけ、チョップを連打して来るカイナを蹴り倒し、テンペラー星人は足早に距離を取っていた。まるで、恐れているかのように。
『なぜだ! なぜ立ち上がろうとする、あんな紛い物まで造るような地球人共のために! 奴らが何を企んでいたのか、分からぬ貴様らではなかろうッ!』
『分かってる……分かってるさ。それでもオレ達は……信じると決めたんだ。決めたから、戦って来られたんだ! 人間は……それだけなんかじゃないって!』
『ええい……! ならば今度こそ、我が絶世哮の前に砕け散るが良いッ!』
だが、テンペラー星人とカイナの間には、今もなお隔絶された戦力差というものがある。ましてや今のカイナは、増加装甲を失った基本形態なのだ。まともに絶世哮を浴びれば、今度こそ命はない。
それでもカイナは、1歩たりとも引き下がらない。腕を十字に組み、ゼナリウム光線の発射体勢を取る彼は、言外に真っ向勝負を挑んでいた。
『愚か者めが……! ならば望み通り、跡形もなく消し飛ばしてくれるわぁぁあッ!』
『ゼナリウム……光線ッ!』
カイナと弓弦の叫びが重なり合い、蒼い光線が迸る。その閃光が絶世哮の輝きと衝突したのは、それから間もなくのことであった。
あまりに激しいエネルギー同士の激突に、周囲のビル群が「余波」で薙ぎ倒されていく。スカイツリーを支える地盤すらも、「競り合い」の影響に揺らぎ始めていた。
だが、やはり戦局は厳しい。絶対に負けられない、という信念を宿したゼナリウム光線すらも、絶世哮の威力は容易く捩じ伏せようとしている。
その光景を中継映像で目撃している、BURKの面々から見ても。世界中の人々から見ても。誰の目にも、カイナが押されていることは明白であった。
『だけど……それでも、俺達は負けないッ! カイナ兄さんは、俺達に教えてくれたんだッ!』
『……!? き、貴様らァッ……!』
にも拘らず、カイナの光線がまだ消えていないのは。
「先輩」と肩を並べるように再び降り立った5人のウルトラマンが、各々の必殺技を撃ち放っていたからなのだ。
『大切なのは最後まで諦めず、立ち向かうことだとッ!』
ウルトラアキレスの、イーリアショット。
『例え僅かな希望でも、勝利を信じて戦うことだと……!』
ウルトラマンザインの、ザイナスフィア。
『信じる心……その心の強さが、不可能を可能にする!』
ウルトラマンエナジーの、エナジウム光線。
『それが、ウルトラマンなんだってッ!』
ウルトラマンアークの、メタリウムアークシュート。
『俺達は、教わって来たんだ! 紡いで来たんだ、今日までずっとッ!』
そしてウルトラマンジェムの、ブリリアント光線。
ゼナリウム光線の軌道に重なるように放たれた彼ら5人の必殺技は、眩い閃光を築き上げ――絶世哮の圧倒的火力すらも、徐々に押し返して行く。
そんな頼もしい後輩達に背を押され、カイナの両眼も勇ましい輝きを灯していた。カラータイマーの点滅など意に介さず、彼は最後の全力をこの一瞬に注ぎ込む。
『今ここには……オレ達がいる! この瞬間のためだけの、ウルトラ6兄弟がいるッ! だから……たった独りのお前になんざ、絶対に負けないッ!』
この戦いのためだけに集まった、6人の勇士。敢えてその総称を「6兄弟」とするカイナの雄叫びと共に、究極のゼナリウム光線の威力が最高潮に達する。
『お前達如きがウルトラ6兄弟、だと……!? 認めん……我は貴様らなど、認めんぞおぉおぉッ!』
その輝きが絶世哮を打ち破り、テンペラー星人の巨体を貫いた瞬間。ウルトラマンタロウを筆頭とする、真の6兄弟を想起させる力を目の当たりにした彼は――断末魔と共に、爆炎の中へと消えて行く。
テンペラー軍団の脅威に追われ、地球に墜落した恐竜戦車の出現と、ウルトラマンカイナの登場から6年。それまでの間、絶えず続いてきた侵略者達との戦争は、この瞬間を以て真の終結を迎えたのだった。
ウルトラアキレス。ウルトラマンザイン。ウルトラマンエナジー。ウルトラマンアーク。ウルトラマンジェム。彼らが1年間に渡り戦ってきた怪獣や異星人達を、この地球に追いやった「元凶」が、ついに全滅したのである。
『み……皆様、ご覧になられましたか! 今、今……ウルトラマンカイナが! 6人のウルトラマンが、凶悪な異星人を撃破したのです! この地球は……今度こそ! 救われたのですッ! ……やったぁぁあっ!』
その瞬間を目の当たりにしたアナウンサーが、いの1番に喜びの声を上げた瞬間。彼女の歓喜が伝播したかのように、世界中に歓声が広がって行く。
辻凪あやめ。江渡匡彦。真壁悠兎。小森ユウタロウ。三蔓義命。猫島菜緒。佐渡光。大力力也。この戦いの行く末を見守っていた彼らも、事態の終息を悟り安堵の息を漏らしていた。
『ふん……エナジーの奴め。ブラックキング如きに手こずるとは、まだまだ修行が足りんな』
『俺達の弟子もそうだぜ。宇宙警備隊に認められた暁には、もっとシゴいてやる必要がありそうだなァ』
『あぁ、全くだ。……まァ、今回の戦い振りはあいつにしちゃあ上出来な方さ。これから先が、楽しみだぜ』
宇宙の彼方から、弟子達の死闘を見守っていたウルトラマンレグルス、ウルトラマンリッパー、ウルトラマンルプスの3人も。
口先では厳しい評価を下しながらも、その声には喜びの色を滲ませている。弟子達の成長と勝利を、噛み締めるかの如く。
そして。半壊したブリーフィングルームから全てを見届けていた、弘原海と琴乃も。
安堵の表情を浮かべ、空の彼方へ飛び去って行く6兄弟の勇姿を見送っていた。
「……終わったな、今度こそ」
「……はい」
長きに渡る戦争の終幕。平和への夜明け。その光明を前に頬を緩める弘原海は、満足げに踵を返してブリーフィングルームから立ち去って行く。
「隊長、どちらへ……!」
「もう俺は隊長ではない。……言っただろう? 後は、お前に任せたぞ。これからの地球と……BURKをな」
BURKの隊長として積み上げてきたもの全てを賭け、地球を守り抜く。その本懐を遂げた彼を引き留められる言葉など、ありはしない。
「……はい。今まで、ありがとうございました……弘原海さん」
琴乃はただ、去り行く彼の背を見送るしかなく――破壊された天井の亀裂から差し込む陽射しが、その行く先を鮮やかに照らしていた。
後書き
今話を以て、ついにテンペラー軍団との決戦に終止符が打たれました! ウルトラマンカイナをはじめとする6人のウルトラマン達の戦いも、これにて真の終焉でございます(о´∀`о)
ちょっとした後日談的なエピソードになる次回の最終話で、この特別編もとうとう完結。どうぞ最後までお楽しみにー!٩( 'ω' )و
Ps
ウルトラマンFEシリーズ、新作出ないかなぁ(´・ω・`)
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