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展覧会の絵

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第一話 キュクロプスその一

                 第一話  キュクロプス
 十字が世話になっているという教会の横にある画廊についてだ。女の子達が十字自身に尋ねていた。
「ねえ、それでどんな絵があるの?」
「よかったら私達も行っていい?」
「今日行っていいかしら」
 こうだ。彼の席に来て彼に問うていた。彼の周りは今も女の子達が集っていた。
 その彼女達がだ。彼にさらに尋ねる。
「入場料は幾ら位なの?」
「高いの?安いの?」
 こうした問いにだ。十字はだ。
 いつもの落ち着いているが氷の様な声でだ。こう彼女達に答えた。
「入場料はいらないよ」
「あっ、無料なの」
「お金はいらないのね」
「そう、いらないよ」
 こう女の子達に答えるのだった。
 そしてだ。彼はこうもだ。女の子達に話した。
「それにね。絵はね」
「うん、絵はどんなのがあるの?」
「やっぱり宗教画?」
「そういうのなの?」
「宗教画もあればね」 
 それにだ。その他にもだというのだ。
「色々。超現実主義の絵もあるよ」
「ああ、シュールリアリズムね」
 十字の話を聞いてだ。女のこの一人がこう言った。
「ああした感じの絵があるのね」
「そうなんだ。人の心や世界を映し出しているのが絵だから」
 それ故にだというのだ。
「色々な絵があるよ」
「そうなのね。それじゃあ」
「今日にでも行かせてもらうわね」
「無料だっていうし」
「誰でも何時来てもいいからね」
 時間についても述べる十字だった。
「朝から夜遅くまで開いてるから」
「そうなのね。じゃあ休日にもね」
「よかったら行かせてもらうわ」
 こうしてだ。女の子達は笑顔で彼の言葉を受けた。このことはすぐに校内に伝わりだ。そうしてだった。
 その日の放課後にだった。もうだ。
 十字のいる教会の隣にある画廊、わりかし大きく広い白い建物のその中にだ。八条学園の生徒達が来ていた。そしてその中にある絵達を見るのだった。
 絵は多かった。しかしだ。
 どの絵もだ。誰が見ても言うのだった。
「何か妙に」
「異様っていうか」
「怖いっていうか」
「そんな絵ばかりよね」
「何でかな」
 こう言うのだった。誰もがだ。
 そしてだ。画廊にいる十字、制服姿のままの彼にだ。こう問うたのである。
「あの、何でかな」
「どの絵も何ていうか」
「怖い絵ばかりだし」
「不安定なんだけれど」
「観ていて不安になる絵が多いよね」
「無気味な絵っていうか」
「そう思うよね、本当に」
 彼等の怪訝な言葉を受けてだ。十字もだ。
 それが当然といった顔でだ。そして言うのだった。
「そうした絵ばかりを置いているし」
「それはどうしてなのかな」
 眼鏡の少年が彼に問うた。
「何でまたこんな絵ばかり集めたの?見ればどの絵も」
「どの絵もだね」
「例えばこの絵は」
 上半身が魚、下半身が全裸の女の奇怪な生物が海岸に横たわっている。その絵を指し示してそのうえで十字に言うのだった。その絵がどうだとだ。
「ルネ=マグリットの絵だけれど」
「本物ではないよ」
「模写なんだね」
「本物はここにはないよ」
 このことも言う十字だった。 
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