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SHUFFLE! ~The bonds of eternity~

作者:Undefeat
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第三章 ~心の在処~
  その一

 
前書き
第三章開始です。 

 
「ま、そういうことだから」

「はあ……」

 先程の緊迫した雰囲気とは打って変わって明るい声で言い放つ魔王に稟はため息を返した。無理もない。

「で、当のプリムラはどうしたんですか?」

「ああ、実は今、学園の制服に着替えているところだよ。もうすぐ来るんじゃないかな?」

 柳哉の疑問に答える魔王。そこへ、

「……着替えた……」

 バーベナ学園の制服に身を包んだプリムラが現れた。

「わあ、リムちゃん可愛い」

「ええ、よく似合っていますね」

「……そう……?」

 シアとネリネの言葉に少しだが顔を赤くしているプリムラ。照れているのだろう。

「サイズとかは大丈夫ですか?」

「その点に関しては問題無いと思うけど、どうだい?」

「……うん、大丈夫……」

 そんなやりとりがされる中、

「どうした稟?」

「あ、いや何でもない」

「ふむ、お前さては……」

 稟のそんな反応に、柳哉はにやりと笑う。

「見惚れてたろ? プリムラに」

「そ、そんな事……」

「無いのか?」

「無い!」

 そんなにムキになって否定するのは完全に逆効果なのだが。

「それよりもおじさん! プリムラが学園に通うってことですけど」

 話題を変えたいのだろう、魔王に疑問をぶつける。それは柳哉も聞きたいことだったので追求は断念する。シアやネリネ、楓も同じだ。

「何か問題でもあるかい?」

「いえ、ただ急だなと」

「私達からすればそんなに急なことでもないのだけれどね」

「どういうことですか?」

 魔王曰く、元々今回の検査結果次第で、プリムラをバーベナに通わせるかどうかを決定するつもりだったようだ。

「前回、前々回の検査の結果、今までほとんど制御できていなかったプリムラの魔力がかなり安定してきていることが分かってね。そして今回の検査でわずかではあるものの、魔力の制御ができていることも判明したんだよ」

 本当にわずかなんだけどね、と笑う魔王。

「そして協議の結果、この人界に来て多くの人と出会い、触れ合ったことがその理由だと結論づけられたわけだ」

 魔法は心の力とも言われる。ならば……

「より多くの人と出会い、触れ合うことで、魔力制御の更なる向上を図ろう、ということになったというわけですか?」

 柳哉の台詞に魔王は頷いた。

「それじゃ、先週、リムちゃんが検査に行く前に魔王様が(おっしゃ)ったのは……」

「そう、このことだよ。あの時点ではまだ確定事項ではなかったからね」

 楓の疑問に答える魔王。

「ずっとそのままなのも何だし、着替えてきたらどうだ?」

 と、提案する柳哉。プリムラは頷き、再度着替えるためにリビングを出て行った。

『フォーベシイ殿』

『ん? 何だい?』

 突然の柳哉からの念話にも動揺することなく返事をする魔王。このあたりは流石といったところか。

『あの子は、プリムラは一体、何者なんですか?』

『何者か、かい?』

 表情にこそ出さないが、魔王は舌を巻いていた。この稟達と幼馴染で神族と人族のハーフであるという少年は、稟達と談笑しながら魔王と念話で会話をしている。しかもノイズが全く入ってこない。普通、念話というものは頭に浮かべた言葉を相手に送るものだ。しかし、通常の会話をしながら念話で会話をする場合、通常の会話として頭に浮かべた言葉が、念話として頭に浮かべた言葉と干渉し合うことによって、ノイズが発生してしまう。いかにノイズを発生させることなく念話を行えるかは本人の魔力制御能力、さらには思考や意識の分割能力(言ってしまえば脳の分業)に左右されるのである。故に、ノイズが全く発生しない念話を行使できる柳哉の魔力制御能力および思考や意識の分割能力は非常に高いレベルにある、と言える。才能もあるのだろうが、相当の訓練をしてきたのだろう。しかもプリムラを無理の無い理由で退出させた上で、念話による会話を試みるあたり、細心の注意を払っていると言える。プリムラは一体何者なのか、と聞いてきたが、君自身が一体何者なのか、と逆に問いたいところだが、今は横に置いておく。

『別に念話で話さなくてもいいよ。ここにいる皆が知っていることだからね』

『そうですか、それでは』

「フォーベシイ殿。一つお聞きしたいことがあります」

 丁度稟達との会話が途切れたところで柳哉が口を開いた。

「うむ、何かな?」

 柳哉の意図を汲み、念話のことは口に出さない。

「あの子は、プリムラは一体、何者なんですか?」

「うん? 稟ちゃん達から聞いてないのかい?」

「いえ、訳あって芙蓉家(ここ)に居候していることくらいしか聞いていません。何らかの重要な、あるいは特別な存在だ、ということは察していますが」

 事実、それしか聞いていない。

「あれ? 話してなかったか?」

「聞いた覚えは一切無い。そして記憶力には自信がある」

 稟の台詞に若干強めの口調で返す。

「そういえば……」

「お話した覚えは……」

「無かったような……」

 ちなみにシア、ネリネ、楓、の順である。どうでもいいが。

「つまり、皆話したつもりになっていた、と、そういうわけだね」

 魔王の台詞に柳哉は、はあ、と一つため息をついた。 
 

 
後書き
ちなみに思考の分割云々はリリカルなのは(アニメ版)のマルチタスクと似たようなものです。 
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