パンドラの箱
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第三章
「これでよしだ」
「希望は存分に働いています」
ヘラはそのゼウスに述べた。
「そうしてです」
「人間達を守ってくれているな」
「そして支えてくれています」
「何よりだ」
「左様ですね」
「人間に希望は必要だ」
ゼウスは今度は確かな声で述べた。
「だからだ」
「この度のことはですね」
「ヘルメスの知恵のお陰だ」
満足している顔での言葉だった。
「全く以てな」
「しかしです」
ここでアテナが父神でもある彼に咎める声で言ってきた。
「この様な回りくどいことになったのはです」
「わしのせいだというのだな」
「プロメテウスに子供の様な悪戯を仕掛けて」
そうしてというのだ。
「彼が怒って警戒する様になりましたから」
「回りくどくなったというのだな」
「全く。大人気ない」
「そう言うばああした澄ました賢い者を驚かせることがだ」
ゼウスは娘神にやや口を尖らせて返した。
「面白いのだ」
「それで悪戯をされたのですね」
「あの時はな」
「何度もそうしてきましたが」
「そなたにはその楽しさがわからぬか」
「わかりません」
むっとした顔での返事だった。
「お陰でこうした時に回りくどくなります」
「ううむ、そなたは相変わらず真面目だのう」
「しかしそうした後でどうすればよいかを考えるのも楽しいです」
ヘルメスはゼウスの側に立って話した。
「それに人間に希望が渡ったので」
「よかったな」
「そうかと」
「そうだ、それならよいではないか」
ゼウスはヘルメスの助け舟に乗って言った。
「万事解決だ」
「全く。反省しないのですから」
「困ったものね」
「本当にそうですね」
アテナはヘラの言葉に応えた。
「こうした子供みたいなところがあるから」
「困るのよ」
「どうにかならないでしょうか」
「この人はずっとこうだったからね」
「無理ですか」
「浮気の方もだしね」
ヘラはゼウスの好色さについても溜息混じりに述べた。
「本当に困った人よ」
「まさに天空の神ですね」
「気ままに何時でも変わるね」
「どうしたものか」
「そう言うな、では希望の活躍をこれからも見守ろう」
ゼウスは二柱の女神に言われても笑っていた、そうしてだった。
その言葉通り希望の活躍を見守った、希望は今も人間達の傍にあり彼等を守り支えていた。パンドラの箱の中にあったそれはあらゆる悪に勝っていた。
パンドラの箱 完
2022・1・17
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