排水溝の中の赤ちゃん
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第一章
排水溝の中の赤ちゃん
南アフリカ東ケープ州南部のポート=エリザベスでのことだ。
この日シャーメイン=キーヴィー六十三歳で薄くブロンドを長くストレートに伸ばしたグレーの目の彼女は夫のリチャード背が高く茶色の髪と目を持つ二つ年上の彼とだった。
愛犬のジョージー茶色のダッグスフントの雄の彼を連れて日課の散歩をしていたが。
ここでだ、夫は妻に言った。
「何でまた今日は」
「いつもの散歩コースじゃないかっていうのね」
「うん、どうしてなんだい?」
夫は妻に怪訝な顔で問うた。
「一体」
「何かこの道を通りたくて」
「それでなんだ」
「私はいつも決まった道を通るし」
「うん、しかもだね」
「ええ、犬にもそれがいいけれど」
それでもというのだ。
「今日はね」
「違う道をなんだ」
「何か通りたくてね」
どれでというのだ。
「この道なの」
「そうなな」
「それでジョージーもついてきてくれるし」
「いいっていうんだ」
「たまにはいいわね」
「まあね」
夫も反対しなかった。
「それじゃあね」
「今日はこのコースをね」
「行こうか」
「そうしましょう」
こう話してだった。
二人でだ、こう話してだった。
そしてだ、そのうえで。
ジョージーの散歩を続けていたが不意に猫の鳴き声の様な声が聞こえ。
「ワンワンワン!」
「ジョージーどうしたんだ?」
「何かあったの!?」
愛犬が急にだった。
道の傍の排水溝に向かって進んだ、それで夫婦もそこに引っ張られる形でついて行ったが何と排水溝の中にだった。
全裸の赤ん坊がいた、それも奥に。夫婦はその赤ん坊を見て仰天した。
「赤ちゃんじゃないか!」
「何でこんなところに!?」
思わず叫んでしまった、そして。
何とか助けようとしたがだった。
「駄目だ、排水溝の蓋が動かない」
「鍵までかかっているわ」
「それで何で赤ちゃんを入れられたんだ」
「誰がこんなことを」
「僕達だけじゃ無理だ」
夫はすぐにわかった。
「人を呼ぼう」
「人手を借りるのね」
「赤ちゃんは裸だ、すぐに助けないと」
「そうね、赤ちゃんでしかも裸だし」
「ことは一刻を争う」
「すぐに助けないと」
夫婦で話してだった。
夫は排水溝で何とか赤ん坊を助けようと蓋を相手に闘いを続け。
妻は傍の道に車が通るのを待った、すると。
すぐに一台の車が来た、その車をだった。
ヒッチハイクの様に停めた、そうして出て来た白い髭を顎と頬にもみあげから生やしている初老の男性にだ、必死に事情を話した、すると。
男は自分をコーニー=ビジョアンで銀行員をしていると名乗ってだ、シャーメインに真剣な顔で答えた。
「それは大変です」
「早く何とかしないと赤ちゃんが」
「すぐに助けましょう」
「ワンワンワン!」
ジョージーもお願いしますと叫ぶ様に鳴いた、彼の声も受けてだ。
ビジョアンは幸い車の中に置いてあった工具を全て持って排水溝のところに行った、そこにはキーヴィーもいてだった。
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