おっちょこちょいのかよちゃん
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192 少年の記憶の中
前書き
《前回》
赤軍の日高敏彦および岡本公三に苦戦するすみ子達組織「義元」だったが、スケッチブックを持った一人の少女の加勢によって形勢逆転に成功し、何とか引き上げる。そしてスケッチブックの少女と別れた後、すみ子達は雷の山を目指す!!
本部の一室。かよ子の母達はフローレンスやイマヌエルと共に食休した後、また各々の動向を探る。
「エレーヌやジャンヌ達が引率しています濃藤すみ子ちゃん達はこの雷の山へと向かいますわけですね。この山の争奪戦も激しくなりますでしょう」
「そんなに危険な山なの?」
まき子は質問した。
「はい。元は電気を発する山として多くの電気や雷の力を操ります道具を製造します元となりました。しかし、それも戦争主義の世界との戦いの争奪戦が勃発しました結果、敗れてしまい、多くの人達が犠牲となりました」
「とても貴重な山って事なんね」
「はい」
戦争主義の世界にある紂王の館。こちらは昼食時となっていた。
「あ、茂様。お昼時ですよ!行きましょう」
「うん」
少年は遊女達と遊んでいた。食堂へと向かう。
「こちらは麻婆丼といいます」
「わあ、美味しそうだね!」
少年は遊女達と共に麻婆丼を食べた。
「どうでしたでしょうか?」
料理を担当した女性が少年に聞く。
「うん、とても凄く美味しかったよ!」
「ありがとうございます」
女性は少し照れ気味に礼をした。やがて食後、妲己が食堂に入って来た。
「妲己、起きたのか?」
「ええ、よく寝てしまったわね」
「あ、妲己さん、僕の為にわざわざスケート靴を用意してくれてありがとうございます」
「ああ、明日皆で滑りに行って楽しむとよい。皆坊やと一緒に遊べる事が楽しみだからな」
「はい」
「しかしだ・・・」
紂王が話を止める。
「藤木茂とやら、お主はここに来てから色々な女子と遊んでいるが、もうこの中で嫁にしたいと思う者はおるのかね?」
「あ、ええと・・・」
少年はいつも遊ばせて楽しませて貰っている少女達を見た。だが、自分が優柔不断である事を改めて思い知らされる。
「決められない、です・・・。皆、可愛くて・・・」
遊女たちは「ええーー!?」と声を出した。
(もしかして、嫌われる・・・!?」
少年はそう懸念していた。
「もう皆可愛いだなんて、照れますよ~」
「よし、なら私が茂様に相応しいお嫁になれるように努力しないと・・・!」
「あ、いや、その・・・」
「もう、照れちゃってえ~」
少年は顔を赤らめながらも困惑した。
(どうしよう、永沢君ならすぐに決めてくれるかも・・・)
ふと少年は「嘗ての」親友が頭に浮かぶ。
(い、いやいや、もう、絶交したんだ・・・。忘れないと!!)
「もしかしたら、お主はもっといい女子が好みではないのか?」
「え?」
「この地に来る前に今までに会った女子で気になった者はいるかな?そなたが一目惚れしただけでもいい」
(一目惚れ、え、ええと・・・)
少年は自分の記憶を思い切って探ってみる。忌々しい思い出と共に学校での記憶、色々な地での記憶・・・。しかし、旅行に易々と行ける家庭環境ではなかったので、旅先で可愛い女子に会った記憶というのもない。
(やっぱり、笹山さんかな・・・?)
ふと学校で好きだった女子の顔が思い出される。しかし、ある少女を置いて野良犬から逃げた事で皆から責められた事、合唱コンクールの彼女の頑張りを褒めようとしたところで皆から歌い出しが遅れた事で労わりをかけられたその女子とは対照的に自分は非難という形で注目が集まってしまった事から過去の存在として忘れるように決意していた。
(いいんだ、いいんだ、笹山さんは・・・!!)
やはり、自分には可愛いと思った女子はその笹山かず子とかいう少女以外にいない。となると何がなんでもこの遊女達を嫁にしなければならないと思った。だが、誰かを選べば、選ばれなかった者には不満がられるかもしれない。
「やはり、いないみたいではあるな」
「う・・・」
ここにいる遊女達も皆可憐ではある。一方で「前の世界」にいた時には今まで自分が一目惚れした事のある女子はいない。その時、兵が一人、入って来た。
「紂王様、赤軍の人間が訪れました」
「なぬ?」
紂王はその場を外した。
「まあ、ゆっくり考えるといい。選べないからといって坊やを責めたりはしない。それに気にする事はない。ここの女子達も選ばれなかったからといって文句は言うはずがない筈だ。祝言を嬉しく思うし、いつでも遊んでくれる」
「は、はい」
少年はそう言われると心が少し落ち着いた。
(それじゃあ、あの子達のどれかを貰おう・・・)
少年はそう思った。だが、そうなる度に選べなくなるものである。
「藤木茂、お前に会いたいと言う者が現れたぞ」
「え、僕に?」
一人の男が現れた。
「和光晴生と言う者だ」
「よう。坊主が藤木茂という奴か」
「は、はい」
少年は現れた男に少し怖気づいた。
「今、この坊やの嫁をどうしようか悩んでいたところなのだよ」
「嫁、か。ガキの癖に色男だな。で、どいつを嫁にすんだ?」
「実はその・・・」
少年は返答に詰まった。
「実はまだ決められていないのだよ」
妲己が代弁した。
「そうか、前の世界では好きだった女子から嫌われたと聞く。他のガキに会った記憶もないのか」
「は、はい・・・」
「単に思い出せないだけじゃないのか?まあ、お前の記憶を映像で探ってみてもいいんじゃねえか?」
「え?できるんですか?」
「ああ、これでも俺は映画が好きだった。この世界と繋ぐ事ができてから映画についていろいろな能力を持つ事ができたんだよ。んじゃ、見てみるか」
こちら本部守備班。さり達はテレーズも交えて侵略者の迎撃の待機をしていた。
(あの時はテレーズがいたから何とかなったけど、そうじゃなかったら護符を取られていた・・・。奴等はまた対策を講じて来るはず・・・!!)
さりは赤軍の丸岡修という男との戦いで敗北して以来、護符を守る事に神経質になっていた。その時、通信機が鳴る。
『本部守備班の皆、東側の地区を奪還した。前進してくれ』
イマヌエルの声がした。
「行こうか、皆」
「はい」
さりは同行者と共に護符で出した飛行機で奪還された地区へと進んだ。
和光は少年を別の部屋に連れて彼の記憶を映像として探る事にした。あまりにも恥ずかしい記憶があるというので紂王や妲己、そして遊女達とは隔離させ、さらに自分の恥をかいた記憶は映像化しないという条件で探索した。帽子のような物を少年の頭につけ、帽子に接続されている一本のコードと共に反対側には8ミリカメラがあった。和光はそれを使用して少年の記憶を見る。それはある高校の文化祭で同級生が盛り上がっていた話だった。
「ああ、西川や山田が行った文化祭での事か。あの杖を持つガキに『昔好きだった女子』にぞっこんになってるって事を見抜かれたんだな」
「う・・・」
少年は否定できなかった。
「これだけじゃだめだな。もう少し前の記憶を見てみるか」
和光は少年の記憶の巻き戻しを図る。それは夏の出来事だった。
(ん、あの教会は・・・?)
少年には見覚えがある近所の教会だった。そして嘗てのクラスメイト達と共に協力してその中に入った。そして出会ったのは・・・。
「あ、あの子は・・・!!」
少年は思い出した。あの夏休みの日に一目惚れした少女の事を。それは少年にとって完全に忘却されていた記憶だった。
(あのガキは・・・!!)
和光も映像に映し出された少女の顔を覚えていた。
こちら藤木救出班。かよ子達はまた藤木を取り返す為に進む。
(藤木君、女の子達に溺れてるのも今のうちだよ・・・!!)
かよ子はそう思って進む。その時、ズシン、ズシンという音が聞こえて来た。
「あ、あれは何・・・!?」
何かまた自分の杖を狙う者が訪れたのかとかよ子は感づいた。
「ああ、どうやらそのようだな」
大野もかよ子の意見に同意していた。そしてその音は近づいて来た。
「ええ!?」
「か、怪獣ブー!?」
訪れたのは恐竜のような生物だった。
後書き
次回は・・・
「映画の怪獣」
かよ子達の前に映画に出てくるゴジラが現れ、かよ子達に襲い掛かる。藤木救出班は分散して戦い、ゴジラの撃破を試みる。だが、今までとはまた違った敵で対処が難しく、そんな時、次郎長がある考えを発案し・・・!?
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