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白と黒

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第二章

「旗指物も具足も鞍も鐙も赤い」
「鞭に至るまでじゃ」
「ならば見間違え様がないわ」
「大坂方の真田家の軍勢も赤いがな」
「ここにおる赤備えは井伊家」
「流石にあの家はわかるわ」
 こう言って徳川方は誰も攻めようとしなかった、井伊家の方も阿倍の言葉通り白い者達を果敢に攻め赤備えに相応しい武名を見せていた。
 だがその中に。
「あの者達は何だ」
「母衣を着けておるが黒と白だ」
 見ればそれぞれそうなっていた。
「具足の色も違う」
「服も何もかもな」
「あの者達は敵か」
「待て、あれは木村長門守殿の家臣であるぞ」
 ある者がこのことに気付いた。
「黒母衣の御仁は青木七左衛門殿、白母衣の御仁は長屋平太夫殿であるぞ」
「赤母衣でないしのう」
「当家の者でないと思えば」
「大坂方の武士であったか」
「ならば討ち取るか」
「いや、我等の中におる」
 このことから言う者がいた。
「まずは槍襖で囲みじゃ」
「降ることを勧めるか」
「そして聞かねば討ち取る」
「そうするか」
「そうしようぞ」
 こう話が為されてだった。
 実際に二人は忽ち井伊家の赤い槍襖に囲まれた、こうなってはだった。
 青木も長屋もこう言うしかなかった。
「降るか」
「それしかないな」
「そこで首を討たれても仕方ない」
「これではな」
「観念するとしよう」
「悪あがきせぬのも武士だ」
 二人はこう話してだった。
 そのうえで手にしている槍を置いた、そうして大人しく縄にかかった。その話を聞いた家康はこう言った。
「その者の話を聞きたい」
「そうされますか」
「二人共名を聞いたことがある」
 報をした井伊直政に答えた。
「だからな」
「大御所直々にですか」
「うむ、ではわしの前に連れて来るのじゃ」
 こう言ってだった。
 家康は青木と長屋を自分の前に連れて来させた。家康は二人の胸を張ったその顔を見てそのうえで彼等に問うた。 
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