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最期の祈り(Fate/Zero)

作者:歪んだ光
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青い炎

 
前書き
……すいません。何がすまないかって、前回の公約「切嗣、活躍」果たせなかったことです。何とか入れようとしたんですが、一旦切った方がいいなと思い、断腸の思いで切りました。次回は切嗣さん出ますので、どうぞ堪忍を…… 

 
ISの戦闘能力。それは科学の極みともいえる。総合的に見れば神秘性等を考慮しなければの話だが、平均的なサーバントを上回る戦闘能力を誇っている。そんなもの同士の闘い、それは進みすぎた科学は魔法に見えるという言葉を代弁するかのような闘いだった。
一条の光がはしる。光速でレーザーが一夏を襲う。
「くっ……」
それを紙一重で避け、次の攻撃に備える。
「ここまでレーザーの攻撃を避けきるとは……一体どんな特訓をされたのですか?」
セシリアの顔には驚き半分、呆れ半分の表情が表れていた。
「……言わせないでくれ。正直思い出したくもない」
答える一夏の顔は青い。
一流の暗殺者である切嗣が一夏に課した特訓(本音が提案したものだが……)、それは弾除け。切嗣が10mの距離からゴム弾を放ち、それを一夏が避けるというもの。ルールとしては、切嗣は狙いを定めてから2秒後に打つ。ただこれだけの動作を、一夏は1週間繰り返した。おかげで全身痣だらけだが、攻撃の予兆、特に銃撃に対しては人一倍神経が鋭くなっていた。……トラウマという意味も多少含むが。
だが、その甲斐あってか、一夏は5分間セシリアの攻撃から被弾を免れていた。
だが、
「では、此方もそれ相応のモノを見せて差し上げます。……行きなさい、ブルーティアーズ!!」
セシリアはいきなり切札を切ってきた。
「なっ……!?」
空間的に一夏を囲むブルー・ティアーズ。
「……踊りなさい」
そして、一夏をビームの嵐が襲った。






…………………………………………
回りを囲むは、ビームの嵐。一夏は良く避けていたが、そのエネルギー残量は既に半分を切っていた。
その顔に余裕は一切見えない。しかし、一夏はまだ諦めていなかった。……さっきまでの戦いで一夏も反撃出来なかったわけでは無い。しなかっただけだ。仮に、その時に一夏が一矢報いたとしよう。その時点で一夏の勝機は消えていた。
前日の切嗣の話を思い出す。
「一夏。レーザー兵器の一番恐ろしい特徴は何だと思う?」
「やっぱり威力じゃないのか?」
その答えを聞いた切嗣は、少し苦笑すると一夏の考えを正した。
「いや、そこは余り気にしなくていい。携行できるサイズ程度なら威力も、そこまでは大きくならない筈だ……まぁ、無視できる威力でも無いだろうが。問題は速さだ。レーザーは、光速で目標に到達する。避けるなら、撃たれる前に見切る必要がある」
「……だから、あんな特訓やったのか」
漸く、この1週間の真の目的に気付いた一夏。だがしかし、
「……避けるだけじゃ勝てないだろ」
それは最もだ。
エネルギー切れを狙うにしても部が悪過ぎる。
「ああ。わかっているよ。だからこそ、一夏」
そして、切嗣の作戦が話された。

……………………………………………………


「っ!?しまった!」
エネルギー残量が遂に5分の1を割ったとき、遂に一夏の集中力も切れた。
……それは同時に、この戦いの幕引きも意味する。
「があああぁぁぁ……!」
翠の閃光が一気に襲いかかり、一夏は地面に叩きつけられた。
『一夏!!』
思わず叫び声をあげる箒。闘技場は土煙に包まれ、彼の無事は確認出来ない。しかし、
「上がって来なさい、織斑一夏。貴方は私を倒すために来たのでしょう……ならば、せめて追い縋ってみなさい」
セシリアは、何らかの確信を持って告げる。一夏は未だ、終わっていない、と。その手には、一切の油断無く銃が構えられていた。
直後、
「うおおおおおああああ!!」
土煙から一夏が雄叫びをあげながら飛び出してきた。
「来ましたわね!!」
荒々しく笑うと、セシリアはブルー・ティアーズからレーザーを打ち出した。しかし、
「はああああ!!」
実体化させた刀を掴むと、一夏は其を一凪ぎした。それだけで、迫り来る光の奔流は全て凪ぎ払われた。
「……漸く面白くなって来ましたわね」
「……全然驚いてくれないんだな」
切嗣の作戦、それは一次移行に全てをかける、それだけだった。恐らく、セシリアも気付いていたのだろう、一夏の考えに。若しそうでないなら、彼女は最初から本気で一夏を潰しにかかっていた。あえて一夏の考えに乗るということは、お互い本気で戦いたかったのか、一夏の努力を不意にしたくなかったのか、はたまたその両方なのか。いづれにせよ、セシリアは一夏のあり方を認めていた。だから、
「全力で行きますわよ、一夏さん」
これが、一夏に対する彼女なりの答えなのだろう。
「行くぞ……セシリア!!」
そう叫ぶと、一夏は雪片弐型を構え、
「行くぞ、白式」
単一仕様能力、零洛白夜を発動させた。
対するセシリアも、ブルー・ティアーズを自身の横に待機させ、一夏を迎え打つ。
……………………
空白の3秒間、この場に居合わせた者全てが悟る。これで全てが決まる、と。
そして、
「うおおおおああああ!!」
「ブルー・ティアーズ!!」
二人の叫び声が重なる。一夏は、致命的と成り得る攻撃だけを切り裂き、セシリアに向かっていった。
30m、もう少しだ。
20m、後ほんの少しだ。
10m、いける!!
刀を振り上げ、目の前の敵に降り下ろす。先までの戦闘で、セシリアはブルー・ティアーズを使用している間は動けないことは確認済み。もう銃の間合いではなく、刀の間合い。
「はあ!!」
そして、刀を降り下ろす。

この瞬間、一夏は自身の勝利を確信していた。いや、この試合を見ていた誰もが。だからこそ、誰もが理解できなかった。

ビームが曲がったという事実を。地面に崩れ堕ちていく一夏の姿を……

「嘘、だろ……」
「伊達や酔狂で代表候補はやっていません」
一夏のミス、それは当たらない攻撃は迎撃しなかったこと。
いや、これはセシリアの作戦勝ちというべきか。あえて、ブルー・ティアーズを正面に置き、背後の警戒を薄くさせた上で改めてビームを歪曲させ背後から狙う。正直絡め手の感は否めないが、一夏を評価した上での作戦だろう。更に言うなら、レーザーの歪曲という、ある種の極みに彼女が達していたとを褒めるべきなのかもしれない。
「……負けちまったな」そう呟く一夏の顔に悔しさの陰は無い。
「そう簡単に勝たれては私の立場がありませんわよ」
セシリアの表情も明るい。そこには、一夏を見下す色は無く、純粋に勝利への喜び、敗者への労いに満ちていた。
「それに、また強くなれば良いだけのことですわ。よろしければ、その……私がお手伝い差し上げてもよろしくてよ」
頬を微かに赤らめ、顔を背ける。
「……!あぁ!!宜しく頼むぜ、セシリア」
そう言い、手を差し出す一夏。
「え、ええ。こちらこそ」
そね手を握り返そうとする。
二人の手が合わさった瞬間




『避けろ、一夏、オルコット!!』
二人を醜悪な泥が襲った。 
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