八条学園騒動記
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第六百四十八話 牛を観つつその五
「アウトか」
「ちなみにマウリアでビーフステーキはありません」
セーラはこう述べた。
「水牛です」
「やっぱりそうか」
「若し無理をして食べますと」
「死刑か」
「ヒンズー教徒なら考えられませんが」
それでもというのだ。
「他の宗教の人ならこっそり食べないとです」
「駄目か」
「批判の嵐の中に置かれます」
そうなるというのだ。
「牛なので」
「死刑にならないだけましか」
「事実イギリス統治時代はです」
その頃はというと。
「イギリス人達が食べているのを見て食べた人もいます」
「イギリス人が自分達を支配していてか」
「それだけの力をどうして持っているか」
自分達が支配しているそれをというのだ。
「そう考えて」
「それでか」
「ガンジーもです」
彼もというのだ。
「敬虔なヒンズー教徒でしたが」
「牛肉を食べたのか」
「そうしたことがありました」
「そうだったのか」
「後で反省していますが」
それでもというのだ。
「そうしたこともありました」
「そうだったか」
「しかし誰かが何を食べていても」
「極端なヴィーガンの人みたいに言わなかったか」
「決して」
そうだったというのだ。
「あの人は」
「器が大きかったんだな」
「そして多くのマウリア人も」
「ヴィーガンかというとか」
「違います」
そうだというのだ。
「これが」
「そうなんだな」
「私から見ても極端なヴィーガンの人は」
「おかしいか」
「そう思います」
セーラから見てもだった。
「幾ら何でも」
「狂信的か」
「自分がそうであるならです」
自分自身がヴィーガンならというのだ。
「それでいいですね、別に他の人にです」
「強要することはないか」
「そしてそうしないからといってです」
「暴力を振るうことはか」
「論外です、それではです」
穏やかだが言っている内容は辛辣だった。
「連合で忌み嫌われている十字軍や植民地統治と同じです」
「キリスト教を強要したりその名の下に滅茶苦茶したか」
「そうしたこととです」
まさにというのだ。
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