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男性にはわからない

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第一章

                男性にはわからない
 生理と言われてもだった、男である桜井総一郎は首を傾げさせるばかりだった。
「そんなに辛いのかよ」
「お兄ちゃんにはわからないわよ」
 妹の千夏は兄にムッとした顔で返した、黒髪を短くしていて面長ではっきりとした顔立ちで大きな目が目立つ一六〇程の背の兄にそうした。見れば妹は丸顔で大きな黒目がちの目だ。眉は細く黒髪はおかっぱで背は兄より十五センチは低い。
「それはね」
「急所ぶつけたら痛いけれどな」
「それ滅茶苦茶痛いらしいわね」
「死ぬかって言う位にな」
 こう妹に返した。
「痛いよ」
「男の子はそうした痛みでね」
 中二、自分より一つ上の兄に話した。
「女の子は女の子でよ」
「生理痛ってあるのか」
「しかも苦しくてね」
「動くこともか」
「辛いのよ」
「そうなんだな」
「だからその時運動はね」
 それはというのだ。
「無理よ、それとね」
「それと?」
「その時泳いだりお風呂なんてね」
「絶対に無理か」
「出来る筈ないわよ」
 それこそというのだ。
「辛過ぎるし血だってね」
「出るか」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「お兄ちゃんもそのことは覚えておいてね」
「その時の女の子は大変か」
「本当に何をするのも辛いから」
 それ程までだからだというのだ。
「いいわね」
「ああ、覚えておくな」
「そうしてね、あと生理かとか聞くこともね」
 これもというのだ。
「駄目だからね」
「そのことも覚えておくな」
「宜しくね」
 こうした話をした、この時総一郎はただ聞いただけであった。だが彼が成長して中学の体育の先生になった時だ。 
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