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輝く夢はいつも傍に

作者:琥狐空音
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プロローグ:「爆誕!仮面ライダー洸輝!!」

 
前書き
基本は三人称視点です 

 
 静岡県沼津市内浦のとある一軒家。その一部屋に少年が姿見を睨みながらネクタイを締める


 彼の名は春宮祐樹。この家に住む高校二年生だ。彼はため息を吐き、ネクタイを緩める。少し緩ませると見慣れた姿になり、安心感が彼にはあった。


「やっぱり駄目だなぁ……息苦しい」


 祐樹はネクタイを解き、私服に着替える。何が駄目なのか。それはネクタイは首が締まり、息苦しいようだ。彼は女子生徒のスカーフが羨ましく思ってしまう。


 私服に着替え終わった祐樹がベットに腰掛けると誰かが階段を駆け上る足音が聞こえた。この足音に彼は思い当たる人が一人いたのだ。(またか……)と内心呆れるが、満更でもなさそうな表情だと言うことに彼は分かっていない。
 

バンッ


 勢い良く部屋の扉は開けられ、代わりに足音が聞こえなくなった。足音の正体は蜜柑色の髪をした可愛らしい美少女が笑顔で立っていた。嫌な予感だと祐樹が身構えると案の定少女は彼に抱き着く。


「ぐへっ」


「おはよぉ~、ゆっくん」
 

「あ、うん、おはよう」


 避けることも出来たが人一倍優しい彼にはそんなことが出来なかった。その相手が女子と言うなら尚更。そのままベットにダイブし、少女に押し倒される状況になる。そんな状況だというのに気にせず、可愛らしい笑みで挨拶をする。退いてくれと言えない彼は流れに乗るように挨拶をするしかなかった。
 

 その時思ったのは、両親が共働きで良かったということ。もしこの状況を両親に見られたら、ネタにされるだろうと心底安堵しながら、少女に聞いてみる。


「今日は何の用かな?千歌ちゃん」
 

「えへへ、えっとね……今日、暇?」
 

 祐樹に質問された少女、高海千歌はそう聞いて退く。上体を起こしながら、質問を質問で返されたと苦笑を浮かべながら彼は暇だと答える。彼の答えが余程嬉しかったのか、「ぱぁぁぁぁ」と効果音が聞こえそうな笑みを浮かべた。


「じゃぁ、東京に行こう!!」


「相変わらず、唐突だね。良いよ、行こうか」


 千歌の提案にそう言いながら断る理由もなかったため、祐樹は承諾した。彼女は彼の手を掴み、外へ連れ出す。半強制的に連れ出された彼は若干引きながらも鍵をかけた。だが、その後に強制的だったのか理解が出来た。バス停に着いたとき丁度バスが来たのだ。田舎である此処は一便のバスも乗り遅れたら次のバスまで時間がかかるのだ。


「何で東京に行こうとしたの?」
 

「うーんとねぇ、行きたくなったから?」


「そっか……」


 バスの最後部座席に座り、駅に向かう際祐樹が千歌に聞いた。千歌は人差し指を顎に当て、理由を考えていたが良い理由が見つからず疑問形で答えた。沼津駅に着き、二人は下車する。


「おーいっ!よーちゃん!しーくん!!」


「あっ!千歌ちゃん!祐くん!」


 千歌はそう二人の名を呼び、とある方向に走る。それに祐樹も着いて行くと亜麻色の髪をした少女、渡辺曜が手を振る。その隣には疲れ切った様子の青い髪をした少年、滝霧翔が座っていた。


「えっと……お疲れさま」


「ありがとう……祐樹くん」


 祐樹は曜に連れて行かれたんだなと察し、労いの言葉をかける。翔は本当に疲れ切ったのか掠れた声で感謝を伝える。そんな状況に彼は苦笑するしかなかった。


「そろそろ時間だし、行こっか」


「本当に大丈夫なの?」


「体力的には問題ないよ」


 腕時計で時間を確認した翔は立ち上がりそう言った。もう少し休憩すれば?と祐樹が言うが、電車の中で休憩すると言った。一方、曜と千歌は手を取り合い喜んでいた


新幹線だったがやはり時間がかかった。しばらく電車に乗り、念願の東京に着き少女たちは嬉しそうだった。あんなに疲れ切っていた翔も回復したのか楽しそうだった。


「東京だぁーーー!!」


「二人とも、余り遠くに行かないでー」


 子供のようにはしゃぐ二人に翔はそう伝える。また振り回されるのかと思いつつ、彼は二人を追いかける。呆れたように微笑み、祐樹も追いかけようとした時___。


『はしゃぐとか幼児かよ』


「っ!?」


『だっせー、高校生のくせに』


「っ……」


 何処からか少女たちを罵倒する声が聞こえ、周りを見渡す祐樹。見つけたと思うとその姿は鬼だった。続けて罵倒する鬼に彼は回し蹴りをした。しかし、当たったはずなのに感触が無かった。すり抜けたのだ。鬼は高笑いをする。


『だーはっはっは!俺様が見えるのかよ!だが、無駄だ。この状態はすり抜けるからな』


「罵倒するな……」


 鬼の言葉に悔しそうにしながら祐樹はそう言った。鬼は馬鹿にするかのように拍手をする。


『俺様はお前しか見えない。お前は変人ってことになる』


「何が目的なんだよ……っ」
 

 残念だったなぁと嘲笑する鬼に祐樹は問いかける。何が目的。そう聞かれた鬼は再び高笑いをする。
 

『ただの忠告だ。お前、気を付けろよ』


「は?」
 

 鬼の答えに疑問を持つと強めの風が吹いた。一瞬目を閉じたが、すぐ目を開ける。目の前にはビルの中へと入る千歌の姿と鷹のような翼を生やし飛んでいる鬼がいた。


『大切なものを捨て自分を守るか、自分を捨て大切なものを守るか』


「本当に……何言ってるんだよ」


 鬼の質問はまるで契約のようだった。鬼の言う大切なものは家族や友人のことを指しているのだろう。家族や友人を見捨て、自分だけが助かるか。自分を見捨て、家族や友人を助けるか。言っている意味が分からない祐樹がそう聞くと、先程の風より強い風が吹いた。


 しばらく経つと縦に強く地面が揺れた。町中の人々は何だ何だと慌て始める。それは曜も翔もだった。祐樹は千歌の安否が気になった。


『あーぁ、とうとう来ちまったな』


「え?」


『あのビルに駆け込んでみ?絶望が待ってるぜ?』


 鬼が千歌が向かったビルを指し、そう言った。祐樹の顔は青ざめ、逃げる人々の波をかき分けビルへと向かう。ビルの向こうに着くと予想出来ないことが起きていた。


「……あ……ゆっくん……」


「千歌ちゃん!!」


 へたり込んだ千歌は祐樹に気付きそう言った。彼女の目の前には信じたくもない怪物がいたのだ。それは禍々しい色のしたモノだった。


「何……アレ……」


「アレはエモーティブ。負の感情で現れた怪物サ」


(……誰?)


 祐樹の呟きに説明する声が聞こえた。驚いた祐樹が聞こえた方向に振り向くと男が立っていた。怪物を目の前にし、逃げない男。疑問を持つが何かを投げられる。咄嗟に受け取るとそれはベルトだった。


「それはドライバー、仮面ライダーになれるアイテムダヨ」


「仮面……ライダー……?」


 男の言葉に祐樹はベルトを見つめ、呟く。次の男の言葉が彼の決意を揺るがした。


「君なら扱えると思うけド……どうすル?その女の子を見捨てル?それとも守ル?」

 
「俺なら……」


「きゃぁぁぁぁ!!!」


 千歌を見捨てるか、守るか。そんなのは既に決めていた。怪物に襲われ、千歌が悲鳴を上げた。砂煙が立ち、彼女はやられた。そう思った男だが、目を丸くする。風で砂煙が消えたそこには怪物の攻撃を受け止めた祐樹がいたからだ。
 

「ゆっくん……?」


「目の前で助けを求めているのに、見捨てるなんて……そんなのヒーローじゃない!!」


 驚き後ずさる怪物を他所に祐樹はベルトを腰に巻き付ける。男は思っていた通りだったらしくまたとあるモノを彼に渡した。受け取ったのは蜜柑色に光る球で鷹の絵が描かれていた。


「それを棒に差して引くんダ!」
 

 男に言われたままその球を棒に差し、右に引いた。レバーになったのだ。限界まで引くと球と同じ蜜柑色の光が彼に纏わりつく。鬼はその光に吸い込まれていき、下から変身し始める。


「それはオオタカ サ」


「……ゆっくん」


 光が収まると背中にはオオタカの翼、それ以外は鬼の格好をしていた。見事に変身をした彼に男は拍手を送る。しかし、彼は応える程の余裕はなかった。


「仮面ライダー洸輝!」


「君のバディは鬼なのカ、実に素晴らしイ」


 祐樹……否、洸輝は名乗り男は喜んでいた。状況に着いて行けないのは千歌だけだった。


「え?え?」


『ふざけんなっ!何でよりによって俺様がコッチ側なんだよ!!』


「君、レバーを左に引いてみテ」


「あ、はい」


 洸輝の脳内でそう叫ぶ鬼に煩い……と思う彼。男に言われた通りレバーを左に限界まで引いた。すると何かがセットされる音がし、ベルトから何かが出て来た。


『っしゃー、出れたぜ。お前の一部になるのは嫌だからな』


「君は……誰なの」


『あ?俺様は酒呑童子、鬼の中で最強だぜ?』
 

 大きな金棒を片手に喜ぶ鬼に洸輝が聞くと鬼の中で最強と知られる酒呑童子と名乗った。鬼の部分を奪われたのか、洸輝は鷹のような姿になっていた。


『一部始終見せて貰ったがぁ……良くやるじゃねぇか』


「良いから、倒すよ」


『おうよ!一部になるのはマジで嫌だが、共闘ならやってやるよ!!』


 見直したぜと笑う鬼に冷たくそう言った洸輝。今はそれ所じゃないのだ。鬼もそのことを知っているため、咎めずに金棒を敵に向けた。


「あの……アレって……」


「良かったネ、彼が勇敢な子デ」


「あ、はい。じゃなくて!」

 
 千歌は痛む足で何とか男の所へと避難し聞いた。男がそう言うと普通に返事をするが、聞きたいのはそれじゃない。


「仮面ライダーのことカイ?」


「はい……どうしてゆっくんがなれるって」


「あの鬼サ」


「へ?」

 
 冗談ダと笑いながら、千歌が聞きたかったことをピンポイントで当てる。彼女は何故祐樹が仮面ライダーになれると知っているのかと聞いた。男は鬼を指し、言った。

 
「アレは感情だからネ。彼は勇気が強かっタ。それをもじって勇鬼ってネ」


「えぇ……」


「嘘だヨ。でも、勇気が強いのは本当サ。さっきも君を助けたダロウ」


 鬼が感情ということを教える男。突然のダジャレに若干引く千歌だが祐樹が勇敢なのは納得だった。


(でも……不思議だネ、初めてなのニ……あんなに息が合ってるなんテ)

 
 初めての戦闘だというのに、二人の息は合っていた。一人が避け、一人が攻撃しを繰り返す。無駄な動きはなく一秒もずれがないのだ。それには男も驚きだった。


『行くぜぇ!おらぁ!!!』


「はぁぁぁぁ!!!」


 高く飛んだ洸輝を鬼は金棒で敵に向かい打ち飛ばす。勢いのまま敵に貫き、着地するのと同時に足で蹴り飛ばす。敵は吹き飛ばされ、塵となり消えて行った。町は戦闘によりボロボロとなってしまったが、修復不可なわけではない。二人の仮面ライダーに人々は拍手や歓声をあげた。


『へんっ、当たり前だっつーの。な、相棒』


「罵倒するのは許さないからね」


『へーぃ』


「本当に素晴らしいヨ!祐樹くんに酒吞くん!!」


 二人の前に男がそう言って近付いた。二人は目を丸くさせる。


「名前はあの子から聞いたヨ!」


『酒吞って俺様のことか!?』


 平和な空気が漂う中、木の上で誰かが小さく呟いた


「仮面ライダー……洸輝……か」 
 

 
後書き
どうも、琥狐空音です。
面白ければなと思います。

貴方からのコメント、評価お待ちしております。 
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