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タナシン
ミワリンつまり、私こと柳野 美和男が学校へ向かっている途中の道路わきの森をふと見ていると、声が聞こえてきた。
「うわー。初めて見たよ。この虫」
「そうだね。そうだねー」
私は森の中から聞こえてきた子供の声と初めての虫という言葉に興味を引かれ森の中へ入った。
森の中を進んでいると子供が2人森の中にある泉の前で座っていた。
「何をしているんだい?」
私が聞くと子供達は一瞬私が来たことに気づいていなかったらしく、ぎょっと目を見開いた後言った。
「この場所に温泉が湧いているんだよ。触ってみなよ。しかもここには珍しい虫もいるんだよ」
私は泉に手をそっと触れてみた。ほのかに温かかった。
「ほう、たしかに温泉だな」
私はそう言い、温泉を見渡した。温泉に入っている人がいた。先客がいたのか。
「何、見てんのよ。入るなら入りなさいよ」
その男が言った。その男は名はカツコデラックスと名乗り、でっぷりと太っていて、私はこの森の泉の主かと思った。私はその男に社交辞令をした。
子供が木を凝視していたので、私も見ると木には緑色の平らの体に足が数百本ぐらい付いている虫が見えた。目や鼻、口などといった器官は見えなかった。
子供達がその虫を手にとってはしゃいでいるので、私もその虫を貸してもらい手のひらに乗せた。
こそばゆい。が、なぜか気に入った。
おっと、学校へ行く時間が迫っている。私は森を後にしようとすると、私の後ろに新たな来客が来ていて小さな鹿の鼻の中に小さな石を詰めて遊んでいる。私ははっと気づいた。この男外人のテレビタレントだ。
「あなたのことテレビで見たことありますよ」
私が言うと男は上機嫌な様子になった。そして、私についてくることになった。学校まで案内しよう。
私は森で拾った芸能人のエロ本を手に、学校へと向かう。学校はマンションの団地の中の一角にある。私はマンションの階段を登り、学校入り口へとたどり着いた。もう、授業は始まっている。どうやって教室に入ろうかと思っていると、マンションから同級生が出てきた。そして、マンションから見える円柱形の高さ数十メートルはある建造物のてっぺんに上った。ふらふらとした足取りで下の景色を眺めている。
危ないな。スリルを味わっているのか? などと私が思っていると同級生はその円柱のてっぺんから飛び降りた。鈍い音が辺りに響き渡る。すぐにマンションからずらずらと人が出てきて、同級生の周りに集まる。
「う、嘘だろ」
私は状況が飲み込めず、うろたえる。
すぐに救急車がやって来て、倒れている同級生に駆け寄る。私もその場へと急ぐ。
救急隊員が「俺は慶応応大学卒業だ。なぜ、なぜ止めなかった」と怒鳴っている。
私はテレビタレントの男の顔を見る。テレビタレントはにやりと笑い、袋から豆を取り出した。
「こ……これは?」
私が聞くと、芸能人は「これはあれですよ。俺が昔発見した。体力が回復する豆です」と言った。
「これを、同級生に?」
「ええ、食べさせて下さい」
私が豆を食べさせると、同級生はスッと立ち上がった。
「おお」
しかし、この豆は体力が回復するわけではなかったらしい。
同級生の目がだらりと地面に垂れ落ち、皮膚も腐食を始めた。そして同級生は両の手を前に突き出した。
「お、おい。これってまさか」
同級生は周りの野次馬達に次々に噛み付いて行った。
私は必死で逃げた。そして、逃避行の末辿りついたのは無人島だった。
「……私です。皆ゾンビになってしまったとです。……私です。今この世界で生き残っているのはたぶん私だけだとです。……私です。もう食料が底を付いたとです。……私です。もう体が動かないとです。……私です。……私です。……私です」
後書き
ごっつあんです。
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