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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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招かれし者(西村早苗)
  西村早苗の冒険④

雛と別れた後、なおもどんどん山を下って行くと雪で一面が真っ白になった原っぱがあった。

遥か向こうに小さな庵《いおり》が見えたが雪で道が埋もれていたので(西)は庵に行くのを断念した。
登山道はまだ先に続いていたものの、この原っぱが山の麓だと決めつけて(西)はもと来た道を引き返していった。



ーー
ーーー


原っぱの庵では二柱の神様が震えていた。
一人は紅葉の神・秋静葉《あき‐しずは》、もう一人は豊穣の神で静葉の妹の秋穣子《あき‐みのりこ》である。

この姉妹は冬の寒さに滅法弱く、冬の間はこうして家の中でじっとしていることがほとんどだ。食糧は秋のうちに収穫した米や麦、芋、豆、栗などが大量に備蓄されているので食糧難に陥ることはない。


静葉「寒い……冬は嫌いだ…」

穣子「ああ…鬱度MAXだ……冬なんか消えて無くなればいいのに…」

静葉「同感…。レティもチルノもみんな死ねばいいのに……」


冬の妖怪「レティ・ホワイトロック」や氷の妖精「チルノ」に八つ当たりしたところで寒さは一向に改善せず、二人はただ囲炉裏《いろり》の前で寒さに打ちひしがれるより他になかった。



ーー
ーーー


守矢神社に戻った(西)はその日の晩、神奈子たちに今日あった出来事を話した。


神奈子「ーーーそう。じゃあ、妖怪の山の住人のほぼ全員と会えたのね」

(西)「はい、個性的で面白くて愉快なひとばかりでした」

諏訪子「山の住人はいざというとき頼りになる妖怪《ひと》ばかりだからね。仲良くなって損はないよ」

(西)「そうですか…。そういえば、あの原っぱの庵には誰が住んでいるんですか?」

神奈子「あれは秋姉妹の家。紅葉と豊穣を司る神様の姉妹が住んでいるのよ。彼女たちは寒さにとても弱くてね、冬の間は滅多に姿を見せないの」

(西)「そうなんですね」

(東)「しかしまあ、考えてみれば私たちも外界からここに来たんですけども、西村さんのようにすぐには馴染めませんでしたよね」

(西)「そうやったと?」

神奈子「ええ。最初は山の妖怪たちに神社の業務を妨害されて信仰心獲得どころじゃなかったわよ。そういや、一度神社でぼや騒ぎがあったわね」

諏訪子「そうそう、幸い倉庫の竹ぼうきが何本か焼けただけで済んだけどね」

(東)「あの時の犯人、まだ捕まっていませんよね…。まあ時効が成立したからもういいんですけど」

神奈子「これじゃ埒《らち》が開かないと思って麓の神社に勧請を持ちかけたら断られるし、本当に散々だったわ…」

(東)「かといって帰ろうにも帰れませんでした。私たちが引っ越した直後から外界では諏訪湖が消えたことで持ちきりだったようですし…」

(西)「あの湖って諏訪湖やったと⁉︎」


数年前、長野県の諏訪湖が突然消えた。マスコミはこの事件を連日報道。学者や専門家を交えた大がかりな調査が行われたものの、結局のところ原因究明には至らなかった。
現在、かつて諏訪湖があった場所にはクレーターのような広大な窪地が広がっている。だが土地全体を国が買い取って国有地としたため、民間人の立ち入りは一切できなくなっていた。


諏訪子「だけどあのときの苦労があったからこそ今の繁栄があるわけだし、あれは神様が私たちに与えてくださった一種の“試練”だったのかもしれないね」

(東)「まあ、そう言う私たちも神様なんですけどね」




ーーー守矢神社に神々の笑い声が木霊した。



















~おまけ~


静葉「作者…。私たちの扱いがちょっと酷すぎやしない……?」

福岡市民「“秋姉妹は冬に弱い”という設定を活かしたかったので」

穣子「鬱だ…鬱だぁ………orz」 
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