十万回の戦闘
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第三章
「つくづく無茶苦茶なこと言うね」
「それに尽きるね」
「あの国については」
「よく言われることだけれど」
「本当に」
「十万回の戦闘に勝ったとか」
「よく言えるよ、しかも」
横溝は眉を顰めさせてこうも言った。
「凄いのはああした国を好きな人が日本にもいることかな」
「好きになる要素ないのに」
「ネタにするなら兎も角」
「特撮ものの悪役そのものだし」
「コロコロとかの子供漫画に出てもおかしくないね」
「そんな国を学者さんや政治家や運動家の中にはいいという人がいて」
そしてというのだ。
「絶賛していることがね」
「あの国もおかしいけれど」
「支持する人がいるのもおかしいね」
「ましてあの国を支持する人ってやたら平和を言うけれど」
「あの国の何処が平和的なのかな」
「百戦百勝とか十万回の戦闘に勝ったとか」
横溝はまた首を傾げさせて言った。
「人類の歴史でここまで言った人いないし」
「ホラでも」
「アレクサンドロスでもチンギス=ハーンでも言わなかったね」
「当然ヒトラーやスターリンも言わなかったし」
「そんなこと言う国の何処が平和的で」
それでというのだ。
「いい要素があるのかな」
「ないよね」
「あの国もおかしいけれど」
「あの国が好きな人もおかしいよ」
「本当にね」
「全くだね、どうかしてるよ」
横溝はまたしても首を傾げさせた。
「その人達も」
「おかしな人はおかしな国が好き?」
「おかしなもの同士で」
「そういうことかな」
「そうかな」
横溝は首を傾げさせたままだった、だがここで話は終わり。
彼はこの日は部活は軍事研究会に専念した、そして次の日は空手部で他校との練習試合があったのでそれに出たが。
試合で軽い打ち身の怪我をしてそれで次の日軍事研究会で部員達に話した。
「ちょっと試合しても怪我するのに」
「国が百戦したらどうなるか」
「まして十万回もとか」
「満身創痍だね」
「間違いなくね」
「そうなるのに」
それなのにというのだ。
「それに全部勝ったとかね」
「よく言えるね」
「初代の人も二代目の人も三代目の人も傷ない感じだけれど」
「あの国はどう見ても戦争以外のことでボロボロになってるし」
「よくあんなこと言えるね」
「空手でも十万回もしていたら全身傷だらけになってるからね」
そのことがわかるからだというのだ、こう話してだった。
横溝は仲間達とこの日はボードゲームに興じた、この日のボードゲームでは彼は負け続けたが彼はそれでも自分を百戦百勝とも十万回勝ったとも言わなかった。昨日の練習試合での打ち身が痛いと思っただけだった。
十万回の戦闘 完
2021・6・6
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